コラム
2024.11.29 一人っ子向け!実家売却の判断基準3選や注意点を解説
一人っ子の場合、実家を相続するのは基本的に自分です。そのため、実家の処分も自身で判断しなくてはなりません。
相続人がほかにいないケースが多いため、遺産配分の話し合いや遺産分割協議などは不要です。しかし、一人で手続きを進める必要があります。両親が残した実家をどうするべきか、相談できる相手がおらず困る可能性もあるでしょう。
この記事では新潟市中央区の竹鼻不動産事務所が、一人っ子が実家売却を判断する3つの基準や、売却の際に注意する点まで紹介します。
一人っ子で相続する実家がある方は、ぜひ参考にしてください。
一人っ子は実家に帰るべき?売却するかどうかの判断基準3選
いざ実家を相続するとなった際、どうすればよいのか悩む方もいるのではないでしょうか。
一人っ子は社会人になり都会で自宅を構えると、実家に戻れないなどの事情を抱えている場合も。
ここでは、実家を売却すべきか迷った際の判断基準を3つ紹介します。
- 実家に住む・活用する予定がない
- 実家が遠く管理できない
- 維持費の負担が大きい
それぞれ詳しく見ていきましょう。
実家に住む・活用する予定がない
両親が残した実家に住む予定がないのであれば、売却を検討しましょう。
現在の住まいが賃貸の場合、実家に戻ることで家賃を抑えられます。立地や建物の状態がよいのであれば、賃貸として活用することもできます。
しかし、いずれの予定もない場合は、売却手続きを進めるのが堅実でしょう。両親が残した実家を手放すことに罪悪感を覚えるかもしれません。ただ、活用しないまま所持していると負の資産になる可能性が高くなります。
実家が遠く管理できない
家屋に住まなくても、管理のために定期的に通わなければなりません。
建物は人の往来がなくなると、劣化が早まるため、定期的な訪問と点検が必要です。加えて、台風や地震などの災害や犯罪の対策も考えなければなりません。
空き家となった実家の管理は想像以上に手間がかかります。近くに住んでいる場合は対応できるかもしれません。しかし、実家が遠方だと頻繁に帰るのは難しく、さらに一人っ子だと自分だけで管理するため、体力や時間の負担が大きくなります。
自身の生活に影響を与える可能性を考慮すると、売却したほうが心理的な負担感から解放されるでしょう。
維持費の負担が大きい
固定資産税などの税金は毎年1月1日の所有者が納税するため、実家を手放さない限り永続的に税負担がかかります。
人が住まなくなった実家は途端に劣化が進みます。建物や設備が劣化してくると大規模な修繕工事が必要です。家屋の修繕を業者に依頼すると、都度、数万円から数十万円の費用負担が発生します。
税金や修繕費に加え、遠方に住んでいる場合は実家までの交通費もかさみます。
一人っ子は両親の他界後、このような維持費を自分だけで負担しなくてはなりません。実家を売却することで、税金の支払いや維持管理費も不要となります。
実家が空き家になるなら早めの対応が肝心
相続人自身が遠方に住んでいるなど、両親が他界したら実家が空き家になる場合、できる限り早めに対応しましょう。
空き家は所持しているだけで毎年、固定資産税がかかります。放置することで家屋の価値が下がる点にも注意しなければなりません。このような事態を避けるために早めの対策を実施しましょう。
- 空き家売却の特例が使えるのは相続から3年以内
- 特定空き家に指定される
それぞれ詳しく解説します。
空き家売却の特例が使えるのは相続から3年以内
相続した空き家を売却する際に受けられる特例は「空き家相続3,000万円特別控除」です。一定の要件を満たさなければなりませんが、譲渡所得から最大3,000万円が控除されるため、税負担の大幅な軽減ができます。
満たすべき要件の1つは「相続開始があった日から3年を経過する日が属する年の12月31日までに売ること」です。この期限を過ぎて相続した実家を売却した場合、特例を適用できないため、出た利益に譲渡所得税がかかり税負担が増えます。
ほかにも以下の要件があります。
- 昭和56年5月31日以前に建築された建物であること
- 相続から売却まで空き家であること
- 売却金額が1億円以下であること
空き家相続3,000万円特別控除は、相続税の取得費加算の特例と併用はできません。しかし、相続人自身が居住していなくても適用できるため、売却を検討しているのなら積極的に利用しましょう。
参照:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
特定空き家に指定される
空き家のまま放置すると「特定空き家」に指定され、強制的に建物を解体されるおそれがあります。
