収益物件売却時に
かかる税金とは?
計算例や節税方法まで紹介
収益物件を売却する際には、様々な税金が課せられます。事前に税金の種類や計算方法を理解しておくことで、手元に残る金額を正確に把握し、適切な節税対策を講じることができます。
本記事では、収益物件売却時にかかる税金について詳しく解説します。
収益物件の売却時に
かかる税金の種類
収益物件を売却する際には、主に以下の税金が発生します。それぞれの税金について、詳しく見ていきましょう。
譲渡所得税
譲渡所得税は、収益物件を売却して得た利益(譲渡所得)に対して課される税金です。収益物件売却時の最も大きな税負担となります。
譲渡所得 = 譲渡収入金額 - (取得費 + 譲渡費用)
- 譲渡収入金額: 物件の売却価格
- 取得費: 物件の購入代金、購入時の仲介手数料、登記費用など(建物部分は減価償却後の金額)
- 譲渡費用: 売却時の仲介手数料、測量費、建物解体費用など
所有期間による税率の違い
譲渡所得税は、物件の所有期間によって税率が大きく異なります。
| 短期譲渡所得 (所有期間5年以下) |
所得税30% + 住民税9% = 39% |
|---|---|
| 長期譲渡所得 (所有期間5年超) |
所得税15% + 住民税5% = 20% |
所有期間は、売却した年の1月1日時点で判定されます。例えば、2019年3月に取得した物件を2024年4月に売却した場合、2024年1月1日時点では所有期間が5年未満のため、短期譲渡所得として課税されます。
参考: 国税庁「譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」住民税・復興特別所得税
住民税
住民税は譲渡所得に対して課される地方税です。
- 短期譲渡所得: 9%
- 長期譲渡所得: 5%
住民税は所得税と併せて計算されますが、納付時期が異なります。所得税は確定申告時に納付しますが、住民税は翌年度に市区町村から納付書が送付されます。
復興特別所得税
復興特別所得税は、東日本大震災からの復興財源を確保するために創設された税金で、2037年(令和19年)まで課税されます。(税率: 所得税額の2.1%)
例えば、譲渡所得税(所得税部分)が100万円の場合、復興特別所得税は2万1,000円となります。
実効税率(復興特別所得税を含む)
短期譲渡所得: 30.63% + 住民税9%
= 39.63%
長期譲渡所得: 15.315% + 住民税5%
= 20.315%
登録免許税・印紙税
登録免許税(抵当権抹消登記)
収益物件に住宅ローンなどの抵当権が設定されている場合、売却時に抵当権を抹消する必要があります。その際に登録免許税が発生します。
税額: 不動産1個につき1,000円
土地と建物それぞれに抵当権が設定されている場合は、合計2,000円となります。
印紙税
不動産売買契約書に貼付する収入印紙代として、印紙税が必要です。税額は契約書に記載された金額によって異なります。
2024年3月31日までの軽減税率(2024年度税制改正により延長される可能性があります)
| 契約金額 | 軽減税率 | 本則税率 |
|---|---|---|
| 100万円超〜500万円以下 | 1,000円 | 2,000円 |
| 500万円超〜1,000万円以下 | 5,000円 | 10,000円 |
| 1,000万円超〜5,000万円以下 | 10,000円 | 20,000円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 30,000円 | 60,000円 |
| 1億円超〜5億円以下 | 60,000円 | 100,000円 |
消費税
事業者が収益物件を売却する場合、建物部分に消費税が課税されます。ただし、土地部分は非課税です。
消費税の税率は10%(標準税率)です。建物の売却価格が2,000万円の場合、消費税は200万円となります。
課税される場合
- 法人が売却する場合
- 個人事業主として賃貸事業を行っている場合で、事業所得として申告している場合
課税されない場合
- 個人(非事業者)が売却する場合
- 不動産所得として申告している個人の場合
