アパートローンの金利が上がると、「このまま持ち続けて大丈夫なのか」「金利がさらに上がる前に売った方がよいのか」と考えるオーナー様もいると思います。
2026年10月17日時点で、日本銀行は無担保コールレート(オーバーナイト物)を1.25%程度で推移するよう促す金融市場調節方針を採用しています。
ただし、日本銀行の政策金利と、実際のアパートローン・不動産投資融資の金利は同じではありません。
実際の借入条件は、金融機関、借主の属性、物件の収益性、築年数、担保評価、自己資金、取引実績などによって異なります。
また、金利上昇で影響を受けるのは、現在物件を所有しているオーナーだけではありません。
これからそのアパートを購入する買主の融資条件も変わります。
そのため、金利上昇時の売却判断では、
- 自分の返済負担がどの程度増えるか
- 返済後のキャッシュフローがどの程度残るか
- 買主が現在の価格で融資を利用して購入できるか
- 市場で使われる還元利回りがどう変わるか
- 現在と数年後の売却価格・残債・修繕・流動性をどう比較するか
まで考える必要があります。
この記事では、新潟市で一棟アパート・収益物件を所有している方に向けて、金利上昇時に「今売る」「持ち続ける」を判断するための考え方を整理します。
先に結論|金利が上がっただけでアパートを売る必要はない
金利上昇は、アパートの保有方針を見直すきっかけにはなります。
ただし、
「金利が上がった=すぐ売却」ではありません。
まず、次の5つを確認します。
| 確認項目 | 見ること |
|---|---|
| 現在の借入 | 固定・変動、残高、残存期間、金利改定条件 |
| 物件の収益力 | NOIと年間元利返済額、返済後CF |
| 買主融資 | 現在の価格で購入できる投資家がどの程度いるか |
| 現在の売却手残り | 売却代金から残債・費用・税金等を差し引いていくら残るか |
| 将来の出口 | 築年数・修繕・融資環境が変化した後も売却できるか |
金利は、この5つを動かす要因の一つです。
金利そのものではなく、金利上昇によって物件の収益性・買主融資・流動性・売却価格がどの程度変わるかを見て判断します。
2026年10月時点|日本銀行の政策金利は1.25%程度
2026年9月18日の金融政策決定会合で、日本銀行は金融市場調節方針を変更し、無担保コールレート(オーバーナイト物)を1.25%程度で推移するよう促すことを決定しました。
新たな方針は9月24日から適用され、2026年10月17日時点でも1.25%程度という方針が維持されています。
ただし、政策金利が0.25%上昇したから、自分のアパートローンも0.25%上昇する、という関係ではありません。
収益物件向け融資の条件は、
- 金融機関の融資方針
- 物件の収益性
- 築年数・構造
- 担保評価
- 借主の所得・財務内容
- 自己資金
- 金融機関との取引実績
などによって変わります。
そのため、まず確認するのはニュースの政策金利ではなく、自分の借入契約がどの金利に連動し、いつ・どのように見直されるのかです。
出典:日本銀行「金融市場調節方針の変更について(2026年9月金融政策決定会合)」
金利上昇の影響①|まずNOIと返済後キャッシュフローを見る
金利上昇の影響を考える前に、収益物件のキャッシュフローを整理します。
NOI(純営業収益)は、概念的には、
賃料等の収入 − 運営に必要な経費
です。
借入金の元利返済、減価償却、所得税・法人税などは、通常NOIそのものには含めません。
そこから年間の元利返済額を差し引くと、
NOI − 年間元利返済額 = 返済後キャッシュフロー
という形で、借入返済後にどの程度の余力があるかを確認できます。
金利上昇時にまず見るべきなのは、この返済後キャッシュフローがどこまで減るかです。
具体例|7,000万円の借入で金利が上がると返済額はどう変わる?