特定空き家とは、周辺環境に明らかな悪影響を及ぼす空き家を指し、具体的には以下のような空き家が該当します。
- 倒壊の恐れがある
- 適切な管理がなされておらず、著しく景観を損なっている
- 衛生上有害である
突然「特定空き家」に指定されるわけではありません。持ち主に対して、空き家の状況を改善するよう、行政指導が行われます。それでも空き家を放置し、勧告の段階までに改善しないと特定空き家に指定される流れです。
特定空き家に指定されると、固定資産税が最大6倍まで跳ね上がります。また、行政上の義務違反をした罰則で、最大50万円の過料が科されるケースもあります。さらには、行政の代執行によって、空き家が強制的に解体され、空き家の解体費用を全額請求されることも。
このような事態にならないためにも、実家の取り扱いは早めに検討するようにしましょう。
参照:空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報 国土交通省
一人っ子が実家を売却するタイミング
売却のタイミングは相続前(親の存命中)と相続後の2つがあります。
いずれのタイミングであれ、両親の生前に相続や実家の売却に関する意向を確認できると、手続きはスムーズに進められるでしょう。
ここでは、相続前と相続後の売却で取れる手段を紹介します。
相続前
両親が存命中に実家をどうするか決めておけば、亡くなってから迷いません。相続登記や遺産分割協議の手間がかからず、相続手続きは円滑に進むでしょう。
親が存命のうちに取れる方法は以下の2つです。
親が実家を売却する |
|
生前贈与の制度を利用する |
相続後に売却する場合は、登記をはじめさまざまな手続きが必要になります。生前に上記の方法で売却しておけば、相続手続きは楽になります。
【補足】親が認知症の場合は成年後見制度の利用
認知症などで判断能力が不十分となった人の不動産の売買契約は無効となります。そのため、認知症の親を持つ人が親の生前に実家の売却を検討した場合、成年後見人制度を利用する必要があります。
成年後見制度とは、判断能力が不十分となった人を守る制度です。認知症などで判断能力が不十分となった人が不利益を被らないために、成年後見人が契約や財産管理などを代行します。
成年後見人が独断ですべてを決定できるわけではありません。各種手続きには、家庭裁判所の許可が必要です。実家の売却なども、成年後見人が手続きできる場合があります。
相続後
相続後に実家の売却する場合は、相続税や課税評価額が減税されるため、節税効果が高まります。その結果、売却完了後により多くの金額を手元に残せます。
一人っ子の場合、相続手続きなどは自身で対応しなければならないため、負担が大きくなるかもしれません。ただし、基本的に遺産分割は発生せず、トラブルに発展するケースはまれでしょう。
故人の配偶者などが存命の場合は、以下の方法で遺産分割します。
現物分割 | 不動産などをそのまま引き継ぐ方法 |
代償分割 | 特定の相続人が不動産などを相続し、ほかの相続人に代償金を支払う方法 |
換価分割 | 不動産などを売却し、売却で得た代金を相続人で公平に配分する方法 |
共有分割 | 不動産などの相続財産を共有名義にする方法 |
実家の売却で利益が出た場合には譲渡所得税などの税負担がかかります。軽減可能な特例などもあるため、積極的に利用しましょう。
参照:不動産を相続した方へ ~相続登記・遺産分割を進めましょう~ 法務省
一人っ子の相続した実家の最適な売却方法
実家の売却方法には不動産会社に購入希望者探しを依頼する方法と、不動産会社に直接買い取り依頼する方法があります。
購入希望者を探す不動産会社を仲介業者、直接家屋や土地を買い取る不動産会社を買取業者といいます。
実家売却方法は、どちらの不動産会社に依頼するかによって、売却価格や売却までの時期に差が出るので考慮が必要です。
- 時間がかかっても高く売りたいなら「不動産仲介業者」に依頼する
- 早く手間なく売りたいなら「不動産買取業者」に依頼する
どちらに依頼するにしても、複数の不動産会社に査定を依頼するようにしましょう。複数社に依頼すると、実家の適正価格が見えてきます。
それぞれ詳しく解説します。
不動産仲介業者に依頼する
時間がかかったとしても高値で実家を売却したい場合は、不動産仲介業者へ依頼しましょう。不動産仲介業者は、独自のネットワークを通して購入希望者を幅広く募るプロです。ニーズに合った売却方法の提案を受けられるでしょう。
実家の立地や建物状態がよく、すぐに住めるのであれば、購入希望者がすぐに見つかる可能性が高い傾向にあります。反対に、立地や建物状態に問題があれば売却は長引きます。
不動産仲介業者はあくまで買主を見つけることが仕事です。仲介業者がいくら宣伝しても、物件に問題があれば、購入希望者が見つからないケースもあるでしょう。
