新潟市で一棟アパートの売却を考えている方から、よく聞かれるのが「まだアパートローンが残っているけれど売却できるのか」というご相談です。
結論から言えば、ローン残債があってもアパートを売却することはできます。
実務上は、決済時に売却代金や自己資金等で借入を返済し、金融機関が設定している抵当権等を抹消できるよう段取りを組みます。
ただし、売却判断で本当に重要なのは、
「売却価格がローン残高を上回っているか」だけではありません。
アパート売却では、
- 現在いくらで売れそうか
- 決済時の一括返済額はいくらか
- 売却時に実際いくら現金が出ていくか
- 税務上の取得費はいくら残っているか
- 税務上の譲渡費用はいくら認められるか
- 税金を払ったあといくら残るか
- 今売る場合と持ち続ける場合でどちらが合理的か
を分けて考える必要があります。
特に収益物件では、ローン残高と税務上の取得費はまったく別の数字です。
「ローンより高く売れたから利益が出た」「購入価格より安く売ったから税金は出ない」とは限りません。
この記事では、新潟市でローンが残っているアパートを売却するときに確認したい残債、抵当権、税金、手残り、保有継続との比較まで整理します。
先に結論|最初に5つの数字を並べる
| 数字 | 何を見るものか |
|---|---|
| 売却見込価格 | 現在の市場でどの程度の価格が見込まれるか |
| 一括返済額 | 決済時に金融機関へ返済する金額 |
| 売却時の資金支出 | 仲介手数料、登記関連費用、印紙税、繰上返済関連費用等 |
| 税務上の取得費 | 譲渡所得を計算する取得費。建物は減価償却の影響を受ける |
| 税務上の譲渡費用 | 仲介手数料など、土地建物の売却に直接要した費用 |
この5つを混同しないことが重要です。
特に、売却時に実際に支払う費用と、税金の計算上「譲渡費用」として差し引ける費用は必ずしも同じではありません。
そのため、資金繰りを計算する表と、譲渡所得税を計算する表は分けて作る方が分かりやすくなります。
ローンが残っていてもアパートは売却できる
アパートローンを利用して購入した物件には、通常、金融機関の抵当権が設定されています。
ローンが残った状態で売却する場合は、決済時に買主から売買代金を受け取り、その資金等で金融機関への返済を行い、抵当権抹消と所有権移転を司法書士等が確認しながら進めるのが一般的です。
重要なのは、買主へ抵当権等の負担が残ったまま所有権を引き渡さないよう、返済・担保抹消・所有権移転を決済時に連動させることです。
実際の必要書類や一括返済の申込期限は金融機関によって異なります。
売買契約後に初めて確認するのではなく、売却方針が固まった段階で金融機関へ確認しておく方が安全です。
確認するのは「現在の残高」ではなく決済日の一括返済額
査定時点のローン残高と、実際の決済日に金融機関へ支払う金額は同じとは限りません。
決済日までに通常返済も進みますし、金融機関によっては、
- 決済日までの利息
- 全額繰上返済に関する手数料
- その他の精算
が発生する場合があります。
そのため、査定段階では返済予定表等で概算し、契約・決済へ進む段階では、金融機関から決済予定日時点の一括返済額を確認する必要があります。
抵当権だけでなく根抵当権・共同担保も確認する
収益物件では、住宅ローンとは違う担保設定になっていることがあります。
例えば、
- 根抵当権が設定されている
- 複数の土地・建物が共同担保になっている
- 別の借入も同じ担保関係に含まれている
- 法人融資の担保として利用されている
ケースです。
この場合、「このアパートのローン残高だけ返済すれば必ず担保を外せる」とは限りません。
売却前に登記事項証明書を確認し、担保関係が複雑な場合は金融機関・司法書士と事前に整理します。
売却価格がローン残高を上回っていても、それが利益ではない
例えば、次のケースを考えます。
| 売却価格 | 6,000万円 |
|---|---|
| 決済時一括返済額 | 4,200万円 |
| 売却時の資金支出 | 220万円 |
税金を考える前の資金残高は、
6,000万円 − 4,200万円 − 220万円 = 1,580万円
です。
ただし、この1,580万円は「譲渡所得」ではありません。
あくまで、ローン返済と売却時の資金支出を行った後に残る税引前のキャッシュです。
税務上の利益は、ローン残高とは無関係に、取得費と譲渡費用を使って別に計算します。
売却価格よりローン残高が多い場合はどうする?
