コラム
2024.11.21 実家売却にかかる4つの税金とは?対策から支払時期まで解説
実家の売却に税金がかかるのは知っているものの、どのような税金がかかるのか、支払時期はいつなのか悩んでいませんか。
相続した実家を売却する状況によって税金や利用可能な特例が異なります。前もって税制度を理解して計画を立てないと、売却後の生活に影響を及ぼすでしょう。
この記事では、新潟市中央区の竹鼻不動産事務所が、売却時にかかる税金の種類や利用できる特例から、税金の支払時期まで解説します。
これらを把握したうえで、実家売却で損をしない税金対策をしていきましょう。
実家の売却にかかる4つの税金
実家売却に向けた手続きの過程で、大きく4種類の税金が課されます。
- 相続税:不動産を相続した際にかかる
- 登録免許税:相続登録手続きの際にかかる
- 印紙税:契約書の作成にかかる
- 譲渡所得税:不動産の売却で得た利益に対してかかる
売却において消費税がかかる場合もありますが、実家売却で消費税がかかるケースはほぼゼロのため省略します。
では、4種類の税金に課税される対象や内容を詳しく見ていきましょう。
相続税
不動産などの財産を相続した際にかかる税金です。
相続財産には実家だけではなく預金、骨董品、証券、株、自動車、保険の権利などが含まれます。重要なのは、相続人には相続の発生を知った日から10ヶ月以内の申告が義務付けられている点。
相続税は遺産総額から基礎控除額を差し引いた金額(課税遺産総額)に対して課税されます。相続税の基礎控除額の計算方法は以下のとおりです。
- 基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人
※法定相続人とは民法で定められた相続人のこと。おもに配偶者、子ども、親、孫・ひ孫、兄弟姉妹、甥・姪が該当
相続税と聞くと、多額の税金がかかるイメージがあるかもしれません。しかし、実際には基礎控除額の方が遺産総額よりも大きく、令和4年時点での課税件数は全体の9.6%程度に留まっています。
登録免許税
実家の相続が完了したら、次に所有者名義を変更する相続登記手続きを実施します。このときにかかる税金が登録免許税です。
登録免許税は不動産の登記申請の際に課税される税金です。所有権を移転する際に課税されるほか、住宅ローン利用時にも金融機関の抵当権設定時に課税されます。
相続における名義変更には、不動産の固定資産評価額の0.4%の登録免許税が課税されます。
相続登記の手続きは少々複雑であるため、司法書士に依頼するのが一般的です。その場合、登録免許税は司法書士による代理納付(依頼者は現金で支払い)とするケースが大半です。
司法書士に依頼した場合、報酬として別途5万円から10万円ほどがかかります。依頼するか家族と相談のうえ決めましょう。
印紙税
契約書の作成にかかる税金で、収益の有無に関わらず支払わなければいけません。印紙税額は書面などに記載された契約金額や内容により変動します。
実家売却の際は、おもに売買契約書を取り交わすときに発生します。
なお、収入印紙の貼り忘れなどが発覚した場合、本来払うべき印紙税の2倍相当の金額が科されることがあります。
納税義務者は決められておらず、売り主が支払う場合や仲介業者が負担する場合も。実家の売買が決まったら、納税方法を事前に確認しましょう。
譲渡所得税
不動産や資産の売却によって得た利益(譲渡所得)に対して課されるのが譲渡所得税です。
譲渡所得は、売却価格から物件の購入費や売却にかかった費用などを差し引いて算出します。そのため、利益がない場合には、譲渡所得税はかかりません。
売却利益(譲渡所得)に課されるため、実家の相続前後どちらに売却をした場合でも発生します。譲渡所得税は資産の所有者に税負担の義務があるため、相続前の売却だと被相続人が、相続後の売却では相続人が税負担を負います。
税率は売却した不動産の所有期間によって変わる点にも注意しましょう。
名称 | 税率 | 所有期間 |
短期譲渡所得 | 39.63%
所得税:30.63% 住民税:9% |
譲渡した年の1月1日において所有期間が5年以下のもの |
長期譲渡所得 | 20.315%
所得税:15.315% 住民税:5% |
譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるもの |
※税率には復興特別所得税の2.1%相当が上乗せされています。
所有期間は単純に5年超(5年以内)で判別するわけではないため注意が必要です。
長期譲渡所得の税率が20.315%に対して、短期譲渡所得は39.63%と倍近い税率です。不動産の所有期間が違うだけで、約半分と税率が大きく変わるため、支払う税金の額にも大きく差が出ます。売却するタイミングが非常に重要ですね。
相続前の実家売却に利用できる3つの特例
実家売却は動く金額が大きい分、税負担も重くなるため、特例が用意されています。
