相続した不動産を売却したときの税金と特例|「知らないと損する」ポイントだけ整理します
相続した不動産について、 売却相談で一番多い質問はこれです。
「相続した不動産を売ったら、税金ってどれくらいかかりますか?」
正直に言うと、 ケースによって全然違います。
そしてもう一つ、
使える特例を知らずに売って、あとで後悔する方が本当に多い。
この記事では、相続不動産の売却に関して、
- 基本的な税金の考え方
- よく使われる特例
- 判断を間違えやすいポイント
この3点だけに絞って、 現場目線で整理します。
相続した不動産を売ると、どんな税金がかかる?
まず前提から。
相続した不動産を売却して、 利益(譲渡所得)が出た場合には、
譲渡所得税
がかかります。
ポイントはここです。
売却価格そのものに税金がかかるわけではありません。
あくまで、
売却価格 −(取得費+譲渡費用)
この差額がプラスになった場合だけです。
相続不動産の「取得費」はどう考える?
相続の場合、 ここが一番分かりにくいところです。
結論から言うと、
被相続人(亡くなった方)が買ったときの価格を引き継ぎます。
相続したからといって、 相続時の評価額(固定資産税評価額など)になるわけではありません。
なので、
- 購入時の売買契約書
- 購入時の仲介手数料
- リフォーム・改良費の資料
これが残っているかどうかで、 税金はかなり変わります。
書類が見つからない場合、 取得費を「概算(売却価格の5%)」で計算することになりますが、
これは税金が増えやすい。
相続が発生したら、 売る・売らないに関係なく、 まず書類探しから始めた方がいい理由です。
相続不動産の売却で使える代表的な特例
ここからが本題です。
相続不動産の売却には、 条件を満たせば使える特例
がいくつかあります。
① 相続空き家の3,000万円特別控除
一番有名で、 一番勘違いされやすい特例です。
正式には、
「被相続人の居住用財産(空き家)を売った場合の3,000万円特別控除」
ざっくり言うと、
一定条件を満たせば、譲渡所得から3,000万円まで差し引ける
という制度です。
主なポイント(かなり重要)
- 被相続人が一人で住んでいた家
- 相続後、空き家になっていること
- 耐震改修 or 解体して更地で売る
- 相続開始から売却までの期限がある
この特例、 「相続した不動産なら何でも使える」わけではありません。
アパートや賃貸中の戸建・マンションなどは対象外です。
なので、
使える前提で話を進めるのは危険
です。
② 取得費加算の特例(相続税を払っている場合)
もう一つ、 地味だけど効くのがこれです。
相続税を支払っている場合、
支払った相続税の一部を「取得費」に加算できる
という特例があります。
取得費が増える= 譲渡所得が減る= 税金が下がる。
ただし、
- 相続税を実際に払っていること
- 期限内に売却すること
など、条件があります。
相続税申告をした場合は、 売却前に必ず確認すべき特例です。
相続不動産の売却で「やりがちな失敗」
① とりあえず売ってから考える
これ、かなり多いです。
売ってから
「あ、この特例使えたんですね…」
と言われても、 基本的に後戻りはできません。
② 相続人同士で話がまとまらないまま進める
税金以前に、
- 売る・売らない
- いつ売るか
- お金をどう分けるか
ここが曖昧だと、 途中で止まります。
不動産は、 感情が一番絡みやすい資産です。
③ 「税理士に丸投げ」「不動産屋に丸投げ」する
正直に言うと、
どちらか一方だけだと、判断を間違えることがあります。
税理士は税金に強い。 不動産屋は売り方と市場に強い。
相続不動産の売却は、
両方の視点が揃って初めて最適解が見える
テーマです。
まとめ|相続不動産の売却は「税金の整理」が8割
相続した不動産を売るとき、
- どれくらい利益が出そうか
- 取得費はどこまで拾えるか
- 使える特例はあるか
ここを整理せずに進めると、 ほぼ確実に後悔します。
逆に言えば、
売る前に一度、数字と特例を整理するだけで、手残りは大きく変わる
ということです。
「まだ売るか決めていない」 「相続したけど放置している」
その段階でも構いません。
相続不動産は、 早めに整理した人ほど、選択肢が多い。
これ、現場で何度も見てきた事実です。