例えば、
| 売却価格 | 4,800万円 |
|---|---|
| 決済時一括返済額 | 5,000万円 |
| 売却時の資金支出 | 180万円 |
であれば、税金を考える前でも約380万円不足します。
通常の売却を進めるには、
- 自己資金で不足額を補う
- 別の資金調達を検討する
- 金融機関と担保解除条件を協議する
などの整理が必要です。
自己資金を出せない場合に、売主の判断だけで抵当権を外すことはできません。
金融機関の同意を得て、売却代金では完済できない状態でも担保解除を受けながら売却するケースはありますが、通常の完済前提の売却とは金融機関との調整内容が異なります。
「残債割れだから絶対に売れない」でも、「売却価格が決まれば必ず売れる」でもありません。
一番重要|ローン残高と税務上の取得費は別物
アパート売却で特に重要なのがここです。
| 数字 | 意味 |
|---|---|
| ローン残高 | 金融機関へ返済する借入金 |
| 税務上の取得費 | 譲渡所得を計算するための取得費 |
| 売却価格 | 買主から受け取る売買代金 |
| 税引後手残り | 売却代金から返済・資金支出・税金等を差し引いた資金 |
個人が土地・建物を売却した場合、譲渡所得は原則として、
譲渡価額 −(取得費+譲渡費用)
で計算します。
建物の取得費は、購入代金等から所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。
そのため、長期間保有して減価償却が進んだアパートでは、購入時より安い価格で売却しても譲渡所得が発生することがあります。
「資金として出ていく費用」と「譲渡費用」を分ける
ここはアパート売却で混同しやすい部分です。
売却時には、仲介手数料、印紙税、登記関連費用、金融機関への繰上返済関連費用など、さまざまな支出が発生する可能性があります。
しかし、税務上の譲渡所得から差し引ける「譲渡費用」は、土地・建物を売るために直接要した費用です。
国税庁が例示している主な譲渡費用には、
- 仲介手数料
- 売買契約書の印紙税
- 売却のための測量費
- 一定の立退料
- 土地を売るための建物取壊し費用
などがあります。
一方、売却に関連して支払ったからといって、すべてが税務上の譲渡費用になるとは限りません。
「手残り計算では差し引く費用」と「税額計算で取得費・譲渡費用として差し引く費用」を分けて整理してください。
具体例|残債より高く売れても手元に残る金額は別
個人所有のアパートについて、分かりやすくするため単純化した例を考えます。
| 売却価格 | 5,800万円 |
|---|---|
| 決済時一括返済額 | 4,500万円 |
| 売却時の資金支出 | 200万円 |
| 税務上の取得費 | 4,200万円 |
| 上記200万円のうち税務上の譲渡費用 | 200万円と仮定 |
まず、税金を考える前のキャッシュは、
5,800万円 − 4,500万円 − 200万円 = 1,100万円
です。
一方、譲渡所得は、この例では、
5,800万円 − 4,200万円 − 200万円 = 1,400万円
となります。
譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超える個人の長期譲渡所得に該当し、特別控除等がないものとして単純計算すると、所得税・復興特別所得税・住民税を合わせた税率は20.315%です。
この仮定では税額は約284万円となり、
1,100万円 − 約284万円 = 約816万円
が概算の税引後手残りになります。
※実際には、取得費、譲渡費用、所有期間、他の譲渡所得、適用できる特例等によって税額は変わります。具体的な税務判断は税理士等へご確認ください。
残債割れでも税務上は利益が出ることがある
次の例を考えます。
| 売却価格 | 4,800万円 |
|---|---|
| 決済時一括返済額 | 5,000万円 |
| 売却時の資金支出 | 180万円 |
| 税務上の取得費 | 3,600万円 |
| 上記180万円のうち税務上の譲渡費用 | 180万円と仮定 |
資金面では、
4,800万円 − 5,000万円 − 180万円 = ▲380万円
です。
一方、譲渡所得は、
4,800万円 − 3,600万円 − 180万円 = 1,020万円
となります。
つまり、売却代金だけではローンを返し切れないのに、税務上は譲渡所得が発生することがあります。
収益物件では減価償却により建物の税務上の取得費が下がっているため、このようなことが起こり得ます。
逆に譲渡損失が出ても、給与所得等と自由に相殺できるわけではない
個人が土地・建物を売却して譲渡損失が出た場合にも注意が必要です。
一定の土地建物の譲渡損失は、他の土地建物の譲渡所得から控除できる場合があります。
しかし、控除しきれない損失を給与所得や事業所得などと自由に損益通算できるわけではありません。
居住用財産には一定の特例がありますが、通常の賃貸アパート売却では同じようには扱えません。
「売却損が出るから所得税もその分安くなる」と単純に考えないことが重要です。
個人所有と法人所有では税金の考え方が違う
ここまでの譲渡所得の説明は、個人所有を前提にしています。
法人所有の場合は、物件売却による利益・損失を法人全体の所得計算へ反映するため、個人の長期譲渡所得・短期譲渡所得とは計算方法が異なります。
また、課税事業者が事業用建物を売却する場合は、建物部分の消費税についても確認が必要になることがあります。土地の譲渡は原則として消費税非課税です。