なお、売却する側が課税事業者であっても、前々年の課税売上高が1,000万円以下の場合は免税事業者となり、消費税の納税義務はありません。ただし、買主側は消費税込みの金額を支払うことになります。
参考: 国税庁「消費税のしくみ」収益物件を売却した際の
シミュレーション
実際の売却事例を想定して、税金の計算をシミュレーションしてみましょう。
シミュレーション条件
- 売却価格: 5,000万円 (土地2,000万 / 建物3,000万)
- 購入価格: 4,000万円 (土地1,500万 / 建物2,500万)
- 購入時期: 7年前
- 取得時の状態: 新築
- 建物構造: 鉄筋コンクリート造 (法定耐用年数47年)
- 購入時諸費用: 150万円(仲介手数料、登記費用等)
- 売却時諸費用: 170万円(仲介手数料、印紙税等)
- 減価償却費: 建物2,500万円 × 0.022(償却率) × 7年 = 385万円
1. 取得費の計算
土地: 1,500万円
建物: 2,500万円 - 385万円(減価償却費)
= 2,115万円
購入時諸費用: 150万円
取得費合計:
1,500万円 + 2,115万円 + 150万円 = 3,765万円
2. 譲渡所得の計算
3. 税金の計算(長期譲渡所得)
所有期間が7年(5年超)のため、長期譲渡所得として計算します。
- 所得税: 1,065万円 × 15% = 159.75万円
- 復興特別所得税: 159.75万円 × 2.1% = 3.35万円
- 住民税: 1,065万円 × 5% = 53.25万円
税金合計: 216.35万円
5,000万円 - 170万円(売却諸費用) - 216.35万円(税金) =
短期譲渡所得の場合との比較
もし所有期間が5年以下だった場合の税金を計算してみましょう。
- 所得税: 1,065万円 × 30% = 319.5万円
- 復興特別所得税: 319.5万円 × 2.1% = 6.71万円
- 住民税: 1,065万円 × 9% = 95.85万円
税金合計:422.06万円
このように、所有期間が5年を超えるかどうかで、約206万円もの税負担の差が生じます。売却のタイミングを検討する際には、所有期間5年の境目を意識することが重要です。
収益物件の売却で
利用可能な節税対策
収益物件売却時の税負担を軽減するために、以下の節税対策を検討しましょう。
1. 所有期間を5年超にする
前述の通り、所有期間が5年を超えると税率が大幅に下がります。売却を検討している場合、可能であれば5年超になるまで待つことで大きな節税効果が得られます。
注意点: 所有期間は売却した年の1月1日時点で判定されるため、実際の購入日から5年以上経過していても、判定日基準では5年以下となる場合があります。
2. 減価償却を正確に計上する
建物の減価償却費を正確に計算し、毎年の確定申告で適切に計上することで、売却時の譲渡所得を抑えることができます。
減価償却のポイント
3. 取得費に含められる費用
以下の費用は取得費に含めることができます。漏れなく計上することで譲渡所得を減らせます。
- 購入時の仲介手数料
- 登記費用(登録免許税、司法書士報酬)
- 不動産取得税
- 測量費
- 建物解体費用(新たに建物を建てる目的の場合は取得費、建物を取り壊して土地のみを売却する場合は譲渡費用)
- 改良費(物件の使用可能期間を延長、または価値を増加させる支出)
4. 譲渡費用に含められる費用
売却時にかかった以下の費用は譲渡費用として計上できます。
- 売却時の仲介手数料
- 印紙税
- 測量費
- 建物解体費用(更地での売却の場合)
- 立退料(賃借人に支払った立退料)
- 広告費(売却のために支出した広告費)
5. 事業的規模での損益通算
不動産賃貸業を事業的規模(おおむね5棟10室以上)で行っている場合、譲渡損失が発生した際に他の不動産所得と損益通算できる可能性があります。
ただし、土地建物の譲渡損失については、一定の制限があるため、税理士に相談することをお勧めします。
6. 特定事業用資産の買換え特例
一定の要件を満たす場合、「特定の事業用資産の買換えの特例」を利用できる可能性があります。この特例を利用すると、譲渡益の一部を繰り延べることができます。
主な要件
7. 複数年での分割譲渡
