コラム
2024.11.21 これを知らずに大損!相続した実家の取扱方法5選とやってはいけないこと
相続した実家の取り扱いは悩ましい問題ですよね。
相続した実家の取り扱いは、大きく「持ち続ける」「手放す」に分けられます。状況によって取れる選択肢が異なるため、事前に理解が必要です。
取り扱い方法によっては、思わぬ大損をする可能性も。
この記事では新潟市中央区の竹鼻不動産事務所が、相続した実家の5つの選択肢や取り扱いとしてやってはいけないことを詳しく解説していきます。
これらを把握したうえで、相続した実家の最適な取り扱い方法を判断できるようにしましょう。
大損しないために!相続した実家を売るなら令和9年12月31日までに
実家を相続し、一定の条件を満たすと利用できる制度「空き家相続3,000万円特別控除」があります。
譲渡所得(実家売却などで得た所得)に対する所得税控除の特約で、平成28年度税制改正により創設されました。
期限付きの特例ですが、延長に次ぐ延長といった形で適用期間が延びています。今後、再延長の可能性もゼロではありませんが、今のところ令和9年12月31日が適用期限です。
相続開始から3年以内に売却するなど一定条件のクリアが必要ですが、最大3,000万円の特別控除を受けられます。適用可能なら積極的に利用しましょう。
空き家相続3,000万円特別控除を受けられるなら活用しよう
空き家相続3,000万円特別控除の正式名称は「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」です。相続した実家が一定の条件を満たすと、譲渡所得から最大3,000万円が控除されます。
必要な条件の一部は以下の項目です。
- 昭和56年5月31日以前に建築されたこと
- 区分所有建物登記がされている建物でないこと
- 相続の開始の直前において被相続人以外に居住していた人がいなかったこと
相続人が2人までなら1人あたり3,000万円、3人以上だと1人あたり2,000万円の控除が受けられます。
昭和56年5月31日以前の家屋は現行の耐震基準を満たしておらず、地震発生時の耐震面に不安があります。このような耐震面に不安のある家屋をそのまま売却せず、取り壊しや耐震工事をしてから売り出すことを推奨するために、空き家相続3,000万円特別控除は作られました。
昭和56年5月31日以前の家屋もそのままの状態で売却可能ですが、特例の利用ができません。特例の適用条件を満たせる条件が揃っている場合、利用した方が税負担の大幅な軽減が受けられるためおすすめです。
取り壊しや耐震工事は、実家を相続した年の翌年2月15日までに売主、もしくは購入者が対応すればよい点も確認しておきましょう。
参照:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
実家を相続したときの取扱方法5選
実家を相続した状況は人によってさまざまです。実家が遠方で定期的な管理ができない方や相続人が複数人いる方、親から受け継いだ実家を手放すのは惜しい方もいるでしょう。
実家の相続にはさまざまな手続きや検討が必要ですが、相続後に取れる選択肢は5つあります。
- 相続人の誰かが住む
- 相続して貸家として貸し出す
- 実家を解体し更地にして活用する
- 相続した実家を売却する
- 相続放棄する
今後の生活を考えたときに最善の方法を選べるよう、それぞれ詳しく見ていきましょう。
相続人の誰かが住む
相続人が賃貸に住んでいるのなら、相続後に実家へ引っ越すことで家賃の負担を抑えられます。
親から受け継いだ実家を受け継ぎたいと考えたときに、もっとも相続人の意向に沿った方法が取れるのではないでしょうか。
住み慣れた実家をリフォームすると、新しく家を建てるより安価に自分好みの家を実現できます。また、実家を担保にローンを組める点はメリットのひとつです。
ただし、相続人が2人以上いる場合、遺産分割協議で揉めるリスクを考慮しなければなりません。
とくに相続財産が実家しかないケースでは、不公平な相続になる可能性が高く、事前の協議が必要でしょう。相続後も残された相続人同士良好な関係を続けるために、ほかの相続人に実家と同等の代償金を支払う必要が考えられます。
相続して貸家として貸し出す
立地や建物の状態がよいなら、実家の貸し出しを選択肢に加えてみましょう。
固定資産税や都市計画税の負担はありますが、毎月の家賃収入から空き家維持の費用を捻出できます。
売却すると買い戻しは実質不可能です。将来的に自分や親族の誰かが実家を使用する可能性があるならば、賃貸の選択をすることで将来的に住む選択肢を残せます。
賃貸では入居者が生活を送るため、定期訪問で建物の維持や管理も不要です。ただし貸主として、借主に対しての維持管理責任があります。
また、実家の状態によっては貸し出す前に、室内や設備のリフォーム、クリーニングが必要になる場合もあります。入居者募集や賃貸管理を業者に委託する場合は、管理委託料が必要となる点を覚えておきましょう。
