新潟市で一棟アパートの売却を考えているオーナー様から、「一括借上げ・サブリース契約が残っていても売却できますか?」と相談されることがあります。
結論から言えば、サブリース中のアパートでも売却することは可能です。
ただし、通常管理のアパートと同じように「年間家賃が○万円だから利回り○%」だけで査定するのは適切ではありません。
サブリース物件では、
- オーナーとサブリース会社との契約内容
- オーナーが受け取っている借上げ賃料
- 実際の入居者から得ている賃料
- 賃料改定の条件
- 契約期間
- 更新・解約条件
- 修繕・原状回復の負担
- 所有者変更時の契約関係
- マスターリース終了時の入居者契約の扱い
- サブリース会社の信用・事業継続性
まで確認する必要があります。
特に注意したいのは、「物件を売ればサブリース契約も自由に終了できる」とは限らないことです。
この記事では、新潟市でサブリース中のアパートを売却するときに、売主・買主が確認したい契約内容と査定価格への影響を整理します。
最初に整理|マスターリース契約とサブリース契約は別
一般には、アパートを管理会社等へ一括して貸し、一定の借上げ賃料を受け取る仕組み全体を「サブリース」と呼ぶことがあります。
国土交通省では、契約関係を次のように整理しています。
| 契約 | 当事者 | 内容 |
|---|---|---|
| 特定賃貸借契約 (マスターリース契約) |
建物所有者とサブリース会社 | 所有者が建物をサブリース会社へ貸す契約 |
| 転貸借契約 (サブリース契約) |
サブリース会社と入居者 | サブリース会社が借りた住宅を入居者へ転貸する契約 |
実務上は「サブリース契約」という言葉がマスターリース契約を指す意味でも使われています。
この記事でも分かりやすさを優先して一括借上げ全体を「サブリース」と表現しますが、売却時に特に確認するのはオーナーとサブリース会社とのマスターリース契約です。
サブリース中でもアパートは売却できる
サブリース契約があること自体が、不動産を売却できない理由になるわけではありません。
ただし、所有者が変わることと、マスターリース契約が終了することは別の問題です。
国土交通省のFAQでも、契約期間中にオーナーチェンジ等によって賃貸人が変更され、従前と同一内容で特定賃貸借契約が承継される場合を想定した取扱いが示されています。
一方、これは「すべての売買で無条件に同じ契約が承継される」と断定するものではありません。
実際の売却では、契約書・変更契約・法的関係を確認したうえで、
- 所有者変更後の契約関係
- 買主が引き継ぐ権利・義務
- サブリース会社への通知・手続
- 所有者変更について承諾等が必要か
を整理します。
「売却するからサブリースを解約する」のではなく、「現在の契約関係をどうした状態で買主へ引き渡すのか」を先に確認することが重要です。
オーナー側から自由に解約できるとは限らない
サブリース中のアパートを売却するときは、マスターリース契約の解約条項を必ず確認します。
国土交通省は、普通借家型のマスターリース契約では、借地借家法との関係から、オーナー側からの更新拒絶・解約申入れには正当事由が必要となる場合があることを注意事項として示しています。
一方で、契約書にはサブリース会社側からの中途解約条項が定められていることがあります。
つまり、契約によっては、
オーナー側からの終了には制約がある一方、サブリース会社側には一定の解約条項がある
こともあります。
また、普通建物賃貸借か定期建物賃貸借かによっても扱いが異なります。
売却前には、契約書の、
- 契約期間
- 更新
- 中途解約
- 解除
- 違約金
を確認します。
契約終了の可否について法的判断が必要な場合は、弁護士等へ確認することをおすすめします。
「30年家賃保証」でも賃料が30年間固定とは限らない
サブリースでは、「○年間一括借上げ」「家賃保証」などの表現が使われることがあります。
しかし、契約期間中ずっと同じ賃料が固定されているとは限りません。
国土交通省・消費者庁も、サブリース契約について、
- 借上げ賃料が減額される可能性
- 定期的な賃料見直し
- 募集時等の免責期間
- 契約期間中の解約
- 修繕等のオーナー負担
に注意を促しています。
普通借家型では、借地借家法第32条に基づく賃料増減額請求が問題となる場合があります。
なお、賃料減額請求を受けたからといって、サブリース会社から提示された金額をオーナーが必ずそのまま受け入れなければならないという意味ではありません。
