不動産売却で使える特例|相続財産を譲渡した場合の取得費の特例とは?
相続した不動産を売却する場面で、 売主様からよく出るのがこの質問です。
「相続した家を売ったら、思ったより税金が高いって聞いたんですが…」
実際、相続不動産の売却では、 取得費の考え方を間違えると、税金で大きく損をするケースが少なくありません。
そこで知っておいてほしいのが、
「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
です。
この記事では、
- この特例が何を救済する制度なのか
- 使えると何がどう変わるのか
- どんな人が対象になるのか
を、分かりやすく整理します。
この特例は何をする制度か
結論から言います。
この特例は、
相続税として支払った金額の一部を、取得費に上乗せできる制度
です。
通常、不動産を売却したときの税金(譲渡所得税)は、
売却価格 − 取得費 − 譲渡費用
で計算されます。
ここで問題になるのが「取得費」です。
相続不動産の場合、
被相続人(亡くなった方)がいくらで買ったか分からない
というケースが非常に多いです。
取得費が分からないと、 税務上は売却価格の5%を取得費とする扱いになります。
これは、かなり不利です。
そこで、
相続税を払っているなら、その一部を取得費として認めます
というのが、この特例です。
使えると何が変わるのか
一番のポイントはここです。
譲渡所得が小さくなり、結果として税金が減る
という効果があります。
イメージしやすいように、簡単な例で見てみます。
数字で見るイメージ
相続した不動産を、 3,000万円で売却したとします。
取得費が分からず、 5%ルールを使うと、
- 取得費:150万円
となります。
この場合、
3,000万円 − 150万円 = 2,850万円
が譲渡所得のベースになります。
ここに税率(約20%または約39%)がかかるので、 税額はかなり大きくなります。
一方、相続税を500万円支払っていて、 そのうち200万円を取得費に加算できると、
- 取得費:150万円+200万円=350万円
となります。
結果として、
3,000万円 − 350万円 = 2,650万円
譲渡所得が減り、 数十万円単位で税金が変わることも珍しくありません。
この特例を使うための前提条件
この特例は、誰でも自動的に使えるわけではありません。
主なポイントを整理します。
- 相続や遺贈によって財産を取得していること
- その相続で相続税を支払っていること
- 相続開始から3年10か月以内に売却していること
- 売却した人が、相続税を実際に負担していること
- 確定申告でこの特例を適用していること
特に注意したいのが、
「3年10か月以内」という期限
です。
相続税の申告期限(相続開始から10か月)を基準に、 そこから3年以内に売却する必要があります。
「落ち着いてから売ろう」と思っていると、 気づかないうちに期限を過ぎてしまうケースがあります。
よくある誤解
相続税を払っていれば必ず使える?
いいえ。
相続税を払っているだけでは足りません。
売却のタイミングや、 誰がどの財産を相続して売ったか、 という点も関係します。
相続空き家の3,000万円控除と同じ?
違います。
この特例は、
取得費に加算する制度
であって、
譲渡所得から直接3,000万円を引く制度
ではありません。
併用できるかどうかもケースによって異なるため、 自己判断は危険です。
実務でよくある注意点
現場でよく見るのは、
- 相続税は払っているのに、この特例を使っていない
- 期限を過ぎてから売却してしまった
- 取得費が分からないまま確定申告してしまった
というパターンです。
確定申告が終わってからでは、やり直せない
ケースもあります。
まとめ|相続不動産を売る前に、必ず確認したい特例
相続財産を売却するとき、
「いくらで売れるか」
と同じくらい、
「税金がどう計算されるか」
が重要です。
相続税を払っている方であれば、 この取得費加算の特例が使えるかどうかで、
手元に残る金額が大きく変わる
可能性があります。
相続不動産の売却を考え始めたら、
- 相続税をいくら払ったか
- いつ相続が発生したか
- いつ売却しそうか
を一度整理したうえで進めることをお勧めします。