実家を解体し更地にして活用する
実家を手放すのは惜しいと思っていても、遠方に住んでいるなど定期的な管理が難しい状況もあるでしょう。このような状況におすすめなのが、実家を更地にして活用する方法です。
空き家となった実家を更地にすると、建物の老朽化や荒廃が進むリスクをなくせます。地域の景観や安全性が向上し環境の美化に貢献が可能な点もメリットといえるでしょう。
更地にした土地は駐車場や貸し農園にするなどの活用が可能です。
ただし、更地にするには解体や撤去の手続きや費用が必要です。費用負担については、地域の自治体や関連団体の支援を受けられる場合があるため、事前に確認しましょう。
相続した実家を売却する
相続人全員に所有の意思がなく、おもな相続財産が実家のみの際におすすめの方法です。
空き家になった実家を相続すると、相続人には固定資産税や都市計画税の負担がかかります。所有し続ける限り税負担は継続するため、実家に戻る選択肢がないなら売却して手放しましょう。
売却によって手に入る資金を相続人で均等に分けることによって、不公平感がなく相続人同士の関係を良好に保てます。
空き家の維持管理や税負担から解放される点もメリットです。
なお、実家の売却を検討するなら、まずは家や土地の正確な査定が必要です。不動産業者や専門家の助言を受けながら適切に価格設定を行い、買い手を見つけましょう。
ただし売却に際しては、手続きや手数料、税金などの費用負担がある点に注意が必要です。
相続放棄する
亡くなった親が残した実家を含む、一切の財産を引き継がない方法です。実家に価値がなく、ほかに財産もない場合や負の財産が多くある場合は、相続放棄を検討をおすすめします。
相続放棄するには、自分が相続人になったと知ったときから3カ月以内に所定の手続きをします。
注意点は、相続があったと知ったときから3か月以内に必要な手続きをしなければ、自動的に相続が行われたものと見なされることです。
期間内に相続協議などで相続の方向性を決められないときは、相続放棄のための申述期間の延長申請をしましょう。
相続放棄をすれば被相続人の財産を一切引き継ぎませんが、相続放棄した空き家の相続財産管理人が決まるまでは、管理責任を問われる可能性があります。管理責任から逃れるためには、更地にするなど所定の手続きを踏んで、相続土地国庫帰属制度を利用しましょう。
相続した実家を「持ち続ける」か「手放す」かの判断基準
実家を持ち続けるか手放すかで迷ったら、次の5つの判断基準を参考にしてみてください。
- 実家を活用する予定があるか
- 相続財産を公平に分けられるか
- 相続財産がプラスになっているか
- 相続税を支払うだけの資金があるか
- 相続後の管理費用なども負担できるか
それぞれ詳しく見ていきましょう。
実家を活用する予定があるか
今後、実家の居住や貸し出しの予定がある場合は、持ち続けたほうがよいでしょう。
一方「なんとなく価値がありそう」などの曖昧な理由での相続はおすすめできません。活用する予定のない実家を持ち続けても、リスクばかりが積みあがります。
たとえば、以下のリスクが考えられます。
- 定期的な管理ができない
- 賃貸に出せない
なんとなくで相続すると「実は負の財産のほうが大きかった」など、トラブルの元になりかねません。
相続財産を公平に分けられるか
遺産分割の方法には、おもに以下の4種類があります。
現物分割 | 不動産などをそのまま引き継ぐ方法 |
代償分割 | 特定の相続人が不動産などを相続し、ほかの相続人に代償金を支払う方法 |
換価分割 | 不動産などを売却し、売却で得た代金を相続人で公平に配分する方法 |
共有分割 | 不動産などの相続財産を共有名義にする方法 |
いずれの分割方法も相続人全員が納得する公平な相続の実現が重要です。
実家と同等の財産があるなら現物分割も可能ですが、そうでなければ代償分割や換価分割が選択肢になるでしょう。とはいえ、実家を相続する人に充分な資産がない場合は代償金を支払えないため、換価分割が有力な方法です。
相続財産がプラスか
相続すると、不動産などの財産だけでなく、借金などの負の財産も引き継ぎます。
相続財産の合計額がプラスになっていれば、実家を持ち続け、活用できる可能性が高いでしょう。
負の財産が合計額を上回っている場合は手元に残すと、負担が相続人にかかります。不動産を手放してなお負債が残っていると、相続人自身の資産を借金の返済に充てる必要があります。
負債額が明らかに多いときは、相続放棄で実家を手放す検討をしましょう。
相続税を支払うだけの資金があるか
相続財産に実家が含まれているケースでは相続税にも注意が必要です。
相続税は以下の方法で算出された課税価格に対して課されます。
- 相続財産の合計額-3,000万円-600万円×相続人の人数
現預金を相続や自分の資金があるなら問題にはなりませんが、充分な資金がないと延納や借り入れの検討が必要です。