査定では「借上げ賃料」と「実際の入居者賃料」を分ける
サブリース物件を査定するとき、弊社なら少なくとも2種類の賃料を分けて確認します。
| 賃料 | 確認する理由 |
|---|---|
| オーナーが受け取る借上げ賃料 | 現在オーナーに実際に入ってくる契約上の収入 |
| 入居者が支払う実際の賃料 | 物件本来の賃貸収益力や借上げ条件を判断する材料 |
例えば、入居者から年間700万円の賃料が入っていても、オーナーへの借上げ賃料が年間560万円なら、オーナーの現在収入は560万円です。
現在のマスターリース契約を引き継ぐ買主は、まず560万円を基準に収益性を判断します。
一方、700万円という実入居賃料も重要です。
買主は、
- 借上げ賃料と実賃料の差
- 現在の稼働率
- 実際の賃料が周辺相場と比べて妥当か
- 借上げ賃料が将来見直された場合の余力
などを確認します。
「オーナーが現在受け取っている収入」と「物件そのものが生み出している収入」を分けて提示する方が、買主は判断しやすくなります。
表面利回りは、どの賃料を使った数字かを明示する
例えば、売却価格8,000万円のアパートで、
| 借上げ賃料 | 年間560万円 |
|---|---|
| 入居者からの実賃料 | 年間700万円 |
だったとします。
借上げ賃料を使えば、
560万円 ÷ 8,000万円 = 7.0%
です。
実賃料を使えば、
700万円 ÷ 8,000万円 = 8.75%
です。
数字だけを見ると大きく違います。
しかし、現在のマスターリース契約を引き継ぐ前提なのに、実賃料だけを使って「表面利回り8.75%」と説明すれば、買主の実際の受取収入と一致しません。
反対に借上げ賃料だけを提示し、実際の入居状況を一切見せなければ、物件本来の収益力を判断しにくくなります。
「何を分子にした利回りなのか」を明記することが重要です。
「サブリースだから査定価格が下がる」とは限らない
サブリース契約があると査定価格が必ず低くなる、とは言えません。
買主によっては、一定の借上げ賃料を受け取れることで、
- 空室による収入変動を抑えやすい
- 入居者対応の負担を減らせる
- 収入計画を立てやすい
と評価する場合があります。
一方で、
- 借上げ賃料が市場賃料より低い
- 賃料改定の可能性がある
- オーナー側の解約自由度が低い
- 修繕費負担が大きい
- 運用を変更しにくい
ことを制約と見る買主もいます。
つまり、サブリースという仕組みそのものではなく、その契約条件を引き継いだ買主の投資採算がどうなるかが査定価格に影響します。
もう一つ見るべきなのは「サブリース会社そのもの」
サブリース物件では、物件だけでなく契約相手となるサブリース会社も確認します。
借上げ賃料を支払うのはサブリース会社だからです。
例えば、
- 長期間安定して事業を行っているか
- 過去の借上げ賃料の支払い状況
- 賃料改定の履歴
- 契約管理や報告が適切に行われているか
などは、買主にとって判断材料になります。
賃貸住宅管理業法では、特定転貸事業者について、業務・財産の状況を記載した書類を営業所等に備え置く制度も設けられています。
制度上確認できる資料や、売主が保有している送金・報告履歴などを利用して、「契約上いくらもらえるか」だけではなく、その契約の継続性を判断することも重要です。
買主がサブリース契約を引き継ぎたいケース
例えば、
- 借上げ賃料が投資採算上十分
- 契約条件が明確
- 管理負担を減らしたい
- 遠方から物件を購入する
- 賃貸経営の手間を少なくしたい
買主であれば、現在の契約を引き継ぐことを評価する場合があります。
この場合は、
- 現在の借上げ賃料
- 過去の賃料改定履歴
- 契約期間
- 更新条件
- 修繕負担
- 所有者変更時に必要な手続
を整理しておくと検討しやすくなります。
買主がサブリースを引き継ぎたくないケース
買主が、
- 自社で管理したい
- 別の管理会社へ変更したい
- 実際の入居者賃料を直接受け取りたい
- 賃料設定や募集条件を変更したい
と考える場合もあります。
この場合に確認するのが、現在のマスターリース契約を終了できるかです。
買主が引き継ぎたくないから、売主が売却前に自由に契約を終了できるとは限りません。
契約種類、解約条項、借地借家法との関係などを確認する必要があります。
そのため、解除後の収益を前提とした価格を提示するのであれば、先に契約終了の可能性を確認しておく方が安全です。
マスターリース契約が終了したら入居者との契約はどうなる?