例えば、説明のため、
- 借入残高:7,000万円
- 残存期間:25年
- 元利均等返済
と仮定します。
| 金利 | 月々返済額 | 年間返済額 |
|---|---|---|
| 1.5% | 約28.0万円 | 約336万円 |
| 2.0% | 約29.7万円 | 約356万円 |
| 2.5% | 約31.4万円 | 約377万円 |
※元利均等返済として単純計算した参考例です。実際の既存融資の返済額がこのように変化することを示すものではありません。金利改定方法、返済額の変更方法、固定期間等は融資契約によって異なります。
この例では、1.5%から2.5%になると、年間返済額は約41万円増えます。
年間41万円の増加を十分吸収できる物件もあります。
一方、もともと年間の返済後キャッシュフローが50万円程度しかない物件なら、影響はかなり大きくなります。
「金利が何%になったか」より、「金利上昇後に返済後CFがいくら残るか」を見る方が実務的です。
表面利回りが高くても、金利上昇に弱い物件はある
例えば表面利回り10%のアパートでも、
- 借入比率が高い
- 融資期間が短い
- 運営費が大きい
- 修繕費が多い
- 空室率が高い
- 家賃下落が続いている
場合、実際のキャッシュフローは小さくなります。
そのため、表面利回りだけを見て「金利が1%上がっても問題ない」と判断することはできません。
重要なのは、
賃料 → NOI → 元利返済 → 返済後CF
まで見ることです。
そのうえで、個人なら所得税、法人なら法人税、減価償却等を含めた最終的な資金繰りを確認します。
金利上昇の影響②|買主のDSCRが低下する
売却価格への影響を考えるうえで重要なのが、買主側の返済余力です。
その確認方法の一つに、DSCR(Debt Service Coverage Ratio/債務返済余裕率)があります。
考え方を単純化すると、
DSCR = NOI ÷ 年間元利返済額
です。
例えば、年間NOIが480万円の物件について、先ほどの返済額を当てはめます。
| 金利 | 年間元利返済額 | DSCR |
|---|---|---|
| 1.5% | 約336万円 | 約1.43 |
| 2.0% | 約356万円 | 約1.35 |
| 2.5% | 約377万円 | 約1.27 |
金利が上がることで年間元利返済額が増え、同じNOIでもDSCRは低下します。
DSCRが1を超えていれば、この単純計算ではNOIが年間元利返済額を上回っています。
ただし、「DSCRが○以上なら必ず融資が出る」という共通基準があるわけではありません。
金融機関によって、DSCRの計算方法、必要水準、経費率、ストレス金利等の考え方は異なります。
ここで重要なのは、数値そのものではなく、金利上昇によって同じ価格を融資で購入できる投資家が減る可能性があることです。
金利上昇の影響③|買主が同じ価格で買いにくくなる
融資金利が上がると、同じ価格・同じ融資期間でも買主の返済負担は増えます。
その結果、買主は、
- 自己資金を増やす
- 借入額を減らす
- より高い利回りを求める
- 購入希望価格を下げる
- 別の物件を検討する
といった判断をする可能性があります。
これは売主の現在の借入が固定金利であっても同じです。
自分の返済額が変わらなくても、次の買主の融資条件が変われば、売却市場は変わります。
金利が1%上がったら、アパート価格も必ず下がる?
これは一律には言えません。
アパート価格は、
- 賃料
- 入居率
- 運営費
- 修繕状態
- 投資家需要
- 競合物件
- 金融機関の融資姿勢
- 建築費
- 土地価格
- 将来の出口
など複数の要因から決まります。
金利が上昇しても、賃料が上昇してNOIが増える、立地が良く競合が少ない、投資家需要が強いといった理由で価格が維持される物件もあります。
反対に、収益力が低く、買主が長期融資を利用できることによって価格が成立している物件では、融資条件の変化が価格へ強く影響する可能性があります。
「金利が1%上がれば、不動産価格が○%下がる」という単純な関係ではありません。
還元利回りが上がると価格はどう変わる?
