「買いたい家が見つかったので、今の家を売りたい」。住み替えでは、こういう順番で話が動くこともあります。気に入った家を逃したくないですし、仮住まいを挟まずに引っ越せれば、その方が楽です。
それでも、今の家が希望額で売れないと新居の支払いができないのであれば、購入の契約を先に進めるのは勧めにくいです。新居の支払いに間に合わせるために、売却価格を下げざるを得なくなるからです。まずは売却でいくら残るかをつかみ、そのお金をいつ使えるかまで合わせて、購入の順番を決めます。
家探しは並行して、契約の順番はお金から決める
売却を先にする場合でも、売れるまで新居を探さずに待つ必要はありません。住みたい地域で、予算内にどんな家があるのかは先に見ておいた方がよいです。売ったあとで希望する家が見つからず、仮住まいが長くなるのも負担です。
今の家の査定と新居探しは並行して進めます。そのうえで、売却代金がないと購入できないなら、先に売却価格や引渡しの条件を詰める。売却を待たずに購入代金を用意できるなら、気に入った家を先に買うことも選べます。
「売り先行」「買い先行」という名前を決めることより、ご自身がどこまで先にお金を出せるかが先です。査定額は売却の約束ではないので、査定書に高い金額が書かれているだけで、新居の予算を増やすのは避けてください。
「この金額で売りたい」と「この金額でも買える」を分ける
今の家をできるだけ高く売りたいのは当然です。住み替えなら、次の家に必要な金額から希望価格を考えることもあると思います。ただ、その金額が必要であることは、買主様がその価格で買う理由にはなりません。
例えば、2,500万円で売れて住宅ローンが1,800万円残っていれば、差額は700万円です。これは仮の計算で、ここから仲介手数料や登記などの費用、必要に応じて測量や片付けの費用も払います。税金が生じる場合は、その支払い分も残しておきます。
同じ条件で売却価格が2,300万円になれば、費用を引く前の差額は500万円です。この200万円の違いを預金で補えるのか、新居の予算を変えるのか。それとも住み替えを見送るのか。購入契約の前なら選べますが、契約後は簡単に計画を戻せません。
新居の諸費用や引越し代、リフォーム代まで払って、生活のための預金がいくら残るかも計算してください。購入できても、引っ越したあとに手元のお金がほとんどなくなるなら、家の予算から見直した方がよいです。
お金が足りても、入ってくる日が遅ければ使えません
売却代金の残りを受け取るのは、通常、決済・引渡しのときです。契約時に手付金を受け取っても、その日に売却代金の全額がそろうわけではありません。新居の手付金や諸費用を先に払うなら、その分は別に用意します。
ローンが残っている家を売る場合は、返済と抵当権を外す手続きも必要です。売却と購入の決済を同じ日に合わせる方法もありますが、金融機関や司法書士、双方の相手方との調整が欠かせません。「同じ日にすれば大丈夫」と日付だけ決めて進めることはできません。
つなぎ融資などで対応できる場合もありますが、利用条件や審査は金融機関によって違います。借りられる予定で購入を約束する前に、必要な金額と時期を金融機関へ伝えてください。売買契約に融資などに関する解除条件を付ける場合も、どこまでが対象になるかを契約前に確かめます。
先に買うなら、売れない期間を自分で選べるか
先に新居へ移れば、今の家を空けて売れます。暮らしながら内覧の予定を合わせる必要がなくなり、引越しも一度で済ませやすくなります。気に入った家があり、この負担の少なさを優先したいという考えも自然です。
ただ、今の家が売れるまでは、その家のローンや維持費が続きます。マンションなら管理費や修繕積立金もあります。新居のローン審査が通ったとしても、二つの家の支払いを続けてよいかは、ご自身の家計で判断する必要があります。
仮に半年売れなかったら、どのくらい預金が減るか。そのうえで売却価格を下げても、生活に支障がないか。半年というのは売却期間の予測ではなく、負担を確かめるための例です。売却が長引いても待てるお金があれば、購入を先にする選択を取りやすくなります。
反対に、数か月以内に希望価格で売ることが条件でないと払えないなら、先に買うと売却を急ぐことになります。その場合は、物件を逃す残念さはあっても、売却の見通しを立てる方を勧めます。
仮住まいを避けたいなら、売出しのときから伝える
売却を先にすると予算を決めやすくなりますが、新居の準備より今の家の引渡しが先なら、仮住まいが必要です。家賃や入居時の費用に加え、引越しが二度になる手間もあります。お子様の通学や仕事の都合によっては、お金だけで解決できない負担もあると思います。
仮住まいを避けたいのであれば、売却の相談をする時点で伝えてください。買主様と合意できれば、契約から引渡しまでに新居の準備期間を取れる場合があります。ただ、買主様にも引っ越したい時期があるので、いつまでも待っていただく条件にはできません。
例えば、価格は少し低くても引渡しを待ってくださる方と、高い価格でも早い引渡しを求める方では、売主様の負担が違います。仮住まいの費用や二度の引越しまで含めると、売却価格が高い方がよいとも言い切れません。こういう条件まで比べて、どちらの話を進めるか決めます。
なお、売却契約を結んでも、買主様の融資に関する解除条件などが残っている場合があります。新居の契約へ進む際は、売却代金の入金までに残る条件も押さえておきます。
税金は、売却と購入を一緒に相談する
今の家を売る際の3,000万円の特別控除と、新居の住宅ローン控除は、適用を受けた年などによって両方を利用できない場合があります。それぞれ使えるつもりで計算すると、予定していたお金が残らないことがあります。
どちらを使うかは、売却益や新居の借入額、ご自身が満たす要件によって変わります。税理士や税務署には、売却の話だけでなく、新居の購入・入居時期も一緒に伝えてください。要件は国税庁「マイホームを売ったときの特例」で確認できます。
まだ順番を決められなくても結構です
気になる家があるなら、その物件の価格と購入に必要な時期から、今の家の売却が間に合うかを見ます。まだ新居が決まっていないなら、今の家を売っていくら残るかが分かると、探す予算を決められます。
「仮住まいは避けたい」「この時期までに引っ越したい」といった希望も、先に教えてください。今のお住まいの場所、ローンがどのくらい残っているか、次にどんな家へ移りたいか。分かるところからで結構です。