まずは、親の存命中(相続前)に実家を売却した場合に利用できる特例を3つご紹介します。
- マイホームを売ったときの特例
- マイホームを売ったときの軽減税率の特例
- 特定のマイホームを買い換えたときの特例
どれも「マイホーム」とあるように、相続前に被相続人(親)が自宅の売却手続きをしなければなりません。それぞれ詳しく見ていきましょう。
マイホームを売ったときの特例
マイホームの所有期間の長短に関係なく、譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例です。
一定条件を満たすことで適用可能ですが、次の家屋には対象外なので注意してください。
- この特例の適用を受けることだけを目的として入居したと認められる家屋
- 居住用家屋を新築する期間中だけ仮住まいとして使った家屋
- 一時的な目的で入居したと認められる家屋
- 別荘など、主として趣味や娯楽、保養のために所有する家屋
マイホームを売ったときの特例は不動産売却において、節税効果が高い特例の1つです。適用できる場合は積極的に利用しましょう。
マイホームを売ったときの軽減税率の特例
マイホームを売却し、一定の要件に当てはまった場合に、長期譲渡所得の税額を通常よりも低い税率で計算する特例です。
以下5つの要件すべてを満たす必要がありますが、マイホームを売ったときの特例と併用できます。
- 現に住んでいるまたは以前住んでいた家屋などの資産であること
- 家屋を取り壊した日が属する年の1月1日において所有期間が10年を超えるもの
- 敷地の譲渡契約を家屋を取り壊した日から1年以内に締結し、住まなくなった日から3年を経過する日が属する年の12月31日までに売ること
- 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと
- 家屋が災害により滅失した場合、災害があった日もしくは住まなくなった日から3年を経過する日が属する年の12月31日までに売るもの
- 売った年の1月1日において売った家屋や敷地の所有期間がともに10年を超えていること
- 売った年の前年および前々年にこの特例の適用を受けていないこと
- 売った家屋や敷地についてマイホームの買換えや交換の特例などほかの特例の適用を受けていないこと
- 親子や夫婦など「特別の関係がある人」に対して売ったものでないこと
マイホームを売ったときの特例と追加で適用できると、大幅な軽減を受けられるため入念に確認しておきましょう。
参照:No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例 国税庁
特定のマイホームを買い換えたときの特例
要件を満たしたマイホームを令和7年12月31日までに売却後、買い換えたときに利用できる特例です。
以下の要件のもと、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べられます。
- 現に自分が住んでいる家屋
- 以前に住んでいた家屋
- 現に住んでいる家屋または以前住んでいた家屋とともに売ったその敷地や借地権
- 現に住んているまたは以前住んでいた家屋を取り壊した場合の家屋およびその敷地
- 家屋が災害により滅失した場合の敷地
売却で利益が発生しても、すぐに譲渡所得税を支払う必要がありませんが、税負担を次の売却時まで繰り延べるだけに過ぎません。将来、支払いが発生する点に注意しましょう。
特定のマイホームを買い換えたときの特例は、スムーズな住み替えを実現できます。しかし、税負担を将来に繰り延べている点で使いどころが難しい特例といえるでしょう。
No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例 国税庁
【補足】生前贈与した実家を売却する場合
相続ではなく、生前贈与として実家を受け継ぐ方もいるでしょう。
実家の名義が受贈者になっていれば、受贈者は実家を自由に売却可能です。相続と比べ贈与の場合は、法務局で所有権移転登記を実施し、贈与の登記をすれば完了します。そのため、手続きにかかる手間を抑えられます。
ただし、贈与税や不動産取得税には注意が必要です。
親から18歳以上の子へ無償で贈与をする場合、特例贈与財産の税率が適用されます。この基礎控除は1年に110万円までのため、実家の評価額によっては多額の贈与税が課税される可能性を考慮しなければなりません。
贈与税対策には2つの制度があげられます。2,500万円までなら贈与税がかからない相続時精算課税制度と、贈与税の基礎控除枠を利用して毎年贈与する暦年贈与課税です。
贈与税のほかにも不動産取得税や登録免許税なども課税されるため、覚えておきましょう。
相続後の実家売却に利用できる3つの特例
売却時期が相続後の場合に押さえておきたいのが、下記3つの特例です。特例の要件を満たす必要がありますが、適用可能な場合は積極的な利用をおすすめします。
- 空き家相続3,000万円特別控除
