不動産売却で使える税金の特例一覧|売る前に「使えるかも」を先に洗い出す話
不動産を売るとき、売主様が一番気にされるのは「いくらで売れるか」だと思います。
ただ、現場にいる立場から正直に言うと、同じ価格で売れても、手元に残る金額は人によって平気でズレます。
その差を作る代表格が、譲渡所得税の「特例」です。
特例は、知っていれば助かる一方で、知らないまま進めると「あとから取り返せない」ことがあります。
この記事は、細かい計算を覚えるためのものではありません。
目的はひとつだけ。
売主様ご自身が「自分はどの特例に該当しそうか」を売る前に把握できる状態を作ることです。
※本記事は一般的な整理です。個別の可否は状況で変わりますので、最終判断は税理士等の専門家にご確認ください。
そもそも「特例」って何?
不動産を売って利益(譲渡所得)が出た場合、原則として税金がかかります。
ただし、一定の条件を満たすと、税金が軽くなったり、課税が先送りになったりする制度があります。これが特例です。
ここで重要なのは、特例は自動で適用されないという点です。
多くの場合、確定申告で「適用します」と手続きをして初めて効いてきます。
【一覧】不動産売却で使える主な特例まとめ
まずは全体像を一気に見ます。
「これ、うちに当てはまりそうだな」というものがあれば、その特例を深掘りしていくのが一番早いです。
| 特例名 | ざっくり対象 | 効果のイメージ | 注意点(現場で多い落とし穴) |
|---|---|---|---|
| ① 居住用財産の3,000万円特別控除 | 自宅(マイホーム) | 利益から3,000万円を差し引ける | 投資用・賃貸中は原則対象外になりやすい/要件確認必須 |
| ② 所有期間10年超の軽減税率の特例 | 10年超保有の自宅 | 税率が一部軽くなる | 「いつから10年?」の数え方で勘違いが起きやすい |
| ③ 居住用財産の買換え特例(課税の繰延) | 住み替え(一定要件) | 税金が“消える”ではなく“先送り” | 手元資金の計画を誤ると危ない/制度の誤解が多い |
| ④ 居住用財産の譲渡損失の損益通算・繰越控除 | 自宅を売って損が出た(一定要件) | 他の所得と通算・翌年以降へ繰越できる場合がある | 使える条件が厳しめ/住宅ローン等の要件が絡む |
| ⑤ 相続した空き家の3,000万円特別控除 | 相続した空き家(一定要件) | 利益から3,000万円を差し引ける | 期限・要件が細かい/解体する・しないの判断が難しい |
| ⑥ 相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例 | 相続税を支払っている方 | 相続税の一部を取得費に足せる | 相続開始からの期限がある(目安:3年10か月) |
| ⑦ 不動産同士の譲渡損益通算 | 同じ年に複数の不動産を売る | 不動産の利益と不動産の損をぶつけられる | 給与など他の所得とは基本的に通算できない |
① 居住用財産の3,000万円特別控除
一番有名で、一番相談が多い特例です。
ざっくり言うと、自宅を売って利益が出た場合、その利益から最大3,000万円を差し引ける制度です。
ただ、現場で多い勘違いがこれです。
「自宅っぽいから使えるでしょ」と思っていたら、条件を満たしていなかった、というパターン。
- 以前は住んでいたが、長期間空き家のままになっている
- 賃貸に出していた期間がある
- 事業利用(店舗・事務所)割合が大きい
「使えるかどうか」で手残りが変わるので、売却方針を決める前に一度チェックしておくのが安全です。
② 所有期間10年超の軽減税率の特例
「長く住んでいた自宅」を売る場合、税率が軽くなることがあります。
ここで注意したいのは、“10年超”の判定は、単純な体感ではなくルールで決まることです。
数か月の違いで適用の可否が変わるケースもあるので、売却時期に迷いがある売主様は、スケジュールを一度だけ整理しておくと後悔が減ります。