大規模な収益物件の場合、複数の区画に分割して複数年にわたって売却することで、各年の譲渡所得を分散させ、累進課税の影響を抑えられる場合があります。
ただし、一括売却よりも売却価格が下がる可能性や、管理コストの増加などのデメリットも考慮する必要があります。
収益物件売却後の
確定申告のポイント
収益物件を売却した場合、翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告を行う必要があります。正確な申告を行うために、以下のポイントを押さえておきましょう。
確定申告が必要な場合
譲渡損失が発生した場合でも、特例の適用を受けるためには確定申告が必要です。
必要な書類
確定申告には以下の書類が必要です。事前に準備しておきましょう。
必須書類
- 確定申告書B(第一表・第二表)
- 確定申告書第三表(分離課税用)
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
- 売買契約書のコピー(売却時・購入時の両方)
- 仲介手数料等の領収書
- 登記事項証明書(登記簿謄本)
場合によって必要な書類
- 減価償却費の計算明細
- 取得費や譲渡費用を証明する領収書・契約書
- 特例適用のための各種証明書
取得費が不明な場合の対応
相続した物件や古い物件で購入時の契約書が見つからない場合、以下の方法で取得費を証明できる可能性があります。
- 概算取得費(5%)の適用:
売却価格の5%を取得費とする方法。ただし、実際の取得費が5%を上回る場合は不利になります。 - 実額取得費の推定:
以下の資料で実額の取得費を証明する
通帳の出金記録、住宅ローンの契約書・返済予定表、当時の不動産価格を示す資料(公示地価、路線価、不動産鑑定評価等)、建築会社の契約書や領収書
税務署は合理的な根拠があれば実額での取得費を認める場合があるため、可能な限り資料を収集しましょう。
減価償却費の計算に注意
建物の減価償却費は、毎年の不動産所得の計算で適切に計上されていることが前提となります。過去に減価償却費を計上していなかった場合でも、売却時の取得費計算では減価償却費を差し引く必要があります。
これを「償却費相当額」と呼び、実際に経費計上したかどうかにかかわらず控除しなければなりません。
確認ポイント
住民税の納付に備える
所得税は確定申告時に納付しますが、住民税は翌年度(6月以降)に市区町村から納付書が送付されます。
譲渡所得が大きい場合、住民税も高額になるため、納付資金を確保しておく必要があります。特に、売却代金を別の用途に使ってしまった場合、翌年の住民税の納付に困ることがあるため注意が必要です。
確定申告書の作成方法
確定申告書の作成には以下の方法があります。
- 税務署で相談しながら作成: 確定申告期間中は税務署に相談窓口が設置されます
- 国税庁の確定申告書等作成コーナーを利用: e-Taxでオンライン提出も可能
- 税理士に依頼: 複雑な案件や高額な譲渡所得がある場合は推奨
申告期限と延滞税
確定申告の期限は、売却した年の翌年3月15日です。期限を過ぎると以下のペナルティが発生する可能性があります。
- 無申告加算税: 原則として納付すべき税額の15%(自主的に期限後申告した場合は5%)
- 延滞税: 納期限の翌日から納付日までの日数に応じて加算(年率最大14.6%)
期限内に正確な申告を行うことが重要です。
税理士への相談を
検討すべきケース
以下のような場合は、税理士に相談することをお勧めします。
税理士報酬は発生しますが、適切なアドバイスにより節税効果が得られる場合や、申告ミスによるペナルティを避けられるメリットがあります。
まとめ
収益物件の売却には、譲渡所得税、住民税、復興特別所得税、登録免許税、印紙税、場合によっては消費税など、様々な税金がかかります。特に譲渡所得税は所有期間によって税率が大きく異なるため、売却のタイミングを慎重に検討することが重要です。
また、減価償却費の適切な計上、取得費・譲渡費用の漏れのない計上、特例の活用など、様々な節税対策を講じることで税負担を軽減できます。
売却後は必ず確定申告を行い、必要に応じて税理士などの専門家に相談しながら、適切な税務処理を行いましょう。
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