個人がアパートを売却して利益が出た場合、基本的には「売却価格」ではなく、売却価格から取得費や譲渡費用などを差し引いた課税譲渡所得に対して税金がかかります。
税率の目安は、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば約20.315%、5年以下なら約39.63%です。
| 区分 | 所有期間 | 税率の目安 |
|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 売却年の1月1日時点で5年超 | 約20.315% |
| 短期譲渡所得 | 売却年の1月1日時点で5年以下 | 約39.63% |
ただし、アパート売却で難しいのは税率そのものより、何を利益として計算するのかです。
収益物件では建物の減価償却が進んでいるため、購入価格より安く売却したのに税務上は利益が出ることがあります。また、ローン残高は譲渡所得の計算から直接差し引くものではありません。
つまり、アパートを売却するときは、
- いくらで売れるのか
- 税務上いくら利益が出るのか
- ローンを返した後に現金がいくら残るのか
を分けて考える必要があります。
この記事では、新潟市でアパートの売却を検討している方に向けて、税金そのものだけでなく、最終的な「手残り」を判断するために必要なポイントを整理します。
※本記事は2026年10月時点の制度をもとに、主に個人所有のアパートを想定して説明しています。実際の税額や特例の適否は、所有状況や過去の申告内容によって異なるため、最終的には税理士等へご確認ください。
まず理解したい|売却価格・譲渡所得・手残りは別の数字
アパート売却の税金で最初に整理したいのが、この3つです。
| 項目 | 意味 |
|---|---|
| 売却価格 | 買主へ不動産を売却する金額 |
| 譲渡所得 | 税金を計算するための利益 |
| 売却後の手残り | ローン返済や売却費用、税金などを支払った後に残る現金 |
税務上の譲渡所得は、基本的に次のように計算します。
譲渡価額 −(取得費+譲渡費用)− 適用できる特別控除 = 課税譲渡所得
一方、売却後に残る現金を考える場合は、
売却代金 − ローン残高 − 売却時の諸費用 − 税金等 = おおよその手残り
という考え方になります。
ここで重要なのは、ローン残高は税務上の取得費ではないということです。
例えばローンが3,000万円残っていても、その3,000万円を課税譲渡所得から差し引けるわけではありません。
ローン残高は「現金がいくら残るか」には大きく影響しますが、「税務上いくら利益が出たのか」とは別に計算します。
個人所有と法人所有では税金の考え方が違う
売却前にまず確認したいのが、アパートの所有者です。
個人名義の場合
個人が土地・建物を売却した場合、原則として譲渡所得として、給与所得や事業所得などとは分けて税額を計算します。
さらに、所有期間によって長期譲渡所得と短期譲渡所得に分かれます。
法人名義の場合
法人が所有するアパートの場合、個人のように「5年を超えたら約20%」という税率をそのまま当てはめるわけではありません。
不動産売却による利益や損失を法人全体の所得計算に反映し、法人税等を計算します。
そのため、法人所有の収益物件については、個人向けの長期・短期譲渡所得の税率だけを見て売却時期を判断しないよう注意が必要です。
以下では、主に個人所有の場合を説明します。
アパート売却の税金で重要なのは「取得費」と減価償却
譲渡所得を計算するときは、売却価格から取得費と譲渡費用を差し引きます。
ただし、土地と建物では取得費の考え方が異なります。
土地の取得費
土地については、購入代金や購入時の一定の費用などをもとに取得費を計算します。
建物の取得費
建物は、購入した金額をそのまま取得費として使うわけではありません。
原則として、建物の購入代金や建築代金などから、所有期間中の減価償却費相当額を差し引きます。
収益アパートの場合、毎年の不動産所得の計算で減価償却を行っているため、長期間所有するほど税務上の建物取得費が小さくなっていることがあります。
ここが、アパート売却の税金を考えるうえで非常に重要です。
購入価格より安く売っても税金が出ることがある
例えば、土地と建物を合わせて5,000万円で購入したアパートを、4,500万円で売却したとします。
単純に売買価格だけを見ると、500万円下がっています。
