【アパートを売るか迷ったときに読む話】「損しないために最初にやること」と売却の全体像

アパートを売るか迷ったときに読む話|「損しないために最初にやること」と売却の全体像

アパートを売るかどうか悩み始めたオーナー様から、よくこんな相談を受けます。

「このまま持ち続けて大丈夫なのか不安」
「でも、安く叩かれるくらいなら売りたくない」
「そもそも何から手を付ければいいか分からない」

気持ちはよく分かります。 竹鼻も毎日のようにアパートや一棟マンションの売却相談を受けていますが、 正直、「売ったほうがいいケース」と「まだ持っていていいケース」は分かれます。

この記事では、現場でオーナー様と向き合ってきた立場から、

  • 損しないために最初に整理しておきたい考え方
  • アパート売却の全体の流れ(ステップ)
  • 見落としがちな費用・税金のポイント
  • トラブルを避けるために押さえておきたい注意点

を、机上の空論ではなく、ざっくり・正直にまとめます。

目次

1. いきなり「いくらで売れるか」より先に考えてほしいこと

1-1. 「売る/持つ」を分ける3つの軸

査定の話に入る前に、竹鼻が必ず聞くのはこの3つです。

  • 資金面:いつまでに、いくら現金が必要か
  • 物件面:築年数・修繕状況・空室の傾向
  • メンタル面:今後も賃貸経営を続けたいかどうか

冷たく聞こえるかもしれませんが、 「なんとなく不安だから売る」は、一番損をしやすいパターンです。

逆にこの3つを言葉にすると、 「今すぐ売ったほうがいいケース」と「もう少し持ってから考えればいいケース」が見えてきます。

1-2. 売却のメリット・デメリットを、現実ベースで並べる

一般論ではなく、現場での体感で書くとだいたいこんな感じです。

メリット デメリット
まとまった現金が手に入る(事業資金・借入返済・相続対策など次の一手を打ちやすい) 売却コストと税金が発生する(仲介手数料・印紙税・譲渡所得税など、意外と大きい)
管理のストレスから解放される(クレーム対応・修繕・空室の心配が減る) 賃料アップや改善の伸びしろは手放すことになる(エリア次第で「まだ伸ばせる」物件もある)
老朽化リスクを手放せる(近い将来の大規模修繕や設備交換の負担回避) 将来のインフレ・家賃上昇の恩恵は受けられない(長期で見れば「持っていれば…」は起こり得る)
相続の整理がしやすい(分けにくい不動産を分けやすい現金に変えられる) 入居者様への配慮と調整が必要(オーナーチェンジでも不安にさせない対応は必須)

大事なのは、数字だけじゃなく、「自分がどうしたいか」も同時に整理することです。

「手残りの現金」と「今後10年その物件と付き合う覚悟」。 両方を天秤にかけて決めるイメージが近いです。

2. アパート売却の流れを、ざっくり掴む

2-1. ステップ0:とりあえず相談してみる

いきなり一括査定に飛び込む前に、 まずは顔が見える不動産会社に1〜2社、話を聞いてみるのをおすすめします。

理由はシンプルで、実際に「売らなくていいオーナー様」も一定数いるからです。

ここでは、

  • 今の家賃収入と支出のバランス
  • エリアの需給(本当に売りづらい場所なのか)
  • 修繕の状況と、今後かかりそうなお金

あたりを一緒に棚卸しします。 査定額そのものより、「この物件、どう戦えるか」を整理する時間です。

2-2. ステップ1:査定(簡易 → 訪問)

査定はだいたい2段階です。

  • 簡易(机上)査定:相場感を掴むため
  • 訪問査定:本気で売るか決める段階で必須

ここで見てほしいのは、数字の高さより説明の質です。

  • その価格の根拠(成約事例・利回り・再調達コストなど)
  • オーナーチェンジで売るのか、空室化して売るのか
  • 想定している買主像(個人投資家/法人、地元/県外)

ここまで話ができる担当者なら、任せる土台はあります。

2-3. ステップ2:不動産会社を選び、媒介契約を結ぶ

査定を取ったら、次は「誰と組むか」です。 竹鼻が見るポイントはこの3つ。

  • 収益物件の扱いに慣れているか(居住用メインの会社とは考え方が違う)
  • 投資家へのルートがあるか(地元+県外、両方あると強い)
  • 腹を割って話せるか(良い話だけじゃなく、厳しい話もしてくれる)

媒介契約(専属専任/専任/一般)には、正直、不動産会社側の事情もあります。 ただ現場感としては、「収益物件に強い1社と専任でしっかり組む」ケースが結果は出やすい印象です。

2-4. ステップ3:売却活動と内見(投資家の目線)