実家を相続する際は、相続税を納付するだけの資金があるかどうかも確認しましょう。
相続後の管理費用などを負担できるか
実家の相続後には以下の費用負担が発生します。
固定資産税 | 毎年1月1日時点の所有者に対して支払い義務の発生する税金 |
修繕費 | 建物(実家)の設備やリフォームにかかる費用 |
保険料 | 火災保険などの費用 |
相続後にも多くのコストがかかるため、さまざまな費用を負担できるか検討しましょう。
固定資産税は毎年の出費と考えると負担額は大きく、持ち続ける限り永続的に費用負担が発生するため注意が必要です。
実家の相続でやってはいけないこと
実家を相続すると、実家(空き家)の放置や税負担、管理費用などの管理責任が発生します。活用方法を決めず「価値がありそうだからなんとなく相続する」ことは避けるべきです。
予想以上の税負担や実家の管理に疲弊して、自身の生活が壊れてしまう可能性があるためです。
実家の相続をするうえでさまざまなリスクがありますが、とくにやってはいけないことが4つあげられます。
- 空き家のまま放置する
- 建物だけ取り壊す
- 相続登記の手続きをせずに放置する
- 共有名義はトラブルの要因に
それぞれ詳しく見ていきましょう。
空き家のまま放置する
相続した実家を空き家のまま放置すると、発生するのが管理面やコストの問題です。
不動産は所有しているだけで、毎年1月1日時点の所有者に対して、固定資産税と都市計画税の負担がかかります。
また、空き家の管理が行き届かず、周辺環境の安全や衛生に悪影響を与えたと判断が下ると特定空き家に指定される可能性があります。
特定空き家に指定されると、住宅用地特例の適用から外れてしまい、固定資産税の軽減が受けられないなどの考慮が必要です。
税負担が重くなるのであれば、売却してしまったほうがよいでしょう。
参照:空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報 国土交通省
建物を取り壊す
相続した実家の管理が負担になるからと、いきなり建物を解体するのはやめましょう。建物を解体すると、固定資産税の住宅用地の特例を適用できなくなります。
住宅用地の特例を適用できないと固定資産税が高額になります。実家を更地にしたところで、借り手や買い手が見つからない状態が続くと、高額になった固定資産税を払い続けなければなりません。
また、相続した実家を解体し、その後、新しく家を建てようと考えている場合、希望している建物を再建築できない恐れがあります。
築年数が古いと、実家を建てたときの建築基準法と現在の建築基準法が異なる可能性が高まります。実家解体後の再建築では、現在の建築基準法に則って施工しなければなりません。現行の建築基準法だと、建物面積などの制限を受けるケースがあります。
解体後に現行の建築基準法では再建築不可であると判明すると、借り手や買い手が見つかりにくくなる点にも注意が必要です。
相続登記の手続きをせずに放置する
実家を相続するときは、相続登記の手続きを速やかに行わなければなりません。
2024年4月1日より不動産の相続登記が義務化されました。正当な理由がないにも関わらず相続登記をしなかった場合、10万円以下の過料を科されます。
以下、相続登記の手続きの期限と大まかな内容です。
相続 | 相続の開始があったことを知り、不動産の所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請する |
遺産分割成立時の追加的義務 | 遺産分割が成立した日から3年以内にその内容を踏まえた所有権の移転登記を申請する |
相続登記すると、相続人は不動産に対する権利を主張できます。反対に、相続登記しないと、不動産の所有権が相続人に移転しないため、実家を売却できません。
実家を活用するにせよ売却するにせよ、相続登記されていないと必要な手続きが取れないため、速やかに相続登記を行いましょう。
共有名義はトラブルの要因に
共有名義の不動産相続は、実質的に問題の先送りにしかなりません。
共有名義で相続する場合は、実家売却や賃貸の際に、共有者間で意見や利益の調整が必要です。
売却の際には一般的に共有分のみの売却はできず、土地全体で売却しなければなりません。土地のすべてを売却するには所有者全員の同意が必要となるため、売却に時間がかかります。
共有名義で相続すると、共有者の一人が亡くなった際に二次相続が発生します。二次相続で権利者が複雑化すると、実家の管理や処分に関する意思決定が難しくなるため、おすすめしません。
まとめ
実家を相続した際には考えるべき事柄が多数存在します。
事前に調べずに「なんとなく」で実家を相続すると、後になって大損する可能性があります。実家の相続には適用可能な特例や税制度の理解が必要不可欠です。
相続した実家の取り扱いは人生で数えるほどしかありません。相続人の間で話し合いを進めたり、実家の価値を調べたりなど、事前にできる準備を怠らないようにしましょう。