不動産を売るとき、ほとんどの方が一番気にされるのは「いくらで売れるか」です。
ただ、現場で売却の相談を受けていていつも感じるのは、
「実際にいくら手元に残るのか」 が意外と見落とされがちだということです。
売却価格だけを見て判断してしまうと、引き渡しが終わってから
「思ったより残らないな……」
というズレが生まれます。
この記事では、新潟での売却を前提に、不動産売却でかかる主な経費と税金をできるだけシンプルに整理します。 内容自体は少しややこしいのですが、「お金の流れ」さえ分かれば難しくはありません。
まずは全体像を押さえてから、細かいところを一緒に見ていきましょう。
🧭 この記事で分かること
- 不動産売却のときにほぼ必ずかかる経費の種類と相場感
- 譲渡所得(利益)の考え方と、税金が発生するケース/しないケース
- 所有期間によって変わる短期・長期の税率の違い
- マイホームだけ使える「3,000万円控除」の概要と注意点
- ローンが残っている場合に必ず確認しておくべきポイント
- 最終的に「手元にいくら残るか」を計算するシンプルな流れ
1. 不動産売却のときに、ほぼ必ずかかる経費
まずは、売却の現場でほとんどのケースで登場する「経費」からです。 多くは売買代金の決済時に、売却代金の中からまとめて支払うことが多いです。
① 仲介手数料(成功報酬)
不動産会社に仲介を依頼して売れた場合にかかる費用です。 金額の上限は法律で決まっています。
仲介手数料の上限:
売却価格 × 3% + 6万円 + 消費税
新潟の実務では、ほとんどの会社がこの上限いっぱいでの請求です。 なお、業者による「買取」の場合は仲介手数料は原則かかりませんが、その分売却価格は低めになります。
② 司法書士報酬(抵当権抹消など)
住宅ローンが残っている物件を売却する場合、 ローンを完済すると同時に抵当権を抹消する必要があります。
その手続きを司法書士に依頼するため、次のような費用がかかります。
相場感: おおよそ 1.5万〜2万円前後(物件や事務所によって多少変動)
ローンが一切残っていない場合は、この費用は発生しないこともあります。
③ 印紙税(売買契約書に貼る印紙)
売買契約書には印紙税がかかります。 金額は、契約金額の区分ごとに決まっています。
ざっくりとした例は次の通りです(令和の軽減措置が前提):
- 1,000万円超〜5,000万円以下:1万円
- 5,000万円超〜1億円以下:3万円
ここは完全に「必要経費」ですので、避けることはできません。
④ 測量費(土地や古家付き土地の場合)
土地売却や、古家付き土地の売却で境界があいまいな場合、 売主・買主双方の安心のために測量を行うことがあります。
相場感:おおよそ 30万〜80万円 前後が多いです。
土地の面積・形状・隣地との関係などによって費用はかなり変わります。 「測量しないと売れない」ケースもあれば、 「既存の資料で十分」と判断できるケースもあります。
⑤ 解体費(古家を解体して更地で売る場合)
古家付き土地を「更地渡し」で売る場合は、 引き渡しまでに建物を解体する必要があります。
相場感:一般的な木造住宅で 100万〜200万円前後 が多い印象です。
「そのまま古家付きで買ってくれる買主さん」を見つけられれば解体費はかかりませんが、 その分、売却価格に影響することもあります。
2. 税金の前提になる「譲渡所得」の考え方
次に、売却のときに多くの方が不安に感じる税金の話です。
ポイントはひとつで、
「売却で利益(=譲渡所得)が出たとき」に税金がかかる
という仕組みになっている、ということです。
基本の計算式はこうです。
譲渡所得(もうけ) = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)
- 売却価格:買主さんから受け取る金額
- 取得費:購入時の価格や購入時の諸費用など
- 譲渡費用:仲介手数料・測量費・解体費など、売却のためにかかった費用
この「取得費」が領収書などで分からない場合、 税務上は売却価格の5%を取得費とみなして計算されるルールもあります。
いずれにしても、この計算で利益がマイナスなら税金はかからない、 というのが基本の考え方です。
3. 譲渡所得税の税率は「所有期間」で大きく変わる
譲渡所得に税金がかかる場合、 税率はどれくらい長く持っていたか(所有期間)で変わります。
