新潟市で築年数の経過したアパートを売却しようとしたとき、「昔の修繕資料が残っていない」「前の所有者がいつ外壁を直したのか分からない」「管理会社にも記録がない」といったことがあります。
特に、相続したアパートや、長期間所有している収益物件では、過去の工事内容をすべて把握できているとは限りません。
結論から言えば、修繕履歴がすべて残っていなくても、アパートの売却は可能です。
ただし、修繕履歴がないことと、建物の状態を確認しなくてもよいことは別です。
大切なのは、過去の修繕を無理に証明することではなく、「確認できること」「記憶や伝聞にとどまること」「確認できないこと」「現在把握している不具合」を分けることです。
買主は、過去の工事履歴と現在の建物状態の両方から、購入後にどのような修繕が必要になりそうかを判断します。
この記事では、新潟市で修繕履歴がないアパートを売却する際に、資料の探し方、現況確認、不明事項の扱い、買主への説明、契約前の確認事項を整理します。
先に結論|修繕履歴がないことより、建物の状態とリスクを判断できないことが問題
修繕履歴が残っていない物件で、最初に整理したいのが情報の確度です。
| 情報の状態 | 整理・説明の方法 |
|---|---|
| 資料で確認できる | 工事内容・時期・施工範囲・根拠資料を整理する |
| 記憶や伝聞のみ | 誰から得た情報かを明示し、資料による裏付けがないことを伝える |
| 修繕の実施自体が不明 | 実施済みと扱わず「確認できず」とする |
| 現在不具合を把握している | 修繕履歴とは別に、現在の状態・対応状況を整理する |
修繕履歴が不明だからといって、直ちに売却できないわけでも、必ず査定価格が下がるわけでもありません。
一方、現在の状態も確認できず、今後の修繕費も予測しにくい場合は、買主が慎重になることがあります。
売却前に目指したいのは、履歴の空欄をすべて埋めることではなく、買主が収益と修繕リスクを合理的に判断できる状態をつくることです。
「修繕履歴がない」と「一度も修繕していない」は違う
築20年、30年と経過したアパートでは、これまで一度も修理していないというより、修理した記録が残っていないケースもあります。
例えば、
- 外壁塗装を実施したが請求書を処分した
- 管理会社が手配したため所有者の手元に記録がない
- 前所有者が修繕したものの引継ぎ資料がない
- 設備故障のたびに小規模な修理をしていた
- 管理会社の変更によって古い記録が引き継がれていない
といったことが考えられます。
ただし、資料がない以上、「きっと修繕しているはず」と判断することもできません。
反対に、資料が見つからないことだけを理由に「未修繕」と断定するのも正確ではありません。
まずは、実施したことが確認できる工事と、実施の有無が分からない工事を分ける必要があります。
修繕履歴がない場合、まずどこから資料を探す?
修繕履歴の一覧表が残っていなくても、別の資料から過去の工事内容を確認できることがあります。
売主様の手元にある資料
- 工事請負契約書・見積書
- 請求書・領収書
- 銀行口座の振込履歴
- 工事前後の写真
- 施工会社とのメール・書面
- 火災保険等の事故・修理関係資料
- 過去の会計資料・確定申告関係資料
管理会社・施工会社へ確認する資料
- 過去の修理依頼・対応記録
- 外壁・屋根・防水等の工事記録
- 設備交換・給排水修理の履歴
- 入居者からの雨漏り・漏水等の申告記録
- 過去の管理会社から引き継いだ資料
ただし、見積書があることと、実際に工事が完了したことは同じではありません。
見積もりを取得しただけで工事を発注していない可能性もあるため、請求書、支払記録、施工写真などと照合できれば、より確かな情報になります。
すべてを復元できなくても問題ありません。まずは、屋根・防水・外壁・給排水など、今後まとまった費用が発生しやすい部分から確認するとよいでしょう。
修繕履歴を作るときは、工事内容だけでなく根拠も記録する
過去の資料を確認したら、工事内容、実施時期、根拠資料を一覧に整理します。
例えば、以下のような形です。なお、記載内容は説明のための架空例です。
| 部位 | 確認内容 | 根拠・確認状況 |
|---|---|---|
| 外壁 | 2021年に塗装工事を実施 | 請求書・施工写真あり |
| 屋根 | 過去に補修したとの情報あり。時期不明 | 前所有者からの伝聞のみ。資料による裏付けなし |
