コラム
2024.12.31 実家の空き家を放置してはいけない理由|固定資産税が最大6倍?
実家を引き継いでも遠方で住めず、空き家になっている方も多いのではないでしょうか。
実家を相続したものの手つかずのまま、というケースは珍しくありません。とはいえ、放置しているとさまざまな問題が生じるため注意が必要です。
この記事では新潟市中央区の竹鼻不動産事務所、空き家になった実家を放置するリスクと、対策について解説します。
実家が空き家になる理由を理解して、スムーズに対処できるようにしましょう。
空き家になった実家を放置すると固定資産税が最大6倍になることも
2024年4月に公開された住宅・土地統計調査によると、全国の空き家は約900万戸(899.5万戸)となり、過去最多です。
このような状況の中、空き家等対策の推進に関する特別措置法が制定されました。倒壊や悪影響を及ぼす空き家を「特定空き家」と指定できるようになりました。
倒壊や悪影響を及ぼす空き家を特定空き家に認定できるようになり、税金の住宅用地特例が解除されます。その結果、所有している空き家が特定空き家に指定されると、固定資産税が最大6倍になる状況になっています。
また、令和5年に法案の一部改正により、新たに特定空き家の前段階となる「管理不全空き家」という区分が設けられました。管理不全空き家に指定された場合も、軽減措置が受けられなくなります。
続いて、特定空き家と管理不全空き家の概要を見ていきましょう。
特定空き家
特定空き家とは、周辺環境に明らかな悪影響を及ぼす空き家を指します。
実家が空き家となった際に以下の状態に当てはまると、該当する可能性が高くなります。
- 倒壊など保安上危険となるおそれがある
- 適切な管理がなされておらず、著しく景観を損なっている
- 放置すれば衛生上有害となるおそれのある状態
- 生活環境の保全を図るために放置が不適切である状態
ある日突然「特定空き家」に指定されるわけではありません。最初は、空き家の所有者に対し、空き家状況を改善するように行政指導が行われます。指導後も空き家を放置すると、勧告に進みます。勧告されるまでに空き家の状況を改善しないと、特定空き家に指定されるのです。
勧告を受けた場合、住宅用地に適用される固定資産税の軽減特例が利用できず、納税額が大幅に増加します。また、義務違反をした罰則で、最大50万円の過料が科されるほか、強制解体の可能性も。
このような事態にならないためにも、実家の空き家は放置しないようにしましょう。
参照:空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報 国土交通省
管理不全空き家
管理不全空き家は「このまま放置すれば、いずれ特定空き家になるおそれのある空き家」を指します。特定空き家の増加を未然に防ぐために、市区町村が指導・勧告の対象とする、特定空き家予備軍です。
- 放置すれば倒壊など著しく保安上危険となるおそれのある状態
- 放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
- 生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
管理不全空き家に指定されると、所有者に対し改善指導・勧告が実施されます。応じない場合は特定空き家と判定されます。
管理不全空き家も特定空き家と同様に、固定資産税と都市計画税の住宅用地特例の軽減措置が受けられません。結果、固定資産税の負担が大幅に増加する状況になっています。
【補足】空き家と判断される基準
空き家とは一般的に使用されていない住宅を指しますが、法令上の定義は「空き家等対策の推進に関する法律」により明確です。
空き家の定義は以下の条件を満たす住宅とされます。
- 住居として使用されていない
- 1年以上使用されていない
- 今後も使用予定がない
これらの要件を満たす住宅は、法的に空き家と見なされます。
空き家になった実家を放置するリスク5選
費用がかかるからと空き家となった実家を放置すると、費用面に限らずさまざまなリスクにさらされます。
リスクによって発生したトラブルは、実家を利用していなくとも所有者が責任を負わなければなりません。
ここでは、空き家になった実家の放置で発生する5つのリスクを紹介します。
- 近隣トラブル
- 災害時の危険性
- 放火や不法侵入のリスク
- 維持費がかかる
- 資産価値が下がる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
近隣トラブル
実家が空き家になったからと放置すると、衛生面や治安面が原因で近隣トラブルにつながる可能性があります。
実家が戸建ての場合、放置することで草木が繁殖し、虫や害獣の発生源となるケースがあります。草木を放置することによって通路や道路の通行を妨げる被害も起きるでしょう。
放置された空き家は手入れが行き届かないため家屋自体が傷み、劣化によって景観を損ないます。家屋の倒壊や隣家へ建材の落下が発生するなど、近隣住民にとって放置空き家は不安材料でしかありません。
放置期間が長くなるほど近隣への影響リスクが大きくなります。そのため、空き家の使い道や処分は、可能なかぎり早めに取り掛からなければなりません。
災害時の危険性
