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2024.07.05 相続登記の義務化はいつから?どう変わる? 不動産相続登記の義務化のポイントや流れを解説

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相続登記の義務化はいつから?どう変わる? 不動産相続登記の義務化のポイントや流れを解説

不動産相続の手続きに欠かせない「相続登記」。

今現在、相続登記を申請するかどうかは相続人の任意とされていますが、2024年(令和6年)4月1日から相続登記が義務化されます。義務化されることで、何がどう変わるのか、義務化に至ったポイントや実際に相続登記を行う場合の流れについても解説します。

「相続登記」とは?

相続登記とは、被相続人が所有していた不動産(自宅やアパートなど)の名義を相続人の名義へ変更する手続きを指します。亡くなった親などから相続した相続財産の中に、不動産が含まれている場合には相続登記を行い、被相続人の名義から相続人の名義に変更する必要があります。
例えば、亡くなった親名義の不動産を息子が相続した場合、長男はその不動産の所在地を管轄する法務局に相続登記を申請して、父親名義から自分の名義に変更する必要があります。

「相続登記」義務化のポイント

相続登記の義務化には3つのポイントがあります。

相続登記の義務化は2024年4月1日から開始

現在は相続人の任意とされている相続登記ですが、2024年(令和6年)4月1日から義務化されます。
その背景には、所有者がわからない土地や、所有者が判明していてもその所有者に連絡がつかない土地といった、所有者不明土地の増加があります。国土交通省調査によると、所有者不明土地は日本の国土の24%にのぼると推定され、九州全土の面積を上回る規模になるといいます。また、民間有識者でつくられた「所有者不明土地問題研究会」の調査においては、所有者不明土地による経済損失額が2017年から2040年までの累積で6兆円規模になるとも予想されています。
所有者不明土地が発生する原因の一つとして挙げられたのが、相続登記の未了です。相続登記がされないと、今後ますます所有者不明土地が増えていく一方です。こうした背景があり、相続登記の義務化が2024年(令和6年)4月1日から施行されることになりました。

不動産を相続したことを知ったときから3年以内に登記しなければ、10万円以下の過料

施行後は不動産を相続したことを知ったときから3年以内に相続登記を申請しなければなりません。正当な理由なく期限内に登記をしなかった場合には、10万円以下の過料が科せられることになります。
「不動産を相続したことを知ったとき」とは、義務化の起算日(開始時期)は不動産所有者の相続開始日ではなく、「不動産の所有権を相続したことを知った日」です。不動産を相続したことを「知った日」とは、自分が相続の対象者であることを知り、さらに、その中に不動産の所有権が含まれることを知った日を指します。つまり、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日のことを指します。自身が相続人であることを認識していても、相続財産に不動産があることを知らなければ、登記義務は生じないことになります。

この部分はケース別に解説します。
【遺言書があった場合の起算日】
遺言者が亡くなったことを知り、かつ、遺言によって自身が不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請。

【遺産分割協議が成立した場合の起算日】
自身が相続人であることを知り、かつ、相続財産の中に不動産があることを知った日から3年以内に、分割協議の内容を踏まえた相続登記を申請。

【遺産分割協議が成立しなかった場合(法定相続の場合)の起算日】
自身が相続人であることを知り、かつ、相続財産の中に不動産があることを知った日から3年以内に後述する相続人申告登記の申出(法定相続分による相続登記申請でも可)を行う。その後に遺産分割協議が成立したら、その成立日から3年以内に、その内容を踏まえた相続登記を申請。

法改正前の相続分も義務化の対象

義務化の施行日(2024年4月1日)以前に発生していた相続にも、遡及して適用されます。「遡及」とは過去にさかのぼって、法律の効力が発生することで、過去に相続した相続登記未了の不動産も、今回の義務化によって登記の対象となります。
この場合には、法律の施行日(2024年4月1日)または不動産を相続したことを知ったときのいずれか遅い日から3年以内に申請しなければなりません。また、正当な理由なく期限内に申請しなければ、10万円以下の過料が科せられることになります。