もう一つ確認しておきたいのが、マスターリース契約そのものが終了した場合です。
サブリース会社は、オーナーから建物を借りたうえで入居者へ転貸しています。
そのため、マスターリース終了時には、現在の入居者との転貸借契約をどう扱うのかを確認する必要があります。
国土交通省のサブリース住宅標準契約書では、一定の場合に、マスターリース契約終了後、オーナーがサブリース会社の転貸人としての地位を承継する仕組みを設けています。
ただし、実際の契約に同じ条項が入っているとは限りません。
売却前には、
- マスターリース終了時の権利義務承継
- 入居者との賃貸借契約の扱い
- 敷金等の承継
- 賃貸借契約書等の引渡し
も確認します。
サブリース会社との契約だけを見て終わらず、その先にいる入居者との契約関係まで確認することが重要です。
売却前に確認したい契約条項
- 契約期間
- 普通借家か定期借家か
- 更新条件
- 中途解約・解除条件
- 違約金
- 借上げ賃料と賃料改定条件
- 免責期間
- 修繕・原状回復費用の負担
- 所有者変更時の手続
- 契約終了時の権利義務・入居者契約の承継
長期間契約を続けている場合、当初契約書だけで現在の条件が分からないことがあります。
原契約だけでなく、変更契約書・覚書・賃料改定通知等まで確認することが重要です。
修繕費を誰が負担するかも査定に影響する
サブリースだから、管理も修繕もすべてサブリース会社が負担するとは限りません。
契約内容によっては、
- 建物本体の修繕
- 外壁・屋根
- 設備交換
- 原状回復
- 大規模修繕
の全部または一部をオーナーが負担します。
買主は年間の借上げ賃料だけでなく、その収入を維持するために将来どの程度の支出が必要になる可能性があるかを確認します。
修繕履歴については、新潟市で修繕履歴がないアパートは売れる?売却前に整理したい資料と買主への説明も参考にしてください。
売却前に揃えたい資料
- マスターリース契約書
- 変更契約書・覚書
- 賃料改定通知
- 現在の借上げ賃料が分かる資料
- 過去の借上げ賃料推移
- 入居者のレントロール
- 可能な範囲で実際の入居者賃料が分かる資料
- 入退去・空室状況
- 修繕履歴
- 原状回復費等の負担状況
- 管理・送金明細
- 所有者変更・契約終了時の取扱いが分かる資料
特に重要なのが、現在の契約条件と現在実際に受け取っている金額が一致しているかです。
レントロールはサブリース物件でも重要
サブリース会社から毎月一定額が入っているからといって、入居者の状況が売却に関係ないわけではありません。
買主は、現在の契約が将来変更・終了した場合も含め、物件そのものの賃貸競争力を見ます。
そのため、確認できる範囲で、
- 各戸の賃料
- 共益費
- 駐車場賃料
- 入居開始時期
- 空室
- 滞納
- 募集条件
などを整理します。
新潟市でアパート売却のレントロールが重要な理由でも詳しく整理しています。
査定は「現在の契約を引き継ぐ前提」から考える
サブリース中のアパートを査定するとき、弊社ならまず、現在確認できる契約関係を前提として査定します。
買主が物件を取得した直後に、実際どの収入を受け取り、どの負担・制約を引き継ぐのかを見るためです。
そのうえで、契約上・法的に別の運用へ変更できる可能性が確認できる場合には、
- 通常管理へ変更した場合