収益不動産の価格を考える方法の一つに、直接還元法があります。
仕組みを単純化すると、
価格 = NOI ÷ 還元利回り
です。
年間NOIが480万円の物件なら、
| 還元利回り | 単純計算した価格 |
|---|---|
| 8% | 6,000万円 |
| 9% | 約5,333万円 |
| 10% | 4,800万円 |
※直接還元法の仕組みを説明するための単純計算であり、実際の査定価格を示すものではありません。
NOIが同じでも、市場で採用される還元利回りが8%から9%へ上昇すれば、この単純計算では価格は6,000万円から約5,333万円になります。
ただし、融資金利が1%上昇したら、還元利回りも1%上昇するわけではありません。
還元利回りは、
- 金利環境
- 立地
- 築年数
- 修繕リスク
- 賃料変動リスク
- 物件の流動性
- 投資家需要
などを含め、市場で形成されます。
地方の収益物件では「価格」より買える人が減ることが問題になる
新潟市のような地方都市の収益物件で、弊社が特に重要だと考えているのが流動性です。
例えば、これまで多くの投資家が融資を利用して購入できた物件でも、
- 金利上昇
- 融資期間の短縮
- 自己資金要求の増加
- 金融機関の審査厳格化
などが重なると、購入できる投資家が減る可能性があります。
この場合、単純に100万円、200万円値下げすれば解決するとは限りません。
地方の収益物件では、「いくらで売れるか」と同じくらい「その価格で買える人が何人いるか」を見る必要があります。
固定金利なら金利上昇は関係ない?
現在の借入が固定金利なら、市場金利が上昇しても、固定期間中のオーナー側の返済条件は直ちには変わらない場合があります。
その意味では、保有中のキャッシュフローを予測しやすくなります。
ただし、売却を考える場合は別です。
次の買主は、その時点の融資環境で新たに資金調達します。
そのため、買主の金利・融資期間等が悪化していれば、売主が低い固定金利で借りられている物件でも、売却価格や買主層へ影響する可能性があります。
自分の借入条件と、次の買主の借入条件を分けて考えることが重要です。
「残債が減るまで持つ」も金利上昇時は慎重に考える
「あと5年持てばローン残高が減るから、そのとき売ろう」と考えることがあります。
残債が減ること自体はプラスです。
ただし、その5年間に、
- 建物が5年古くなる
- 大規模修繕が発生する
- 空室率が上昇する
- 家賃が下落する
- 買主が利用できる融資期間が短くなる
- 金利・融資方針が変わる
- 市場の還元利回りが変わる
可能性があります。
例えば、5年間で残債が500万円減ったとしても、将来の売却価格が700万円下がり、その間に300万円の大規模修繕が必要になれば、「残債が減ったから得」とは言えません。
残債だけでなく、売却価格・保有中CF・修繕・流動性を同じ時間軸で比較する必要があります。
金利上昇時に「今売る」合理性が高まりやすいケース
- 変動金利で実際に返済負担が増えている
- もともとの返済後CFが小さい
- 金利がさらに上がると資金繰りが厳しくなる
- 今後大規模修繕が予定されている
- 空室増加・家賃下落が始まっている
- 現在なら比較的買主の融資が付きやすい
- さらに築年数が進むと買主融資の選択肢が減りそう
- 現在売却すれば十分な税引後手残りを確保できる
- 売却資金を別の投資・本業・借入返済へ振り向けたい
一つ当てはまっただけで売却する必要はありません。
複数の指標が同じ方向へ悪化しているかを見ることが重要です。
金利が上がっても持ち続ける合理性があるケース
- 金利上昇後も十分な返済後CFが残る
- 固定金利等で当面の返済条件が安定している
- 家賃・入居率が安定している
- 修繕計画と資金準備ができている
- 賃料改善・空室改善の余地がある
- 現在売却すると残債・税金の影響で手残りが小さい
- 数年後も買主融資や土地利用を含む出口を説明できる
- 売却資金を振り向けたい投資先が特にない
金利が上がったかどうかではなく、金利上昇後もその資産を保有する合理性があるかを確認します。
「金利が上がったから売る」ではなく、オーナー側のストレステストをする
金利上昇が気になる場合は、まず現在の借入条件を基準に、例えば、
- +0.5%
- +1.0%
- +1.5%
と金利が変化したケースを仮定します。
それぞれについて、
- 年間元利返済額
- 返済後CF
- 大規模修繕後の資金余力
- 空室が増えた場合の資金繰り
を確認します。
金利がさらに1%上昇しても十分な資金が残る物件なら、金利だけを理由に売却する必要性は低くなります。