① 所有期間5年以下(短期譲渡)
購入から売却までの期間が5年以下だと「短期譲渡」に分類されます。
短期譲渡の税率:約 39.63%
(内訳:所得税30.63% + 住民税9%程度)
かなり高いです。 転勤・離婚・相続などやむを得ない事情がある場合を除き、 短期での売却は慎重に検討した方が良いゾーンです。
② 所有期間5年超(長期譲渡)
所有期間が5年を超えると「長期譲渡」になります。
長期譲渡の税率:約 20.315%
(内訳:所得税15.315% + 住民税5%程度)
一般的な自宅や長く保有していた土地の売却は、 こちらの長期譲渡に該当するケースが多いです。
なお、所有期間のカウントは「売った年の1月1日時点で何年経っているか」で見ます。 ここが少しややこしいので、境目のケースは税理士や専門家に確認した方が安心です。
4. マイホームだけに使える「3,000万円控除」
ご自身が住んでいた自宅(マイホーム)を売る場合、 条件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。
これを使うと、ほとんどのマイホーム売却は税金がかからない、 というケースも多いです。
3,000万円控除のイメージ
ざっくりとしたイメージです。
- 譲渡所得(利益)が2,000万円 → 全額控除されて税金ゼロ
- 譲渡所得が3,500万円 → 3,000万円を控除した500万円分だけ課税
かなり強力な制度です。ただし、その分条件も細かいので注意が必要です。
よくある注意点
- 自宅を賃貸に出してから長期間経つと使えなくなるケースがある
- 親族に売る場合は対象外になることが多い
- 過去にこの特例を使っていると一定期間は再利用できない
「売るか」「貸すか」で悩んでいる方は、 この3,000万円控除の有無が判断を分けるポイントになることも多いです。
具体的な適用可否は、税理士や専門家に確認しながら進めた方が安心です。
5. 住宅ローンが残っている場合に必ず見ておきたいポイント
住宅ローンが残っている状態で売却する場合は、
売却価格 ≥ ローン残高 + 諸費用
このバランスになっているかどうかが重要です。
ここが逆転してしまうと、 売却のタイミングで手出し(持ち出し)が発生します。
新潟のように、築年数が経つと価格が下がりやすいエリアでは、 物件によっては残債割れが起こるケースもあります。
そのため、売却を本格的に検討する前に、
- 金融機関からローン残高証明を取り寄せる
- 売却価格の目安と、諸費用の概算を一度整理する
この2つは、最低限やっておいた方がいい準備です。
6. 「最終的にいくら残るか」をざっくり計算する流れ
ここまでの話を踏まえて、手残りのイメージをつかむための簡単な計算の流れをまとめます。
考え方としてはシンプルで、
売却価格 − 経費 − ローン残高 = 手元に残るお金
という形です。
ざっくりフロー
- 売却価格
- − 仲介手数料(売却価格 × 3% + 6万円 + 消費税)
- − 司法書士費用(抵当権抹消など)
- − 印紙税
- −(必要に応じて)測量費・解体費
- − ローン残高
- = 税引き前の手残り
ここからさらに、利益が出ている場合は、
- マイホームなら3,000万円控除の有無
- 所有期間による税率(短期/長期)
を踏まえて、税金を概算していきます。
このあたりは、物件ごとに条件が変わるので、 実際には「個別の数字を出しながら一緒に確認していく」ほうが正確です。
7. まとめ|「いくらで売れるか」より「いくら残るか」を見る
不動産を売るとき、どうしても価格に目が行きがちです。 もちろんそれは大事なポイントですが、最終的に見るべきなのは、
「この売却で、手元にいくら残るのか」
ここだと思っています。
仲介手数料・司法書士費用・印紙税・測量費・解体費、 そしてローン残高や税金まで含めて整理してみると、
売却が本当にベストなのか、 あるいは「もう少し待つ」「別の方法を考える」べきなのかが見えてきます。
新潟で売却を検討されている方で、
- 「ざっくり手残りを知っておきたい」
- 「売るか貸すか、判断材料がほしい」
という方がいれば、一度数字を一緒に整理してみましょう。 その上で、「今はこう動くのが良さそうです」というところまでお話しできればと思います。