- 自主管理した場合
- 賃料改善した場合
などを参考シナリオとして検討します。
まだ解除できるか確認できていない契約を「解除可能」と仮定し、その収益を前提に査定価格を高くすることは避けるべきです。
新潟市でアパート売却の査定価格はどう決まる?利回り・積算・融資・出口の見方も参考にしてください。
高く売るために重要なのは「契約の見える化」
サブリース物件だからといって、売却前に契約を解除することが高値売却につながるとは限りません。
売却前に重要なのは、
- 現在いくら受け取っているか
- 実際の賃貸収入はいくらか
- いつ賃料が見直されるか
- 過去にどの程度改定されたか
- 修繕費を誰が負担するか
- 契約はいつまで続くか
- 所有者変更後に何を引き継ぐのか
- 契約終了時に入居者との関係がどうなるのか
を整理することです。
買主にとって問題なのは「サブリース」という言葉そのものではなく、契約を引き継いだ後に何が起こるのか分からないことです。
サブリース契約を売却前に解除した方がよい?
これは物件ごとに判断が分かれます。
| そのまま売る | 解除を検討する |
|---|---|
| 安定収入を評価する買主へ提案できる | 直接管理による収益改善余地を示せる場合がある |
| 契約終了に伴う法的・実務的な調整を避けられる | 買主の管理自由度が高まる場合がある |
| 借上げ賃料が低ければ収益性が低く見える場合がある | そもそも売主側から終了できない場合がある |
「解除した方が高く売れそう」という理由だけで先に解約通知を行わないことが重要です。
終了の可否、時期、違約金等、入居者との契約関係への影響まで確認してから判断します。
まとめ|サブリース中でも売れる。価格を左右するのは契約の中身
サブリース中のアパートでも売却することは可能です。
ただし、通常管理のアパートより確認する契約関係は複雑です。
特に整理したいのは、
- マスターリース契約の内容
- 所有者変更時の契約関係
- 更新・解約条件
- 借上げ賃料
- 実入居者賃料
- 賃料改定
- 修繕負担
- サブリース会社の信用
- 契約終了時の入居者契約・権利義務の扱い
です。
「サブリースだから売りにくい」と決めつける必要はありません。
安定した借上げ収入を評価する買主もいます。
一方、借上げ賃料が低い、賃料改定リスクがある、解約自由度が低い、修繕負担が重いといった条件は、買主の価格判断へ影響します。
サブリースかどうかではなく、その契約を買主が引き継いだとき、いくらの収入を得て、どの負担・制約・リスクを引き受けるのか。
そこまで整理したうえで査定価格と販売方法を考えることが重要だと弊社は考えています。
新潟市でサブリース中のアパート売却を検討している方へ
竹鼻不動産事務所では、新潟市のアパート・収益物件について、表面利回りだけではなく、マスターリース契約、借上げ賃料、実際の入居者賃料、修繕負担、融資、将来の出口まで確認しながら査定・売却方法を整理しています。
「サブリース契約が残っている」「解除できるのか分からない」「借上げ賃料が低いので査定価格への影響を知りたい」「そのまま売るか契約の見直しを検討するか迷っている」といった段階でも問題ありません。
売却ありきではなく、まず現在の契約内容と売却方法を整理したい方は、新潟市のアパート売却についてをご覧ください。