相続登記の流れや必要書類

不動産の登記は、その不動産の所在地を管轄する法務局で行います。司法書士に依頼するケースも多いですが、手順を知っていればご自身で申請を行うこともできますので、流れや必要書類を確認しておくとよいでしょう。

STEP1:相続する不動産の確認

亡くなった方が不動産を所有していたら、その不動産の状態や権利関係などを確認しましょう。登記事項証明書(登記簿謄本)があれば、それで確認もできますが、ない場合は管轄の法務局で入手して調べることもできます。最近ではオンラインでの閲覧や申請も可能です。

STEP2:遺言または遺産分割協議で引き継ぐ人を決定

遺産相続の場合は遺言書があればその内容が優先されるため、遺言で不動産を引き継ぐ人を確認します。遺言書がない場合は、相続人による遺産分割協議で遺産の分け方を話し合い、不動産についても誰が引き継ぐかを決定させます。決めた内容に全員が合意したら、それを遺産分割協議書にまとめ、相続人全員の署名・捺印をします。
不動産を引き継ぐことになった人が、必要書類を集めて相続登記の手続きを進めます。

STEP3:相続登記に必要な書類の用意

相続登記に必要な書類は亡くなった人の戸籍関係の書類、相続人に関する書類、対象となる不動産の固定資産評価証明書など、複数あります。
登記申請書は法務局のホームページで書類の様式をダウンロードできます。こちらには記載例もあるため、それにならって必要事項に記入します。
現在は法務局で実施する「法定相続情報証明制度」を利用し、法定相続情報一覧図の写しを入手すると、その写しが相続登記のほか金融機関の相続手続きにも利用できるなど大変便利です。相続登記の申請時に、一緒にこの制度を利用して一覧図の写しを入手することも可能です。

STEP4:管轄の法務局へ申請

不動産の住所地を管轄する法務局へ行き、不動産登記の窓口にて登記申請書と添付書類一式を提出・申請します。登記申請には登録免許税の納付が必要で、先に別の窓口でその分の収入印紙を購入し、申請書に貼り付けて提出しましょう。
書類の審査と登記は10日程度かかります。無事に登記が完了できたら、登記識別情報の通知や登記完了証を受け取り、大切に保管しておきましょう。

相続登記をしない場合の相続人のリスクは?

相続登記がされないと所有者不明土地が増えるという社会問題だけでなく、相続人にとってもリスクがあります。相続登記をしなかった場合のリスクについても説明します。

不動産の売却や担保提供ができなくなるリスク

相続登記をしないと登記簿上の所有者は亡くなった方のままになっています。不動産の売買を検討している場合は、実際の所有者と登記簿上の所有者は必ず一致してなければならず、相続登記をしないまま手続きを進めることは不可能です。
「いずれ売るつもりだけど、時期は決まっていないから」などと放置してしまうと、いざ売却しようとした場合に、手続きに協力が得られないなど売却ができなくなる可能性もあります。

不動産の差押や共有持分を売却されるリスク

相続人の中に借金をしている人がいる場合には注意が必要です。相続人の債権者は、相続人に代わって法定相続による相続登記を申請して、借金をしている相続人の持分を差し押さえることができます。相続人の債権者は持分を売買したり担保提供したりすることが可能であるため、相続登記をしないで放置している間に相続人ではない第三者が権利関係に入ってくる恐れもあります。

まとめ|不動産を相続したらプロに相談しましょう。

今回は不動産相続登記の義務化のポイントや流れについて説明しました。義務化される相続登記は、不動産の売却にも大きく影響します。事前に期限や罰則、流れを把握しておくことで、申請も直前に慌てることなく行えるでしょう。相続登記の事前準備についても、不動産のプロである当社にお気軽にご相談ください。

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