そのため、「利益が出ていないから税金も出ない」と考えたくなります。
しかし、所有期間中の減価償却によって、売却時点の税務上の取得費が3,000万円まで減っていたとします。
さらに、売却時の仲介手数料など譲渡費用が200万円だった場合、特別控除等を考慮しない単純計算では、
4,500万円 − 3,000万円 − 200万円 = 1,300万円
となります。
購入時より500万円安く売却していても、税務上は1,300万円の譲渡所得が生じる可能性があるということです。
「買った金額より安く売ったから税金はかからない」とは限りません。
アパート売却では、購入時の売買契約書だけでなく、確定申告書や減価償却資産の明細なども確認する必要があります。
取得費が分からない場合は「売却額の5%」を使えることがある
古くから所有しているアパートや相続したアパートでは、購入時の売買契約書が見つからないことがあります。
土地・建物の取得費が分からない場合には、売却金額の5%相当額を「概算取得費」として計算することができます。
また、実際の取得費が売却金額の5%より少ない場合にも、5%相当額を取得費として使うことができます。
例えば5,000万円で売却した場合、5%は250万円です。
本来の取得費がもっと大きかったにもかかわらず、それを証明できず250万円で計算することになれば、課税譲渡所得が大きくなる可能性があります。
そのため、取得費が分からないからといって、すぐに5%で計算するのではなく、
- 購入時の売買契約書
- 購入時の精算書
- 仲介手数料の領収書
- 建築時の請負契約書
- 過去の確定申告書
- 減価償却資産の明細
などが残っていないか確認することをおすすめします。
相続したアパートは「相続してから何年か」だけで判断しない
相続したアパートを売却するときに、よく誤解されやすいのが所有期間です。
相続で取得した不動産については、原則として被相続人の取得費と取得時期を引き継ぎます。
例えば、親が20年前に購入したアパートを2年前に相続し、現在売却するとします。
この場合、「相続してから2年しか経っていないから短期譲渡所得」という考え方にはなりません。
被相続人が取得した時期から所有期間を判定します。
取得費についても、相続時の相続税評価額をそのまま取得費にするわけではなく、原則として被相続人の取得費を引き継いで計算します。
相続したアパートについては、相続したアパートは売るべきか持ち続けるべきか|新潟市で判断するための現実的な考え方でも売却・保有の判断を整理しています。
相続税を払った場合は「取得費加算の特例」を確認する
相続や遺贈によって取得した不動産を売却する場合、一定の要件を満たせば、支払った相続税のうち一定額を譲渡所得の取得費に加算できる制度があります。
これが「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」です。
主な要件として、
- 相続または遺贈によって財産を取得していること
- その財産を取得した人に相続税が課税されていること
- 国税庁が定める一定の期間内に売却していること
などがあります。
取得費に加算できる金額が増えれば、課税対象となる譲渡所得が小さくなる可能性があります。
相続したアパートを売却する場合には、単に「いくらで売れるか」だけでなく、相続税を支払っているか、取得費加算の期限内かも確認した方がよいでしょう。
所有期間5年で税率が大きく変わる
個人が土地・建物を売却する場合、売却した年の1月1日時点の所有期間によって、長期譲渡所得と短期譲渡所得に分かれます。
| 区分 | 判定 | 所得税等・住民税の合計目安 |
|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 約20.315% |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 約39.63% |
長期譲渡所得では、所得税15%に復興特別所得税が加わり、住民税は5%です。
短期譲渡所得では、所得税30%に復興特別所得税が加わり、住民税は9%です。
判定するのは、単純に「購入日から売却日まで5年経ったか」ではありません。
売却した年の1月1日時点で判定します。
例えば2026年中に売却する場合、2020年12月31日以前に取得した土地・建物は長期譲渡所得、2021年1月1日以後に取得したものは短期譲渡所得となります。
長期と短期で税額はどのくらい変わる?