もっとも、建物の立地条件がよければ、建物状態が悪くても売却は可能です。より多くの金額を残したいのであれば、不動産仲介業者への依頼を検討しましょう。
ただし、売却が完了するまでの間は固定資産税などの支払い義務が発生します。覚えておきましょう。
不動産買取業者に依頼する
早く手間なく実家を売却したい場合は、不動産買取業者へ依頼しましょう。不動産買取業者は、買い取った建物に修繕やリフォームなどの手を加え、購入希望者に再販する専門家です。実家の最適な活用方法を見出せるでしょう。
不動産買取業者は仲介業者と比べて実家の売却価格は安いケースが多いですが、物件の条件や状態がやや悪くても対応可能です。
大規模修繕が必要な建物でも買取りは可能です。しかし、立地条件が悪いと不動産業者でも買い取らないケースは多々あります。
実家のエリアに不安がある場合は、買い取りの依頼をする前に、買い取り可能なエリアか相談や確認をしましょう。
一人っ子が実家を相続・売却する際の注意点
実家の相続や売却では大きな金額が動くうえに、さまざまな手続きも発生します。
ここでは、一人っ子が実家の相続や売却する際の注意点を3つ紹介します。
- 相続税の基礎控除が少ない
- 周りに相談できる人がいない
- 相続人が複数いれば遺産分割協議書が必要
相続税の計算においては、相続人の数が少ないほど不利になるケースがあります。また、一人っ子であっても遺産相続協議が必要になる可能性もあるため、詳しく見ていきましょう。
相続税の基礎控除が少ない
一人っ子と兄弟姉妹がいる場合の相続で違いが出るところは、相続税の計算において基礎控除額が少ない点です。
相続税の課税対象は、相続財産の合計額から基礎控除額を差し引いた部分です。基礎控除額の計算は以下の方法で行います。
- 基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人
※法定相続人とは民法で定められた相続人のこと。おもに配偶者、子ども、親、孫・ひ孫、兄弟姉妹、甥・姪が該当
法定相続人の人数が多いほど基礎控除額は大きくなるため、税制上有利になります。
一人っ子の場合、故人の配偶者と揉めても、兄弟姉妹間で争いはありません。最終的には両親の相続財産をすべて相続できるため、納税額が高くても、相続財産を分ける必要がない点は利点と言えるでしょう。
ただし、相続財産が不動産だけの場合には注意が必要です。
両親が他界し実家を取得しても、基礎控除額が少ない分、相続税を負担する確率は高くなります。相続税は原則、現金で納付しなければなりません。実家に住み続けたい場合、相続税納付の現金を調達する必要に迫られるでしょう。
周りに相談できる人がいない
実家を今後どうするか、兄弟姉妹がいる人なら相談しながら進められます。しかし、一人っ子の場合は周りに相談できる相手がおらず、抱え込んでしまうケースもあるでしょう。
実家売却を検討しているなら、信頼のおける不動産会社に相談するのがおすすめです。
実家がある地域や築年数、建物の広さなどから売却金額の提案や、不動産に関する質問に対して的確なアドバイスが期待できます。
ただし、最初から1つの不動産会社に依存すると、物件の過小評価や適切なサービスや条件を見逃す可能性があります。反対に、高く評価しすぎて買い手が見つからないリスクにも注意しましょう。
相談のときから複数社に話を聞くと、物件の市場価値をより正確に把握でき、適切な価格設定が可能です。地域に根付いた不動産会社からは購入希望者の購入金額相場などの情報を得られるかもしれません。
相続人が複数いれば遺産分割協議書が必要
遺産分割協議書が必要かは、一人っ子かどうかではなく、相続人が複数いるかどうかによります。
一人っ子が相続する場合であっても、相続人が2名以上(故人の配偶者と子など)いる場合には、遺産分割協議書が必要になります。とはいえ、故人の配偶者と子であれば、相続割合は50:50のため、よほどのことがない限り揉める確率は低いでしょう。
故人に前配偶者との間の子どもがいる場合には、遺産分割協議が必要です。このようなケースの法定相続人には「元配偶者との婚姻時に生まれた子」も追加されます。
可能であれば、両親の存命中に配偶者と子以外の法定相続人の有無を確認しておきましょう。
まとめ
一人っ子の場合、実家売却はすべての手続きを1人で行わなければなりません。そもそも、実家に帰るか売却するかといった部分から1つずつ決めなければならない点も、重荷に感じるでしょう。
実家の相続や売却は不動産会社が詳しく理解しています。売却タイミングによって利用できる特例や制度の紹介も可能です。不明な点があれば、信頼のおける不動産会社や専門家に相談して、一人で悩まないようにしましょう。