| 給湯器 | 一部住戸で交換を確認 | 管理会社の交換記録あり |
| 給排水管 | 更新工事の実施有無が不明 | 資料を確認できず |
このようにすれば、買主はどの工事が確認済みで、どこに不明事項が残るのか判断できます。
特に注意したいのは、実施自体が確認できていない工事を「実施時期不明の修繕履歴」として記載してしまうことです。
工事を実施したかどうか不明なのであれば、「実施有無不明」と記載する方が正確です。
過去の雨漏り・漏水は、修理済みでも確認しておきたい
過去の修繕履歴の中でも、買主が特に気にすることがあるのが雨漏りや漏水です。
例えば、過去に雨漏りがあり、その後補修を行っていた場合でも、
- どの場所で発生したのか
- いつ頃発生したのか
- 原因は特定できたのか
- どの範囲を修理したのか
- 修理後に再発したことはあるか
- 現在確認できている状態はどうか
を整理します。
「過去に修理した」と「原因が解消され、今後も再発しない」は同じ意味ではありません。
また、現在雨漏りが確認されていないからといって、過去の雨漏りがなかったことにもなりません。
過去に発生した不具合、修繕内容、現在の確認状況をそれぞれ分けて説明することが重要です。
過去の記録が分からなければ、現在の建物状態を確認する
過去の修繕履歴をすべて復元できない場合には、現在の建物状態を確認することが重要になります。
例えば、
- 屋根・防水
- 外壁・シーリング
- 共用廊下・階段
- 給排水設備
- 雨漏り・漏水の有無
- 電気・共用設備
- 駐車場・外構
- 空室住戸の室内
などです。
ただし、ここでも確認結果の表現には注意が必要です。
| 確認結果 | 意味 |
|---|---|
| 不具合を確認した | 調査した範囲で具体的な不具合が認められた |
| 不具合は確認されなかった | 調査した範囲・時点では不具合を確認できなかった |
| 未調査 | その部分について調査を実施していない |
| 調査できず | 立入りや構造上の制約等により確認できなかった |
「調査した範囲で不具合が確認されなかった」と「建物に不具合がない」は別です。
特にアパートでは、入居中住戸の室内や隠れた配管、屋根の一部など、現地確認が難しい場所もあります。
確認できなかった部分まで「異常なし」と説明することは避けたいところです。
必要に応じて建物状況調査・専門家による現況確認を検討する
建物状態に不明事項が多い場合には、建築士や施工会社などに現況確認を依頼する方法もあります。
また、対象となる建物や調査条件に応じて、建物状況調査(インスペクション)の利用を検討することもできます。
ただし、建物状況調査は、目視を中心とした非破壊調査により、一定の劣化事象等を把握するものです。
すべての箇所を調査するものではなく、建物に欠陥がないことや、将来不具合が発生しないことを保証するものではありません。
制度の概要や調査の限界については、国土交通省の建物状況調査に関する案内も参考になります。
調査を行う場合は、実施日、調査範囲、調査できなかった部分、確認された事象を記録しておきます。
売却するから必ず調査が必要というわけではありません。建物状態、費用、買主が必要とする情報を踏まえて判断します。
修繕履歴がない場合、見積もりを取得するだけでも意味がある
外壁や屋根などに劣化が見られ、近い将来まとまった修繕費が必要と考えられる場合には、工事見積もりを取得する方法があります。
買主からすると、
「修繕履歴がなく、今後いくらかかるか分からない」
という状態より、
「修繕履歴は一部不明だが、現在の状態を確認し、この範囲の工事で概算○万円という見積もりがある」
という状態の方が資金計画を立てやすくなります。
もちろん、見積書だけで建物全体の状態を判断できるわけではありません。見積もりに含まれない部分や、工事中に追加費用が発生する可能性もあります。
それでも、不明な修繕費を、一定の前提条件に基づいて検討できる数字にするという意味があります。
また、修繕履歴がないからといって、売却前にすべて工事する必要はありません。
売主様が修繕するか、見積もりだけ用意するか、現況を説明して買主に判断してもらうかは、修繕費と売却条件を比較して決めます。
修繕するかどうかの判断については、「新潟市で築古アパートは売れる?修繕してから売るべきか、そのまま売るべきか」で詳しく整理しています。
修繕履歴がないと査定価格は下がる?