次のような条件を仮定します。
| 売却価格 | 5,000万円 |
|---|---|
| 減価償却等を反映した取得費 | 2,500万円 |
| 譲渡費用 | 200万円 |
| 課税譲渡所得 | 2,300万円 |
特別控除等を考慮しない単純計算では、2,300万円が課税対象です。
長期譲渡所得の場合
2,300万円 × 約20.315% = 約467万円
短期譲渡所得の場合
2,300万円 × 約39.63% = 約911万円
この仮定では、所有期間の違いだけで税額に約444万円の差が生じます。
そのため、長期譲渡所得へ切り替わる時期が近い場合には、売却時期を比較する意味があります。
ただし、税率だけを見て「長期になるまで必ず待った方がよい」とは言えません。
税金を下げるためだけに売却を待つべきとは限らない
短期譲渡所得と長期譲渡所得では税率に大きな差があります。
しかし、売却を待っている間にも物件の状況は変わります。
- 家賃収入が入る
- ローン残高が減る
- 空室が増える可能性がある
- 修繕費が発生する可能性がある
- 建物の築年数が進む
- 金利や融資環境が変わる
- 買主が利用できる融資期間が短くなる可能性がある
- 売却価格そのものが変わる可能性がある
例えば税金が300万円下がるとしても、その間に500万円の修繕が必要になるのであれば、税率だけを理由に待つことが合理的とは限りません。
税額の差、保有中の家賃収入、ローン返済、修繕費、将来の売却価格を同じ条件で比較することが大切です。
3,000万円特別控除は通常の賃貸アパートにそのまま使える制度ではない
「不動産を売ると3,000万円まで税金がかからない」という話を聞いたことがある方もいるかもしれません。
これは、一定の要件を満たすマイホームを売却した場合に利用できる3,000万円特別控除です。
投資目的で所有し、第三者へ賃貸している通常のアパートに、そのまま適用できる制度ではありません。
一方、オーナー自身が居住している部分を含む併用住宅などでは、居住部分について特例を検討できる場合があります。
居住実態や建物の使い方によって判断が変わるため、「アパートだから使えない」「一部住んでいたから使える」と自己判断せず、個別に確認する必要があります。
売却で損が出ても、給与所得などと自由に相殺できるわけではない
土地・建物を売却して譲渡損失が生じた場合、その損失を他の土地・建物の譲渡所得から控除できることがあります。
しかし、通常の投資用アパートの譲渡損失を、給与所得や事業所得などと自由に損益通算できるわけではありません。
マイホームの売却については一定の要件を満たす場合に別の特例がありますが、投資用アパートとは分けて考える必要があります。
「売って損をしたから所得税がその分戻ってくる」と単純には考えない方がよいでしょう。
税金と手残りを一緒に計算すると見え方が変わる
先ほどの例に、ローン残高を追加して考えてみます。
| 売却価格 | 5,000万円 |
|---|---|
| ローン残高 | 3,000万円 |
| 売却時の諸費用 | 200万円 |
| 税務上の取得費 | 2,500万円 |
| 課税譲渡所得 | 2,300万円 |
長期譲渡所得と仮定すると、税額の単純な目安は約467万円です。
この場合、概算の手残りは、
5,000万円 − 3,000万円 − 200万円 − 約467万円 = 約1,333万円
となります。
つまり、この売主にとって本当に重要なのは「5,000万円で売れる」という数字だけではありません。
売却後に約1,333万円が残ると想定したうえで、その金額と今後アパートを保有し続ける価値を比較することです。
実際には固定資産税等の精算、抵当権抹消費用、その他の売却費用、特例の適用などによって数字は変わります。この例は考え方を説明するための仮定です。
その他に確認しておきたい税金・費用
売買契約書の印紙税
紙の不動産売買契約書を作成する場合、契約金額に応じて印紙税がかかります。
2026年10月現在、不動産譲渡契約書については2027年3月31日まで軽減措置が適用されています。
| 契約金額 | 軽減後の印紙税 |
|---|---|
| 100万円超~500万円以下 | 1,000円 |
| 500万円超~1,000万円以下 | 5,000円 |
| 1,000万円超~5,000万円以下 | 1万円 |
| 5,000万円超~1億円以下 | 3万円 |
| 1億円超~5億円以下 | 6万円 |
消費税
土地の譲渡は消費税の非課税取引です。
一方、消費税の課税事業者が事業用資産である建物を売却する場合、建物部分が消費税の課税対象になることがあります。
住宅の家賃が消費税非課税だからといって、賃貸アパートを売却するときの建物部分まで必ず非課税になるわけではありません。
課税事業者に該当するか、土地と建物の価格をどのように区分するかなどを含め、該当する場合は売却前に税理士等へ確認してください。
固定資産税・都市計画税の精算金
不動産売買では、固定資産税・都市計画税を引渡日等で日割り精算することがあります。
買主から売主へ支払われる未経過固定資産税等相当額は、個人の土地建物の譲渡所得を計算する際には、譲渡価額に含めて扱われます。