- 小規模住宅等の特例
- 取得費加算の特例
それぞれ詳しく見ていきましょう。
空き家相続3,000万円特別控除
被相続人が亡くなったことにより、空き家となった実家を売却する際に利用できる特例です。
親から相続した実家の売却時に得た利益(譲渡所得)から最大3,000万円の控除が可能です。相続人自身が居住していなくても適用できる点はメリットと言えるでしょう。
なお、利用するには一定の条件を満たす必要があります。
- 昭和56年5月31日以前に建築された建物であること
- 相続の開始があった日から3年目の12月31日までに売却すること
- 相続から売却まで空き家であること
- 売却金額が1億円以下であること
平成28年度税制改正により空き家相続3,000万円特別控除は創設されました。令和5年12月31日までの期間限定の特例でしたが、延長処置が取られ、現在は令和9年12月31日まで適用可能です。
従来、売却にあたって家屋が新耐震基準を満たさない場合は、売主が取り壊しや耐震工事の対応をしなければなりませんでした。しかし、令和6年からは実家を相続した年の翌年2月15日までに、売主または購入者が対応すればよくなりました。
参照:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
小規模宅地等の特例
被相続人の自宅や賃貸アパート、貸駐車場、事業所などの土地の評価額を減額する特例です。
適用可能な場合、居住用または事業用として使用していた不動産の一定の面積まで相続税を減額します。
対象となる土地は、以下のように4つに区分されます。
特定居住用宅地 | 亡くなった被相続人の自宅 |
貸付事業用宅地 | 賃貸アパートや貸駐車場など収益物件 |
特定事業用宅地 | 被相続人の事業用地 |
特定同族会社事業用宅地 | 亡くなった人が自身の経営する同族会社に貸していた土地 |
※同族会社とは、被相続人とその親族の持株割合が50%を超える会社のこと
マンションの場合は土地の評価額がほぼないため利用が難しいですが、戸建てを売る際に適用可能なら大幅な減税が期待できます。
参照:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
取得費加算の特例
相続した資産を一定期間内に譲渡した場合、通常の取得費に加えて相続税額の一部を取得費として加算する特例です。
取得費加算の特例が適用される条件は以下のとおりです。
- 相続や遺贈により財産を取得した者であること
- 財産を取得した人に相続税が課税されていること
- 財産を、相続開始があった日の翌日から相続税の申告期限翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること
この特例はあくまで相続税を負担した人しか利用できません。相続時の譲渡所得が基礎控除を上回らなかった場合は利用できないため、注意が必要です。
また、譲渡所得のみ適用可能な特例のため、株式などの譲渡による事業所得や雑所得には、適用できない点も覚えておきましょう。
実家売却の税金対策の注意点
実家売却には特例の利用以外にも実施すべき取り決めが存在します。
以下の手続きを怠ると処罰が発生する可能性があるため、事前に理解しましょう。
- 譲渡所得が発生すれば確定申告が必要
- 税金の支払時期
それぞれ詳しく見ていきましょう。
譲渡所得が発生すれば確定申告が必要
実家の売却で譲渡所得が出る場合は、実家を売った翌年の2月16日~3月15日の間に確定申告が必要です。
確定申告をしないと無申告加算税や延滞税などが課される可能性があります。
また、特別控除を利用する場合も確定申告が必要です。まずは、自身のケースではどの特例が利用できるのか確認しましょう。
税金の支払時期
実家の売却にかかる税金は、それぞれ支払いのタイミングが違います。
それぞれの税金支払い時期は下記のとおりです。
相続税 | 原則、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月目の日までに金銭で納付 |
登録免許税 | 登記や登録などの申請時 |
印紙税 | 実家売却においては売買契約締結時 |
譲渡所得税 | 確定申告時(実家を売った翌年の2月16日~3月15日の) |
譲渡所得税が発生した場合には確定申告が必要ですが、申告書の提出後に、税務署から納付書や納税通知書の送付はありません。支払時期も売却から時差が発生するため、覚えておきましょう。
まとめ
実家の売却にかかる税金や控除特例はさまざまです。状況によって課される税金や利用できる特例が違うため、理解するのに苦戦する方も多いでしょう。
不動産の売却に関わる税金は、不動産会社が詳しく理解しています。特例や制度を理解することで、負担を軽減できる可能性があります。不明な点があれば、信頼のおける不動産会社や専門家に相談して、実家売却にかかる税金の知識を深めましょう。