法人所有・課税事業者・複数物件所有の場合は、売却前に税理士へ税額シミュレーションを依頼しておく方が安全です。
ローン残高が減るから持ち続けた方がよい、とは限らない
アパート経営では、返済を続ければローン残高は減っていきます。
そのため、「あと5年持てば残債が減るから、そのとき売った方がよいのでは」と考えることがあります。
もちろん、それが合理的なケースもあります。
一方、5年間保有すれば物件も5年古くなります。
その間に、
- 外壁・屋根・防水等の修繕
- 設備交換
- 空室増加
- 家賃下落
- 金利変動
- 買主が利用できる融資期間の変化
- 買主層の減少
が起きる可能性があります。
残債が減ることと、将来その価格で売れることは別問題です。
今売るか、3〜5年持つかはこう比較する
保有継続と現在売却を比較する場合は、同じ基準で比較します。
今売る場合
現在の売却価格 − 現在の一括返済額 − 売却時の資金支出 − 税金
数年間保有してから売る場合
保有期間中の税引後キャッシュフロー + 将来売却時の税引後手残り − 保有期間中の大規模修繕等
で比較します。
将来売却時の手残りには、その時点のローン残高減少がすでに反映されています。
そのため、将来売却時の手残りに加えて元金返済額をもう一度足さないことが重要です。
また、将来売却価格は断定できません。
弊社なら、
- 強気ケース
- 標準ケース
- 弱気ケース
など複数の売却価格を置き、保有継続の判断を比較します。
売却前に金融機関へ確認したいこと
- 現在の借入残高
- 決済予定日の一括返済額
- 全額繰上返済の申込方法・期限
- 繰上返済関連費用の有無
- 抵当権・根抵当権を外す条件
- 共同担保になっている不動産がないか
- 決済日に必要な書類
金融機関によって手続は異なります。
売買契約日・決済日を決める際には、金融機関・司法書士・不動産会社で日程と条件を共有します。
売却前に準備しておきたい資料
- 返済予定表
- 借入残高が確認できる資料
- 金銭消費貸借契約書
- 登記事項証明書
- 購入時の売買契約書
- 購入時の仲介手数料等の資料
- 建築費・取得費が分かる資料
- 減価償却の計算資料・確定申告書
- 修繕履歴
- レントロール
特に購入時の資料と減価償却資料は、税務上の取得費を確認するときに重要です。
取得費が不明な場合には、一定の場合、売却代金の5%相当額を概算取得費とすることができますが、実際の取得費を使える場合と比べて譲渡所得が大きくなる可能性があります。
ローンが残っているアパートの売却で確認したい7つの数字
- 現在の成約見込み価格
- 売出価格
- 決済時一括返済額
- 売却時に実際に出ていく資金
- 税務上の取得費・譲渡費用
- 概算税額
- 税引後手残り
さらに保有継続を比較する場合は、
- 今後3〜5年の税引後キャッシュフロー
- 大規模修繕の予定
- 将来のローン残高
- 将来の想定売却価格
も並べます。
ここまで整理すると、「今売る」「持ち続ける」を感覚ではなく数字で比較できます。
査定価格より「手残りまで説明できるか」を見る
アパート売却では、不動産会社によって査定額が違うことがあります。
より良い価格を目指すことは重要です。
ただし、売主が判断するためには、
- いくらなら現実的に成約できそうか
- ローンを返したあといくら残るか
- 税金はいくらくらいになりそうか
- 今売るのと数年持つのではどう違うか
- 今後の修繕・金利・出口をどう見るか
まで整理する必要があります。
査定額は売却判断の一部であって、答えそのものではありません。
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まとめ|残債ではなく「売った後に何が残るか」で判断する
ローンが残っているアパートでも売却することはできます。
ただし、確認すべきなのはローン残高だけではありません。
- 現在の売却価格
- 決済時の一括返済額
- 抵当権・根抵当権
- 売却時の資金支出
- 税務上の取得費・譲渡費用
- 税金
- 最終的な手残り
を分けて整理します。
特に収益物件では、減価償却が進むことで、ローン残高と税務上の取得費が大きく離れている場合があります。
その結果、ローンを完済しても思ったほど資金が残らなかったり、反対に残債割れしているのに税務上は譲渡所得が発生したりすることがあります。
さらに今売るか持ち続けるかを比較するときは、残債が減ることだけではなく、今後のキャッシュフロー、修繕、金利、建物年齢、買主融資、将来の流動性まで確認する必要があります。
「いくらで売れるか」ではなく、「売ったあといくら残るのか」「持ち続けた場合と比べてどちらが合理的なのか」まで整理する。
それが、ローンが残っているアパートの売却では重要だと弊社は考えています。
新潟市でローンが残っているアパートの売却を検討している方へ
竹鼻不動産事務所では、新潟市のアパート・収益物件について、査定価格だけではなく、ローン残高、売却費用、税金、修繕、保有継続した場合のキャッシュフロー、将来の出口まで整理しながら売却判断をお手伝いしています。
「まだローンが多く残っている」「売却代金で完済できるか分からない」「売ったあといくら残るのか知りたい」「今売るか数年持つか比較したい」といった段階でも問題ありません。
売却ありきではなく、まず数字を整理したい方は、新潟市のアパート売却についてをご覧ください。
