不動産売却の損益通算とは?|「損したら終わり」と思っている方に知ってほしい話
不動産を売却したあと、 こんなふうに思ったことはありませんか。
「思ったより安く売れてしまった」
「この損って、税金的には何も使えないの?」
現場で売主様とお話ししていると、 不動産売却で損が出た=もう終わり と思い込んでいる方が、実はかなり多いです。
でも実際には、 ケースによっては“税金面で活かせる損”になることもあります。
この記事では、
- 不動産売却における「損益通算」とは何か
- できるケース・できないケースの違い
- 売却前に知っておくべき注意点
このあたりを、 制度の話だけでなく、実務目線で整理していきます。
そもそも「損益通算」って何?
損益通算とは、簡単に言うと
ある所得で出た損失を、別の所得の利益と相殺すること
を指します。
例えば、
- 給与でプラス
- 不動産でマイナス
このマイナスを使って、 全体の課税額を減らせるかどうか、という考え方です。
不動産売却の損は、原則どう扱われる?
ここが一番誤解されやすいポイントです。
結論から言うと、
土地や建物を売って出た損失は、原則として給与などとは損益通算できません。
特に、
- 投資用不動産
- 相続した土地・建物
- 賃貸アパート・一棟マンション
こうした不動産の売却損は、 「他の所得(給与・事業所得など)」とは切り離して扱われます。
この説明だけを見ると、
「じゃあ損しても意味ないじゃん」
となりがちですが、 ここで話を終わらせるのは早いです。
同じ年に「別の不動産」を売っていれば話は変わる
ここは、きちんと知っておいてほしい重要な点です。
「投資用不動産の売却損は損益通算できない」
という説明は、
給与などと相殺できない、という意味
であって、
他の不動産の譲渡益まで使えない、という意味ではありません。
他の土地・建物の譲渡益とは相殺できる
同じ年に、
- ある不動産を売って利益が出た
- 別の不動産を売って損失が出た
この場合、
譲渡所得同士であれば、損益通算が可能
です。
これは、
長期譲渡所得・短期譲渡所得の計算上の基本ルール
で、居住用か投資用かは問いません。
具体例で見ると
例えば、
- Aの土地を売却 → +500万円
- Bのアパートを売却 → ▲300万円
この場合、
課税対象となる譲渡所得は 200万円
になります。
「損益通算できない」と聞いて、 この計算自体を諦めてしまう方もいますが、
それは正確ではありません。
居住用不動産の場合は別の特例がある
自宅(マイホーム)を売却した場合は、 話が少し変わります。
一定の要件を満たせば、
- 3,000万円特別控除
- 譲渡損失の損益通算・繰越控除
といった、 居住用ならではの特例が使える可能性があります。
ただし、
賃貸アパートや投資用不動産は原則対象外
なので、 ここは混同しないよう注意が必要です。
「損益通算できる・できない」を分ける視点
不動産売却の損益通算を考えるときは、
- 何と相殺したいのか
- 同じ年に他の不動産を売っているか
- 居住用か、投資用か
この3点を整理すると、判断しやすくなります。
特に、
「同じ年に、他にも売却予定があるか」
は、売却の順番やタイミングを考える上で重要です。
売却後に慌てないために、事前にやっておきたいこと
損益通算は、
売ったあとに考えると手遅れになることが多い
のが正直なところです。
できれば売却前に、
- 今年・来年に他の不動産売却予定があるか
- どれが利益、どれが損になりそうか
- 売却時期をずらす意味があるか
このあたりを一度整理しておくと、 税金面での選択肢が広がります。
まとめ|「損したら終わり」にしないために
不動産売却で損が出た場合でも、
すべてが無駄になるわけではありません。
- 給与などとは相殺できないケースが多い
- ただし、不動産同士なら損益通算できる場合がある
- 売却の順番・タイミングで結果が変わることもある
損益通算は、 知っているかどうかで差がつく論点です。
「もう売ってしまったから仕方ない」
ではなく、
売る前に一度、全体を俯瞰して考える
これが、結果的に一番ラクな進め方だと感じています。
