コラム

2025.01.27 実家の相続には相続税がかからない?非課税の理由や計算方法を解説

売る
実家の相続には相続税がかからない?非課税の理由や計算方法を解説

相続税は、遺産総額から基礎控除額を差し引き、残った金額に課される税金です。

遺産総額や基礎控除額は個別の事例によって変化するため、一概に税負担がゼロになるとは言えません。とはいえ、相続税が非課税になるケースが多いのも事実です。

この記事では新潟市中央区の竹鼻不動産事務が、相続税がかからないといわれる理由や、相続時に利用できる特例・控除を紹介します。

実家の相続税が不安な方は、ぜひ参考にしてください。

実家の相続で相続税がかからないといわれる理由

令和5年分相続税の申告事績の概要によると、被相続人157万6,016人に対し、相続税の申告は15万5,740人でした。

人数比からも分かるように、相続税の課税件数は全体の約9.9%に留まります。大半のケースで非課税となるため、相続税はかからないといわれるようになったのでしょう。

相続税は、相続遺産の合計額から基礎控除を差し引き、残った金額に課税する制度です。

相続財産には実家をはじめとする不動産だけではなく、現金や有価証券、自動車、生命保険などが含まれます。

とはいえ、数ある遺産の中でも不動産が大きな割合を占めることに変わりありません。実家の評価額が、基礎控除額を下回る場合、相続税は非課税となる可能性が高いでしょう。

参照:相続税 国税庁

参照:相続税の改正に関する資料 財務省

実家に課される相続税の基礎知識

実家を相続する際に課される相続税の金額を事前に知りたい方もいるでしょう。

ここでは、相続税の金額を調べる際に押さえておきたい2つの基礎知識を紹介します。

  • 相続税は総額で計算
  • 法定相続人によって基礎控除額が異なる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

相続税は総額で計算

相続税は、被相続人から相続されたすべての遺産を合算して算出します。

実家や預貯金、有価証券はもちろん、借入金やローン、葬儀費用などのマイナス財産も含みます。合計した結果、遺産総額がマイナスとなる場合は相続放棄を検討しましょう。

法定相続人の人数によって基礎控除額が異なる

相続税には、法定相続人の数に応じて決まる基礎控除が用意されています。

法定相続人の人数が多いほど基礎控除額は大きくなり、少ないほど基礎控除額も少額になります。そのため、法定相続人の調査は不可欠です。

なお、法定相続人は被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取り寄せると調べられます。

相続税の課税対象は、相続財産の合計額から基礎控除額を差し引いた部分です。基礎控除額の計算は以下の方法で行います。

  • 基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人

    ※法定相続人とは民法で定められた相続人のこと。おもに配偶者、子ども、親、孫、ひ孫、兄弟姉妹、甥、姪が該当

法定相続人の数が多いほど相続税を基礎控除でまかなえる可能性は高くなります。反面、遺産分割協議は長引く傾向にある点を覚えておきましょう

参照:相続税の計算 国税庁

参照:相続税 国税庁

実家の相続税の計算方法

実家を含めた遺産の相続税を調べるためには、以下4つの順序で計算が必要です。

  • 実家を含む資産総額の把握
  • 基礎控除額の差し引き
  • 法定相続分で相続税総額の算出
  • 遺産分割割合で按分

それぞれ詳しく見ていきましょう。

実家を含む資産総額の把握

相続税の計算は遺産すべてを合算したうえに、葬儀費用の一部を追加します。

プラスの財産 マイナスの財産
  • 不動産
  • 現金
  • 有価証券
  • 貴金属
  • 生命保険など
  • 借入金
  • ローンなど

被相続人が亡くなる前7年の間に贈与を受けた場合は、贈与財産を相続財産とみなし、遺産総額に加えます。

参考 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)国税庁

参考 令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし 国税庁

基礎控除額の差し引き

算出した遺産総額から基礎控除額を差し引きます。この時点で金額が0になれば、相続税は発生しません。

基礎控除額が遺産総額を上回るケースが全体の約90%を占めます。そのため、相続税の計算が完了する方のほうが多いでしょう。

基礎控除額を算出する際は、相続放棄した人も含む人数で計算します。また、養子がいる場合は、被相続人に実子がいる場合は養子のうち1人、実施がいない場合は養子のうち2人を法定相続人に含めます。