放置された空き家は手入れが行き届かないため老朽化の進行が深刻です。地震や台風のような自然災害でさらに荒廃します。
ただでさえ老朽化の進行とともに、家屋は倒壊する危険性が高まります。とくに、日本の多湿な気候や台風、地震といった自然災害は建物の耐久性を著しく低下させるでしょう。
実家の築年数が古い場合、現行の耐震基準を満たしていないケースもあります。このような状態だと、地震発生時に倒壊まで行かずとも、屋根の瓦が落ちたり、壁の一部がはがれたりと被害をもたらす可能性も。
適切な処置を怠ると、人命に関わる事故を引き起こす可能性があるため、注意しましょう。最悪の場合、損害賠償に発展するかもしれません。実家が空き家になっても放置せず、災害対策の実施が大切です。
放火や不法侵入のリスク
放置された空き家は、周辺地域の治安を悪化させる原因となりえます。
家屋が無人だと露見した場合、不法侵入や窃盗、不法占拠の現場として、空き家は、犯罪者にとって理想的な隠れ家になるでしょう。悪質ないたずらで放火の対象となるケースも。
このようなリスクは、空き家の管理が適切に行われていないため発生します。鍵の管理や不審者の侵入チェック、定期的な点検など、空き家を放置しない体制が重要です。
維持費がかかる
実家を引き継ぐと避けられないのが維持費です。たとえ、放置したとしても、固定資産税や都市計画税、災害保険料などの公共料金に加え、実家の修繕費が発生します。
固定資産税は居住の有無にかかわらず、所有し続ける限りすべて永続的に発生します。
寒い地域の維持管理では通常の管理費に加え、冬期間に水道管凍結防止対策なども必要です。家屋の老朽化による修繕は見落としがちですが、費用は大きく跳ね上がりやすく、注意が必要です。
実家が遠方の場合は交通費もかさむため、税金や維持管理費を見越して、対策を講じましょう。
資産価値が下がる
空き家は、放置され続けるほど資産価値が下がる傾向にあります。
理由は建物の老朽化による修繕費の増加です。空き家になると人の手が入らなくなるため、家屋の老朽化が進みます。定期的に換気や清掃が行われていれば、劣化の速度を遅くできますが、頻繁に空き家に通うのは難しい方が大半でしょう。
長時間無人となる空き家は、老朽化が進み周囲の景観を損ないます。このような空き家があるだけで、周辺地域全体の資産価値を下げる恐れもあります。
実家を有効活用するためにも、早めに対策しましょう。
実家が空き家になるおもなケース
リスクがあるにもかかわらず、空き家となる実家は増え続けています。
ここでは実家が空き家になるおもなケースを紹介します。
- 親が要介護・要支援状態になった
- 親が急逝した
それぞれ詳しく見ていきましょう。
親が要介護・要支援状態になった
親が高齢になり、病気や事故で日常生活が困難になる場合があげられます。
脳卒中や認知症、骨折などは介護や支援が必要となる状況へとつながるでしょう。結果、入院や家族との同居、または介護施設への入居が避けられない状況になるケースも。
要介護や要支援状態になるのは怪我だけに限りません。認知症や高齢による判断力の低下なども該当します。
親の判断力が低下した状況では、住居の管理が適切に行われないことも珍しくありません。親の意識が曖昧であるため、子どもたちが介入しても親の了承を得られない状況も生じやすいでしょう。
このように、親が要介護、要支援状態になり、実家が空き家になってしまうパターンは少なくありません。
親が急逝した
親が急逝するのはつらく予期していないできごとのため、実家管理について何も準備していないケースは多くあります。
親の急逝後に直面する問題は、遺産分割でしょう。相続人が複数いる場合、誰が空き家の管理責任を負うか、利用するかなど、全員で協議のうえ、合意しなければなりません。
相続協議や手続きは、ただでさえ長期化しやすい傾向にありますが、親が急逝した場合ではより顕著でしょう。相続協議中は実家が空き家の状態になる可能性が高く、そのまま放置期間が長くなることも。
事前の準備も、心の準備もままならないまま、手続きや話し合いを進めるのは大きなストレスです。しかし、できるかぎり空き家期間を短くする努力をしましょう。
空き家になった実家を放置する理由3選
空き家にする理由には、費用に関する悩みが多くみられます。
売却したいが売却見込みがない、解体したいけれど費用が捻出できない、といった具合です。税制度の面でも、更地にすると固定資産税が割高になるため、費用対効果を考えて家屋を残しているなどもあげられるでしょう。
金銭的事情以外では、実家に愛着があり手放せないといった理由も。
ここでは、空き家になった実家を放置する理由を3つ紹介します。
- 処分に費用がかかる
- 固定資産税を軽減するため
- 思い出を残しておくため
それぞれ詳しく見ていきましょう。
処分に費用がかかるため
空き家となった自宅を手放す際に発生する費用が捻出できないと、家屋の放置につながります。
空き家を売却するには登記費用や仲介手数料などの費用が発生します。そのうえ、古い建物であればあるほど、価値が下がるため希望した価格での売却ができないといったケースもあるでしょう。
貸家として活用する方法もありますが、古い空き家は、そのままの状態だと借り手がつかないケースが多くリフォームが必要です。リフォームするとなると費用がかかるため、なかなか手を出せません。