媒介契約を結ぶと、売却活動が始まります。

  • ポータルサイト掲載
  • 投資家へのダイレクト打診
  • 既存顧客・金融機関ルートでの紹介

売主様側で準備しておくと強いのは、このあたり。

  • レントロール(賃料表)の整備
  • 年間収支(ざっくりでOK)のまとめ
  • 修繕履歴・見積書類の整理
  • 共用部の清掃・簡易な補修

内見については、投資家は細かいところを見ます。 特にエントランス/駐車場/ゴミ置き場。この3つだけでも印象が変わります。

2-5. ステップ4:条件交渉 → 売買契約

買付(購入申込)が入ったら、条件調整です。

  • 価格
  • 引渡し時期
  • 残していくもの/撤去するもの
  • 契約不適合責任の範囲と期間

契約前には、重要事項説明書の内容が現状とズレていないかも確認します。 「知っていたのに伝えていなかった」だけは避けたいです。

2-6. ステップ5:残金決済と引渡し

条件が整ったら、決済・引渡しです。やることは、

  • 残代金の受け取り
  • 固定資産税・都市計画税の日割り精算
  • 仲介手数料・司法書士報酬などの支払い
  • 所有権移転登記の申請
  • 鍵の引渡し

ここまで終わると、実務としては一区切り。 ただ、売却後に来るのが税金(確定申告)なので、そこだけは忘れないでください。

3. アパート売却で必ずかかる主な費用と税金

3-1. 「思ったより残らない」を防ぐ、費用の棚卸し

売却でよく出てくる費用はこんな感じです。

費用項目 内容 目安 一言メモ
仲介手数料 不動産会社への成功報酬 売買価格の3%+6万円+消費税 金額が大きいので、必ず事前に手残り計算
印紙税 売買契約書の印紙 契約額に応じて数千〜数万円 軽減措置の対象か要確認
抵当権抹消費用 ローン完済時の登記関連 数万円程度 ローン残がある場合はほぼ必須
測量費用 境界確定が必要な場合 30〜80万円前後 土地条件次第。不要なケースもある
解体費用 更地にして売る場合 数十〜数百万円 解体が得な場合も損な場合もある
清掃・軽修繕 印象改善の最低限 数万〜数十万円 費用対効果を見て決める

まずやるべきはこれです。

売却価格 −(ローン残債+諸費用)= 手残り

ここを出さずに「なんとなく売る」は、竹鼻はおすすめしません。

3-2. 譲渡所得税は「タイミング」で差が出る

買ったときより高く売れた場合、差額に譲渡所得税がかかります。

売却価格 −(取得費+譲渡費用)= 譲渡所得

ここで効くのが所有期間です。

  • 所有期間5年以下:税率が高い(短期)
  • 所有期間5年超:税率が低い(長期)

「あと少し待てば長期だった」は、後から気づくとしんどいです。 売る前に一度、日付だけでも確認しておくのが安全です。

3-3. 確定申告は原則必要

アパートを売却した翌年は、基本的に確定申告が必要です。 利益が出ている・いないに関係なく、整理はしておいた方がいい。

決済が終わったら、書類は一式まとめてファイル化しておく。 これだけで翌年がかなり楽になります。

4. トラブルを避けるために、押さえておきたいポイント

4-1. 契約不適合責任(旧・瑕疵担保)の基本

ざっくり言うと、契約内容と違う点が見つかった場合に、売主様が一定の責任を負う可能性がある、という話です。

アパートだと例えば、

  • 雨漏り
  • シロアリ・腐食
  • 給排水の不具合
  • 過去の浸水履歴

このあたりが典型です。

4-2. 「知っていることは全部出す」が最善

トラブル回避で一番効くのは、結局これです。

知っている不具合・過去の経緯は、全部出す。

「書いたら売れなくなるのでは?」と不安になるお気持ちは分かります。 ただ実務では、むしろ逆で、情報が整理されている物件の方が安心して検討されます

4-3. 免責特約は「万能」ではない

築年数が古い場合など、一定の免責を入れることはあります。 ただ、何でも免責は通りません。 そして、知っているのに告げないが許されるわけでもありません。

このあたりは、不動産会社と一緒に、落としどころを作っていく部分です。

5. まとめ|「不安だから売る」で損をしないために

アパート売却は金額も大きいし、決めることも多い。 だからこそ、

  • お金の事情と期限を言葉にする
  • 物件の数字と状態を棚卸しする
  • 信頼できる不動産会社・税理士の現場目線を聞く

この3つを踏まえたうえで、判断してほしいと思っています。

「売る/売らない、どっちが正解か」じゃなく、 「自分にとって納得できる選択はどっちか」です。

まだ売ると決めていなくても大丈夫です。 モヤモヤしていることを一度テーブルに出して、数字に落とす。 それだけで判断はだいぶ楽になります。

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この記事を書いた人

弊社は「最善の不動産取引を」をスローガンに掲げ、不動産の売却支援を専門に手がけています。売却にはさまざまな事情がありますが、お客様ひとりひとりの背景に寄り添い、最適な解決策をご提案いたします。不動産業界の歴史や伝統を大切にしながらも、AIなどの最新技術も柔軟に取り入れ、時代に合ったサービスの提供に努めてまいります。

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