遺産総額から基礎控除額を差し引いてもなお、余剰分の金額がある残り約10%の方が、相続税対象者です。

法定相続分で相続税総額の算出

課税遺産総額を法定相続分どおりに分割したと仮定し、法定相続人ごとに応じた取得金額を計算します。この際、千円未満の端数は切り捨ててもよいとされています。

法定相続分は以下のとおりです。

相続人 法定相続分
子がいる場合 配偶者 2分の1
2分の1(人数分に分ける)
子がいない場合 配偶者 3分の2
父母 3分の1(人数分に分ける)
子も父も母もいない場合 配偶者 4分の3
兄弟姉妹 4分の1(人数分に分ける)

どのケースでも、配偶者の取得割合がもっとも大きく、次に子、両親、兄弟姉妹の順で取得金額は少なくなります。

課税取得金額を法定相続分で分けたあと、法定相続人ごとの取得金額に税率を乗じ、相続税の基となる税額を算出しましょう。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
1,000万円超から3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超から5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超から1億円以下 30% 700万円
1億円超から2億円以下 40% 1,700万円
2億円超から3億円以下 45% 2,700万円
3億円超から6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

法定相続人ごとの相続税の基となる税額を出したら、すべてを合計します。このようにして、算出された金額が相続税の総額です。

参考 No.4155 相続税の税率 国税庁

参考 財産を相続したとき 国税庁

遺産分割割合で按分

被相続人が残した遺産を、法定相続分どおりに遺産分割する場合は、算出した遺産額の割合に応じて按分します。

一方で、遺言書などによって法定相続分とは異なる割合で遺産を分割した場合には、分割割合に応じて相続税総額の按分が必要です。

このような流れで算出した金額から、各種税控除を差し引き、実際に納める税額を計算します。

参考 相続時精算課税 国税庁

実家の相続税評価額の計算方法

実家の相続税を知るには、実家の相続税評価額を調べなければなりません。

実家が戸建ての場合、相続税評価額は土地と建物に分けて計算します。また、家屋以外に土地(田畑など)を所有している場合もそれぞれ算出が必要です。

ここでは、土地と建物の相続税評価額の計算方法を解説します。

土地の相続税評価額

土地の相続税評価額は以下2つの方式で求められます。

  • 路線価方式
  • 倍率方式

それぞれの調べ方や計算方法を紹介します。

参考 No.4602 土地家屋の評価 国税庁

路線価方式

路線価方式とは、財産評価基準書に記載されている、1㎡あたりの土地価格に土地面積を乗じて評価額を計算する方法です。毎年7月に国税庁が公表しているため、対象年のものを利用します。

路線価方式で算出するにあたって、以下の書類が必要です。

  • 固定資産税の納税通知書
  • 登記簿謄本

固定資産税納税通知書で土地の面積(地積)を確認し、登記簿謄本で持分割合を確かめましょう。

これらの資料を手元に用意したら、財産評価基準書の路線価図で該当する土地を検索します。

地図には道路部分に数字とアルファベットが記載されており、面している土地の1㎡あたりの評価額を表しています。

数字のうしろのアルファベットA~Gは借地権割合です。借地権を所有している人にだけ関係ある表示のため、実家の土地を所有しているケースでは気にする必要はないでしょう。

ここまで把握できれば、次の式にあてはめるだけで、土地の評価額を求められます。

地積×持分×路線価

路線価方式はこのような手順で土地の評価額を算出します。

参考 令和6年分の路線価等について 国税庁

倍率方式

路線価図を調べると実家の前に路線価がないケースもあります。このような場合に利用するのが倍率方式です。

倍率方式とは、固定資産税評価額に、国が定めた倍率を乗じて評価額の計算をする方法です。大半のケースで、路線価評価より安くなります。

倍率方式で算出するために、以下の書類を用意しましょう。

  • 固定資産税の納税通知書
  • 登記簿謄本

固定資産税の納税通知書で固定資産税評価額を確認し、登記簿謄本では路線価方式と同様、持分割合を確かめましょう。

次に利用するのは評価倍率表で、財産評価基準書から取得可能です。

評価しようとする土地の地目ごと(宅地、田、畑、山林など)に、評価倍率が記載されています。地目は登記地目より現況地目が優先される点を覚えておきましょう。

あとは以下の式にあてはめて、土地の評価額を求めます。

固定資産税評価額×持分割合×倍率

路線価図に1㎡あたりの金額の記載がなくとも、倍率方式を使用すると土地の評価額は算出ができるため、覚えておきましょう。

参考 財産評価基準書 国税庁

建物の相続税評価額

建物の相続税評価額には、固定資産税評価額を利用します。

固定資産税評価額は所有者に対し、毎年4月の終わりから5月にかけて送付される、納税通知書や課税証明書などに記載されています。ほかにも、役所へ問い合わせると確認可能です。