家屋を解体して更地にする選択肢もありますが、解体費用は高額になる場合が多く捻出できないなどの問題があります。
このように、空き家を放置する背景には、処分や再利用に伴う費用負担が大きな要因となっています。
固定資産税を軽減するため
空き家を放置する背景には、固定資産税の軽減措置が大きくかかわっています。
空き家が放置される大きな要因の一つに、固定資産税の軽減措置が関係しています。住宅が建っている土地には「住宅用地特例」が適用され、固定資産税の負担が大幅に軽減される仕組みがあります。具体的には、以下のとおりです。
200㎡以下の住宅用地 | 固定資産税が6分の1に軽減 |
200㎡を超える部分 | 固定資産税が3分の1に軽減 |
この特例によって、建物を取り壊して更地にしてしまうと、住宅用地特例が適用されなくなり、固定資産税の負担が増加します。そのため所有者にとっては、空き家を維持する方が税負担を抑えられるという状況が生まれているのです。
ただし、空き家を放置し特定空き家とみなされると、軽減措置が適用できません。そのため、空き家の定期的な管理やメンテナンスは必要です。
思い出を残しておくため
実家は思い出が詰まった大切な場所です。空き家となっても思い出を残すために、放置する人も少なくありません。
しかし、建物には定期的なメンテナンスが必要です。何も対策せずに放置すると、老朽化は進行し、最悪の場合、倒壊する可能性もあります。利用されていない家屋は、周辺地域にとっても不安な要素になりえます。
思い出を残したい気持ちは大切ですが、実現する手段は、そのままの状態で放置するだけではありません。
空き家になった実家の対策
両親の他界後、実家に居住する予定がなければ、空き家のまま放置するのではなく、新しい利用方法を検討しましょう。
- 賃貸に出す
- 売却する
- 実家を解体する
- 相続放棄する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
賃貸に出す
立地や建物の状態がよいなら、実家の貸し出しを検討してみましょう。
賃貸物件として活用するには、修繕が必要になるケースが多々あります。そのため、事前の検討が必須ですが、毎月決まった金額の家賃収入が得られるため、維持管理費をカバーできるでしょう。
ただし、家屋の所有者であることには変わりはなく、固定資産税や都市計画税を負担しなければいけません。
賃貸では入居者が生活を送るため、定期訪問での建物の維持管理は不要です。ただし、貸主として、借主に対しての維持管理責任がある点は覚えておきましょう。
ほかにも、入居者募集や賃貸管理を業者に委託する場合は、管理委託料が必要です。
売却する
実家が空き家となり放置されているのであれば、売却して手放すのも1つの方法です。
放置しているとはいえ、空き家を所持し続けると固定資産税などの税負担が永続的にのしかかります。将来的に実家を利用する予定がないのであれば、手放すとさまざまな負担から逃れられるでしょう。
また、売却によって資金が手に入るため、相続人が複数いる場合は不公平感がなく均等に配分できるメリットもあります。一方で、売却には手続きや手数料、税金などの費用負担があるため、余裕を持って計画を立てましょう。
実家の売却を検討するなら、まずは家や土地の正確な査定が必要です。不動産業者や専門家の助言を受けながら適切な価格設定が大切です。
実家を解体する
遠方に住んでおり定期的な管理が難しいときに考えたいのが、実家を更地にして活用する方法です。
空き家となった実家を解体すると、特定空き家に指定されるリスクをなくせます。
更地なら駐車場や広告看板の設置などの、賃貸運用が可能になる点もメリットでしょう。このような活用は定期的な収入源になるため、生活を送るうえで安心感にもつながります。
ただし、更地にするには解体や撤去の手続きや費用が必要です。そのうえ、固定資産税の住宅用地特例を適用できなくなるため、事前の計画が重要です。
相続放棄する
親が残した実家を含む財産を引き継がない方法です。実家に価値がなく、ほかに財産もない場合や負債が多い場合は、相続放棄をおすすめします。
相続放棄すると、維持管理や固定資産税などの義務から解放され、金銭的な負担の軽減が可能です。
相続放棄するのであれば、自分が相続人になったと知ったときから3か月以内に手続きをしなければなりません。この期間内に手続きをしなければ、自動的に相続が行われたものと見なされます。
相続放棄すれば被相続人の財産を一切引き継ぎません。しかし、相続放棄した空き家の相続財産管理人が決まるまでは、管理責任を問われる可能性があります。管理責任から逃れるためには、更地にするなど所定の手続きを踏んで、相続土地国庫帰属制度の利用が必要です。
まとめ
空き家になった実家を放置すると、さまざまなリスクが発生します。
所持しているだけで税金の支払い義務が発生するほか、固定資産税が増加する可能性も。
誰も住まなくなった家屋は想像以上の速さで老朽化が進みます。このような状態になったときにもっとも困るのは、両親が長年世話になった近隣の方々です。
実家を引き継ぐことは人生に数えるほどしかありません。空き家になった実家を手放す方法について不明な点があれば、信頼のおける不動産会社や専門家に相談しましょう。