【不動産売却で使える特例】特定のマイホームの譲渡損失の損益通算・繰越控除とは?
マイホームを売却した結果、
「買ったときより安く売れてしまった」
というケースは、決して珍しくありません。
このとき、売主様からよく聞かれるのが、
「損したのに、税金面では何も救済がないんですか?」
という疑問です。
結論から言うと、
一定の条件を満たせば、売却で生じた損失を税金計算に使える特例があります。
それが、
「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」
少し名前は堅いですが、やっていることは比較的シンプルです。
この記事では、
- この特例で何ができるのか
- どんな人が対象になるのか
- 住宅ローン残債とどう関係するのか
- 実際に税金がどのくらい変わるのか
を、売主様目線で整理します。
この特例は「何をしてくれる制度」なのか
まず、この特例の役割を一言で言うと、
マイホームを売って出た譲渡損失を、給与所得など他の所得と相殺できる制度
です。
通常、不動産を売って損が出ても、
その損失は、給与や事業所得と相殺できません。
ところが、この特例に該当すると、
- その年の所得税・住民税が軽くなる
- すでに納めていた税金が還付される可能性がある
- 使い切れなかった損失を、翌年以降に繰り越せる
という扱いが認められます。
「売却で損をした人を、税金面でフォローするための制度」
そう理解していただくとズレません。
住宅ローン残債との関係が、この特例の肝
この特例で、一番誤解されやすく、同時に一番重要なのが住宅ローンとの関係です。
この制度は、
売却時点で住宅ローンが残っていること
が前提になっています。
つまり、
- ローンを完済してから売った場合
- そもそもローンを組んでいない場合
は、原則としてこの特例は使えません。
さらに、
売却時点で残っている住宅ローンの残存期間が10年以上あること
も条件になります。
ここは、
「ローン残高がいくらか」ではなく、
「あと何年ローンが残っているか」
が見られる点に注意が必要です。
適用されるための主な条件
この特例は、誰でも使えるわけではありません。
売主様が混乱しないよう、ここでは実務上よく確認される条件を整理します。
- 自分が住んでいたマイホームであること
- 売却時に住宅ローンが残っていること
- 住宅ローンの残存期間が10年以上あること
- 売却によって譲渡損失が生じていること
- 所有期間が5年超であること(売却年の1月1日時点)
- 親族や特別な関係者への売却でないこと
- 売却した年と、その後の年に確定申告を行うこと
すべて満たす必要があります。
逆に言うと、どれか一つでも欠けると適用されません。
譲渡損失は「売却価格−購入価格」ではない
ここもよく勘違いされます。
税務上の譲渡損失は、
単純に「安く売れたかどうか」では決まりません。
計算の考え方は次のとおりです。
譲渡損失 = 売却価格 −(取得費 − 減価償却費 + 譲渡費用)
建物部分は、年数に応じて減価償却されています。
そのため、
感覚的には大きく損をしていても、税務上の損失は思ったより小さい
というケースも珍しくありません。
数字で見るメリット|税金はどれくらい変わる?
あくまでイメージですが、よくあるケースで見てみます。
譲渡損失300万円が出た場合
マイホームを売却し、譲渡損失が300万円出たとします。
この特例が使えると、
給与所得などから300万円を差し引いた状態で税金計算
が行われます。
仮に、
- 実効税率が約20%の方 → 約60万円
- 実効税率が約30%の方 → 約90万円
税負担が軽くなる、または還付される可能性
があります。
「数万円の話」ではなく、
現実的に家計に効く金額になる制度です。
損失を使い切れない場合は、最大3年繰り越せる
その年の所得が少なく、
譲渡損失を使い切れなかった場合でも、
翌年以降、最大3年間にわたって繰り越し控除
できる可能性があります。
一度で消えない、という点もこの特例の特徴です。
使えない典型例
- 住宅ローンを完済してから売却している
- 投資用・賃貸用として使っていた
- 所有期間が5年以下だった
- 確定申告をしていない
このあたりは、
「売ったあとに気づいても、どうにもならない」
ケースが多いです。
まとめ|売却前に必ず確認しておきたい特例
この特例は、
マイホームを売って損が出た場合の、数少ない救済制度
ですが、条件はかなり限定されています。
特に、
- 住宅ローンの残り方
- 売却タイミング
- 所有期間
この3点は、
売却前に一度整理しておかないと使えません。
売却価格だけで判断するのではなく、
「税金まで含めて、手元にいくら残るか」
を確認したうえで進めることが大切です。