反対に、+0.5%程度でも資金余力がほとんどなくなるのであれば、現在の保有方針を見直す意味があります。
売却するなら「買主側のストレステスト」もする
売却を考える場合は、自分の借入だけではなく買主側も見ます。
例えば、
- 売出価格
- 想定融資額
- 融資期間
- 金利
- 自己資金
- NOI
- DSCR
- 返済後CF
を仮定します。
売主から見れば「この価格でも表面利回り8%ある」と思っても、買主が融資を利用すると返済後CFがほとんど残らない場合があります。
その価格で購入できる投資家が少ないのであれば、広告方法だけを変えても成約しにくい可能性があります。
売却価格は売主の希望だけではなく、その価格で実際に資金調達できる買主がいるかまで確認することが重要です。
新潟の収益物件では金利上昇と「出口」をセットで見る
地方の収益物件では、「積算価格が高い」「土地値がある」ことが融資・担保評価の一つの材料になる場合があります。
ただし、高積算だから金利上昇の影響を受けないわけではありません。
買主が融資を利用して購入する以上、
- 現在の収益性
- 返済比率
- 融資期間
- 自己資金
- 将来の再売却
まで成立する必要があります。
さらに築年数が進んで建物としての出口が弱くなる場合には、土地として、
- 誰が買うのか
- 道路・間口はどうか
- 駐車場を確保できるか
- 住宅・事業・収益のどの用途で再利用できるか
- 解体費を負担しても土地価値が残るか
まで確認します。
融資が付くことと、将来その価格で買主が見つかることは別問題です。
金利上昇時に確認したい8つの数字
- 現在の借入残高
- 現在の借入金利・金利改定条件
- 年間NOI
- 年間元利返済額・返済後CF
- 今後3〜5年の修繕予定
- 現在の成約見込価格
- 現在売却した場合の税引後手残り
- 想定買主の融資条件・DSCR
この8つを並べると、金利上昇を「不安」ではなく数字として判断しやすくなります。
売却タイミングそのものを確認したい場合
この記事では金利上昇を中心に整理しました。
築年数、修繕、減価償却、残債などを含めて「いつ売るべきか」を総合的に判断したい場合は、新潟市でアパートを売却するタイミングはいつ?築年数・修繕・金利・減価償却・融資で判断をご覧ください。
査定価格と買主融資・出口の関係については、新潟市でアパート売却の査定価格はどう決まる?利回り・積算・融資・出口の見方で整理しています。
投資家が売却物件を見るポイントは、新潟市で収益物件を高く売るには?投資家が見るポイントと売却前に整理すべきことも参考にしてください。
管理・空室・修繕などを含め、そもそも手放すべきか迷っている方は、新潟市でアパートを手放したいときは?管理・空室・修繕の負担から売却を判断するをご覧ください。
まとめ|金利上昇時こそ「売る・持つ」を数字で比較する
金利が上がったからといって、アパートをすぐ売却する必要はありません。
確認したいのは、
- 自分の返済額がどの程度増えるか
- 金利上昇後も十分な返済後CFが残るか
- 買主の融資条件がどう変わるか
- その価格で買える投資家がどの程度いるか
- 市場の還元利回りがどう変化するか
- 今後の修繕・築年数・出口をどう見るか
- 現在売却した場合にいくら残るか
です。
特に新潟市のような地方都市の収益物件では、金利上昇による自分の返済額だけでなく、その価格で融資を利用して購入できる投資家がどれだけ残るかを見ることが重要です。
一方、金利上昇後も高い収益性を維持でき、返済後CFに余力があり、修繕計画も整い、将来の出口まで説明できるのであれば、保有を続ける合理性があります。
「金利が上がったから売る」のではなく、金利が上がった状態でもこの物件を持ち続ける合理性があるのかを数字で確認する。
そのうえで、現在売却する場合と保有を続ける場合を比較することが重要だと弊社は考えています。
新潟市で金利上昇をきっかけにアパート売却を検討している方へ
竹鼻不動産事務所では、新潟市のアパート・収益物件について、査定価格や表面利回りだけではなく、借入金利、NOI、返済額、返済後CF、家賃、空室、修繕、残債、買主融資、将来の出口まで整理しながら保有・売却を比較しています。
「金利が上がって手残りが減ってきた」「今後さらに金利が上がった場合の影響を知りたい」「今ならいくらで売れるのか確認したい」「売る場合と持ち続ける場合を数字で比較したい」といった段階でも問題ありません。
売却ありきではなく、現在の物件を持ち続ける合理性から整理したい方は、新潟市のアパート・収益物件売却についてをご覧ください。