参考 No.4602 土地家屋の評価 国税庁

固定資産税評価額とは

固定資産税評価額とは、固定資産課税台帳に記載された固定資産税を決める基準となる土地、建物の評価額です。不動産の評価方法を定めた固定資産評価基準にもとづき、市区町村が算出します。

役所から通知される固定資産税納税通知書や、固定資産税評価証明で確認しましょう。

評価額は3年ごとに見直され、適正価格に設定されるのです。直近では令和6年に評価の見直しがあったため、令和9年の評価替えまで、現在の評価額が据え置かれます。

参考 固定資産税評価額 国税庁

実家相続時に利用できる特例・控除

相続税は不動産や株式、預貯金などの相続財産が基礎控除額を超えた分に対して課税されます。

そのため、基礎控除額が大きく、相続税がかからないケースもあります。しかし、納税義務が発生した場合、以下のような控除や特例を使って税軽減が可能です。

  • 小規模宅地等の特例
  • 配偶者控除
  • 空き家相続3,000万円特別控除

それぞれ詳しく見ていきましょう。

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例は、被相続人の自宅や賃貸アパート、貸駐車場、事業所など土地の評価額を減額する特例です。

相続によって取得した資産のうち、居住用または事業用として使用していた不動産の一定の面積まで相続税を減額します。

対象となる土地は4つに区分されています。それぞれの限度面積や減額割合は以下のとおりです。

相続開始直前の宅地などの利用区分 要件 限度面積 減額割合
特定居住用宅地 亡くなった被相続人の自宅 330㎡ 80%
貸付事業用宅地 賃貸や貸駐車場など収益物件 400㎡ 80%
特定事業用宅地 被相続人の事業用地 400㎡ 80%
特定同族会社事業用宅地 亡くなった人が自身の経営する同族会社に貸していた土地 200㎡ 50%

※同族会社とは、被相続人とその親族の持株割合が50%を超える会社のこと

マンションの場合は土地の評価額がほぼないため利用は難しいですが、戸建てであれば大幅な減税が期待できます。

ただし、小規模宅地等の特例を受けられるのは、原則配偶者または同居親族のみです。

参考 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

配偶者控除

遺産分割や遺贈により実際に取得した遺産額が、次の金額のどちらか多い金額までであれば、配偶者に相続税はかかりません。

1億6,000万円
遺産額に配偶者の法定相続分(子どもがいる場合は2分の1)を乗じた金額

※遺産額のうち仮装または隠蔽による部分には、制度対象となりません。

配偶者控除は、被相続人の財産の維持形成に対し、配偶者の内助の功や生活保障などを考慮して設けられた制度です。

控除を受けるためには申告書もしくは請求書に配偶者控除適用の旨を記載します。あわせて以下の書類の提出が必要です。

  • 戸籍の謄本など
  • 遺産分割協議書の写しまたは遺言書の写し
  • 相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書に押印したもの)

配偶者控除を利用すると、相続税の大幅な節税が可能です。しかし、配偶者が亡くなり、子が2次相続する際に、相続税の負担が大きくなる点には注意しましょう。

参考 No.1191 配偶者控除 国税庁

参考 配偶者の税額軽減(配偶者控除) 国税庁

参考 配偶者からの相続と税額軽減(配偶者控除) 国税庁

空き家相続3,000万円特別控除

空き家の譲渡所得の特別控除は、空き家の実家を相続して売却する場合に、譲渡所得から3,000万円の控除が受けられる制度です。

平成28年度税制改正によって、空き家相続3,000万円特別控除が創設されました。

改正当初は令和5年12月31日までの期間限定の特例でしたが、延長処置が取られ、現在は令和9年12月31日まで適用可能です。

控除を利用するためには、昭和56年5月31日以前に建築された実家であることや、相続から売却まで空き家であることなどの条件があります。

昭和56年5月31日以前の家屋もそのままの状態で売却可能ですが、特例の利用はできません。特例の適用条件を満たす条件が揃っている場合、利用した方が税負担の大幅な軽減が受けられるためおすすめです。

また、相続人が2人までなら1人あたり3,000万円、3人以上だと1人あたり2,000万円の控除が受けられます。

参照:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

まとめ

相続税は大半のケースで非課税となります。

遺産総額や基礎控除額の計算など、手間はかかりますが算出すると不安を解消する手助けになるでしょう。

また、相続税が課税されても、特例や控除を利用して節税も可能です。

相続時に発生する税制度は、不動産を取り扱う不動産会社や専門家が熟知しています。信頼のおける専門家や業者に確認をしながら手続きを進めましょう。

>>新潟市中央区で不動産売却するなら「竹鼻不動産事務所」