修繕履歴がないことだけで、査定価格が一律に下がるわけではありません。
価格への影響は、現在の建物状態、収益性、必要な修繕費、買主が想定するリスクによって変わります。
例えば、資料が一部不足していても、現在の状態が確認でき、必要な工事費について見積もりがあり、賃料収入も安定していれば、買主は収支を検討しやすくなります。
一方、修繕履歴が不明で、現況も確認できず、購入後の費用を予測しにくい物件では、買主が余裕を持って修繕費を見込むことがあります。
それが購入価格の引下げ交渉につながる可能性もあります。
価格へ影響するのは、履歴がないという事実だけではなく、その結果として買主がどの程度の費用や不確実性を負担すると考えるかです。
なお、アパートの査定価格は修繕履歴だけで決まるものではありません。賃料収入、NOI、空室、積算評価、買主融資、将来の出口なども合わせて評価されます。
詳しくは、「新潟市でアパート売却の査定価格はどう決まる?NOI・利回り・積算・融資・出口の見方」をご覧ください。
現況売却でも、把握している不具合は買主へ説明する
修繕履歴がないアパートでも、現況のまま売却することはできます。
ただし、現況売却と、売主様が把握している不具合を説明しないことは別です。
例えば、
- 現在発生している雨漏り・漏水
- 過去に発生した雨漏り・漏水の履歴
- 設備の故障や不具合
- 共用階段・廊下などの危険箇所
- 入居者から継続的に指摘されている事項
- 過去の応急処置や原因未特定の補修
などは、修繕履歴とは別に整理しておきます。
売買契約で契約不適合責任の範囲を定めたり、一定の責任を負わない旨の特約を設けたりする場合もあります。
しかし、民法第572条では、売主が知りながら告げなかった事実については、担保責任を負わない旨の特約をした場合でも責任を免れないことが定められています。
そのため、「現況渡しだから」「免責特約を設けるから」という理由で、把握している不具合を説明しなくてよいとは考えない方が適切です。
不具合があること自体が必ず売却の妨げになるわけではありません。買主がその状態を理解し、価格や契約条件を含めて合意することが大切です。
契約前には「修繕履歴・現在の不具合・契約条件」を整合させる
売却準備で整理した情報は、販売資料だけで終わらせず、契約前の説明にも反映します。
特に、次の3つを分けて整理すると分かりやすくなります。
| 資料 | 整理する内容 |
|---|---|
| 修繕履歴一覧 | 過去に実施した工事、時期、範囲、根拠資料、未確認事項 |
| 物件状況報告書(告知書)等 | 現在把握している不具合、過去の発生履歴、対応・確認状況 |
| 売買契約書・関連書類 | 引渡し時の状態、修繕対応、契約不適合責任の範囲、当事者間の合意事項 |
例えば、過去に雨漏りがあり、補修を実施したものの原因が完全に解消されたか確認できていない場合を考えます。
修繕履歴には補修内容と確認できる根拠を記載し、物件状況報告書等では過去の雨漏りと現在の確認状況を整理します。
そのうえで、必要に応じて、売主・買主の修繕対応や責任の範囲を契約条件として調整します。
大切なのは、修繕履歴で「補修済み」と説明しているのに、現在の状態や契約条件がそれと食い違っている、といった事態を避けることです。
また、売買契約までの間に新たな不具合が分かった場合には、必要な情報を更新して買主と確認します。
新潟市で修繕履歴がないアパートを売る前の6ステップ
ここまでの内容を、売却準備の順番に整理します。
- 残っている工事資料を集める
請求書、領収書、写真、振込履歴などを確認します。
- 管理会社・施工会社へ確認する
過去の修理依頼や工事記録が残っていないか確認します。
- 履歴を根拠別に分類する
資料で確認済み、記憶・伝聞のみ、実施有無不明を区別します。
- 現在の状態を確認する
不具合が確認された箇所、確認されなかった箇所、未調査の箇所を分けます。
- 必要に応じて見積もりを取得する
将来の修繕費が大きくなりそうな部分について、現況売却との比較材料を揃えます。
- 買主への説明と契約条件を整理する
修繕履歴・告知内容・売買契約の記載に食い違いがないよう確認します。
この6ステップをすべて完了しなければ売却できないというわけではありません。
資料が残っていない場合や、調査が難しい箇所がある場合も、その状況を明確にして次の判断へ進むことができます。
まとめ|修繕履歴がなくても、分かることと分からないことを整理して売却を考える
新潟市で修繕履歴が残っていないアパートでも、売却することは可能です。
重要なのは、過去の資料を無理に完成させることではありません。
確認できる修繕、裏付けのない情報、確認できない事項、現在の不具合を分けて整理することが大切です。
また、過去の工事履歴が分からない場合でも、現在の建物状態や必要な修繕費について情報を揃えることで、買主の判断材料を増やすことができます。
ただし、現況確認や見積もりを取得したからといって、建物のすべてが分かるわけではありません。調査範囲と限界も含めて説明する必要があります。
修繕履歴がないことを必要以上に悲観する必要はありませんが、分からないことを分かったように説明することも避けたいところです。
売主様が把握している事実を正確に伝え、買主が建物の状態と将来の費用を判断できるようにする。
それが、修繕履歴が不足しているアパートを売却する際の基本だと弊社は考えています。
新潟市で修繕履歴がないアパートの売却を検討している方へ
竹鼻不動産事務所では、新潟市のアパート・一棟収益物件について、修繕履歴がすべて揃っていない場合でも、現在確認できる資料、建物状態、管理会社の記録、必要な修繕、買主が確認したい事項を整理しながら売却方法を検討しています。
「昔の工事資料を処分してしまった」「相続したため修繕履歴が分からない」「過去の雨漏りをどう説明すればよいか分からない」「修繕してから売るべきか判断したい」といった段階でも問題ありません。
すぐに売却を決める必要はありません。まずは確認できる情報を整理し、現況売却・修繕見積もりの取得・必要な修繕のどれが合理的かを一緒に考えられればと思います。