売買価格だけを税理士へ伝えるのではなく、決済時の精算書もあわせて確認してもらう方がよいでしょう。
確定申告は「アパートを売った人全員が必ず必要」とは限らない
個人が土地・建物を売却し、計算の結果、譲渡所得の利益が生じた場合には、原則として確定申告が必要です。
一方、譲渡損失となった場合には、売却したという事実だけで「全員必ず申告が必要」とは言い切れません。
ただし、特例を利用する場合や、他の土地・建物の譲渡所得との関係などによって申告が必要になることがあります。
「利益がなさそうだから何もしなくてよい」と自己判断するのではなく、売却した年の申告要否を確認することをおすすめします。
売却前に整理しておきたい資料
アパート売却の税額を計算するには、売却価格だけでは足りません。
売却を具体的に検討し始めたら、次の資料を整理しておくとスムーズです。
- 購入時の売買契約書
- 購入時の精算書
- 購入時の仲介手数料等の資料
- 建築時の請負契約書等
- 過去の確定申告書
- 減価償却資産の明細
- 現在のローン残高が分かる資料
- 売却時の仲介手数料等の見込み
- 相続物件の場合は相続税申告書等
特に築年数が経過したアパートや相続したアパートでは、取得費を確認する資料を探すのに時間がかかることがあります。
売買契約を結んでから慌てて探すより、売却を検討し始めた段階で整理しておく方が、税引後の手残りまで把握しやすくなります。
アパート売却では「査定価格」より税引後の手残りを見る
不動産会社から5,000万円、5,200万円、5,500万円という複数の査定額が出ると、最も高い金額に目が向きやすくなります。
しかし、査定額は売却保証額ではありません。
収益物件では、
- その価格で実際に買える投資家がいるか
- 買主に融資が付くか
- 売れるまでどのくらい期間がかかるか
- その間に家賃収入がいくら入るか
- 空室や修繕が発生する可能性はないか
- 税金とローン返済後にいくら残るか
まで考える必要があります。
査定価格の考え方については、新潟市でアパート売却の査定価格はどう決まる?利回り・積算・融資・出口の見方でも整理しています。
高い査定額を出した会社を選ぶことより、「その価格がなぜ成立するのか」「最終的にいくら残るのか」まで説明できることの方が重要だと弊社は考えています。
税金だけで「売る・持つ」を決めない
税金はアパート売却の重要な判断材料です。
ただし、税金を最小化することだけが目的ではありません。
売却を待てば税率が下がるとしても、その間に家賃収入が入る一方で、ローン返済、空室、修繕、建物の経年といった変化もあります。
逆に、税金が発生するから売却を見送った結果、数年後に修繕負担が増えたり、売却時の買主が限定されたりする可能性もあります。
売却を判断するときは、
- 現在いくらで売れる可能性があるのか
- 税務上の取得費はいくらなのか
- 税金はいくらになりそうか
- ローン返済後にいくら残るのか
- 持ち続けた場合、今後3〜5年でどの程度の収入と支出が見込まれるのか
を並べて比較すると判断しやすくなります。
売却価格ではなく、税引後の手残りと今後の保有価値を比較する。
収益物件の売却では、この考え方が重要です。
この記事で確認した主な税務上のポイント
- 土地・建物の譲渡所得は、売却価格から取得費・譲渡費用等を差し引いて計算する
- 建物の取得費は減価償却費相当額を差し引いて計算する
- 取得費が不明な場合等は売却金額の5%を概算取得費として使える
- 個人の長期譲渡所得と短期譲渡所得は、売却年の1月1日時点の所有期間で判定する
- 相続した不動産は、原則として被相続人の取得費と取得時期を引き継ぐ
- 相続税を支払っている場合は、一定要件で取得費加算の特例を検討できる
- ローン残高は譲渡所得の取得費とは別に考える
- 投資用不動産の譲渡損失を給与所得等と自由に損益通算できるわけではない
税務については、国税庁「譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」「長期譲渡所得の税額の計算」「短期譲渡所得の税額の計算」「建物の取得費の計算」「取得費が分からないとき」「相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」等の2026年4月1日現在の情報をもとに整理しています。
新潟市でアパート売却後の手残りを確認したい方へ
竹鼻不動産事務所では、新潟市のアパートについて、査定価格だけではなく、ローン残高、売却費用、入居状況、修繕、売却時期などを整理しながら、売却した場合の手残りを考えるための材料をご用意しています。
税額そのものの確定や税務判断は税理士の業務となりますが、不動産会社として「現在いくらで売れる可能性があるのか」「どのような費用が想定されるのか」「今売る場合と持ち続ける場合をどう比較すればよいか」を整理することはできます。
「売却すると税金がどれくらいかかりそうか」「ローンを返した後にいくら残るのか」「今売るか数年持つか比較したい」という段階でも構いません。
売るかどうかを決める前に数字を整理したい方は、新潟市のアパート売却についてをご覧ください。