③ 居住用財産の買換え特例(課税の繰延)
住み替えを前提にした売却で、一定の要件を満たすと、税金の支払いを先送りできる制度があります。
ここは言い方が難しいので、現場目線でシンプルに言います。
税金が「ゼロになる」制度ではなく、「あとで払う可能性が残る」制度です。
手元資金の計画を立てるときに、ここを勘違いすると危険です。
「税金がかからない前提」で資金繰りを組むと、あとで詰みます。
④ 居住用財産の譲渡損失の損益通算・繰越控除(自宅を売って損が出たとき)
自宅を売った結果、損が出るケースもあります。
特に、住宅ローンの残債がある状況で売却する場合は、売主様が一番しんどい局面になりやすい。
この特例は、条件を満たすと、譲渡損失を他の所得とぶつけたり、翌年以降に繰り越したりできる場合があります。
ただし、ここは声を大きくしておきたいのですが、「損が出たら誰でも使える」わけではありません。
要件が絡むので、売却前に確認する価値が高い特例です。
⑤ 相続した空き家の3,000万円特別控除
相続で空き家を引き継いだ売主様の相談は、新潟市でも本当に増えています。
この特例は、条件を満たすと、売却益から最大3,000万円を控除できる制度です。
ただし、空き家特例は要件が細かいです。
現場で迷いやすいポイントは、だいたいこの2つに集約されます。
- いつまでに売る必要があるのか(期限)
- 解体して更地にすべきか、建物のまま売るべきか
ここは、税金だけでなく、売りやすさ・手残り・段取りまでセットで判断するのが現実的です。
⑥ 相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例(相続税を払っている方向け)
相続税を支払っている場合、相続税の一部を「取得費」に足して、売却時の税負担を軽くできることがあります。
ポイントは、期限があること。
相続の手続きが一段落した後に「そろそろ売ろうか」と動くと、期限ギリギリになっているケースが珍しくありません。
相続税を支払っている売主様は、この特例に該当する可能性があるので、早めに一度だけ確認しておくと安心です。
⑦ 不動産同士の譲渡損益通算(玄人向けだけど重要)
同じ年に複数の不動産を売る場合、不動産の利益と不動産の損は、計算上ぶつけられることがあります。
ここで誤解されやすいのは、給与など他の所得と自由に通算できるわけではない点です。
「土地で損したから給料の税金が全部戻る」みたいな話ではありません。
ただ、売却の順番やタイミングで結果が変わることもあるので、複数物件を動かす予定の売主様は、計画段階で見ておく価値があります。
特例は「売った後」に調べると遅いことがある
ここは、現場で何度も見てきたので、強めに言います。
特例は、売った後に気づいても手遅れになるケースがあります。
- 売却時期を少しズラせば税率が変わった
- 売り方(更地/古家付き)で適用の可否が変わった
- 書類の準備が間に合わず、申告で詰んだ
だからこそ、売却活動に入る前に、まず「使えるかもしれない特例」を洗い出す。
これが一番ラクで、一番損しにくい進め方です。
まとめ|特例は節税テクニックではなく「売却戦略の一部」
不動産売却で使える特例は、ざっくりでも把握しておくと、判断がブレにくくなります。
- 自宅を売るなら:3,000万円控除/10年超軽減税率/買換え/譲渡損失
- 相続なら:空き家特例/取得費加算
- 複数売却なら:不動産同士の損益通算
もし売主様の状況が、
「自宅なのか」「相続なのか」「投資用なのか」「複数物件なのか」
このあたりで混ざっている場合は、先に整理すると早いです。
竹鼻不動産事務所では、売却の相談時に、税金の話も含めて「何を確認すべきか」を一緒に棚卸しします。
(税務判断そのものは税理士の領域ですが、売却戦略として“どこが地雷になりやすいか”は現場目線で整理できます)
