住宅ローンが残っていても売却できる?|「完済してからじゃないと無理」は勘違いです
不動産の売却相談で、 かなり多いのがこの質問です。
「住宅ローンがまだ残っているんですが、売れますか?」
結論から言うと、
住宅ローンが残っていても、不動産は売却できます。
実際、 売却案件の多くは「ローン残あり」が前提です。
ただし、
売れるかどうかの分かれ目は「数字」です。
- 住宅ローン残債がいくらか
- いくらで売れそうか
- 売却の諸費用がいくらか
ここを外すと、話が一気にこじれます。
なぜ住宅ローンが残っていても売却できるのか
理由はシンプルです。
売却代金でローンを完済すればいい
から。
住宅ローンが残っている不動産には、 通常「抵当権」が付いています。
この抵当権は、
ローンを完済すれば、売却と同時に外す
ことができます。
実務では、
- 売却代金を受け取る
- その場で金融機関へ返済
- 抵当権を抹消
- 買主様へ所有権移転
という流れを、同じ日にまとめて行うのが一般的です。
売却できるかどうかの分かれ目は「残債と売却価格」
ローンが残っていても売れるかどうかは、 ここで決まります。
売却価格 > 住宅ローン残債 + 売却諸費用
この形が成立するかどうか。
つまり、
売って返しきれるか
です。
ケース① 売却代金で完済できる(問題なし)
これが一番多く、 一番スムーズなパターンです。
例:
- 売却価格:3,000万円
- ローン残債:2,400万円
- 売却諸費用:150万円
この場合、
完済+手残りが出る
ので、何の問題もありません。
ケース② 売却代金だけでは足りない(よくある/ここが実務の肝)
ここ、現場では普通にあります。
- 売却価格:2,500万円
- ローン残債:2,700万円
- 売却諸費用:120万円
この場合、
売却代金だけでは完済できない=抵当権が外せない
ので、 不足分をどう埋めるか
を先に決めます。
売却代金が足りないときの現実的な選択肢
① 自己資金で不足分を補填する
一番シンプルです。 ただ、まとまった現金が出せないケースも多い。
② フリーローン等で不足分を埋めて「完済」を成立させる(実務で多い)
ここが、さっきの文章だと抜けていました。 正直、現場ではこの形が多いです。
売却による不足分(オーバーローン部分)を、
- フリーローン
- カードローン
- 金融機関の追加融資(条件次第)
などで一時的に埋めて、
決済日に住宅ローンを完済 → 抵当権を外す → 売却を成立
という作りにします。
もちろん、誰でも無限に借りられるわけではないので、
- 不足額はいくらか
- 月々いくら返せるか
- 借入条件(期間・金利)をどうするか
を早い段階で整理します。
「売れるかどうか」より先に、 不足分の設計ができるか
ここが勝負です。
③ 売却損が出ても、税務上の特例で“取り返せる”ことがある
売却で損が出たときに、 よく誤解されるのがこれです。
「損したのに、何も救済ないんですか?」
あります。
ただし条件があります。
居住用(マイホーム)を売って損が出た場合、 一定の要件を満たせば、
- 譲渡損失の損益通算(給与所得などと相殺できる)
- それでも引ききれない損は繰越控除(最大3年)
ができる特例があります。
要するに、
「売却損」を税金面で軽くできる可能性がある
という話です。
ただ、適用要件が細かいため、事前によく確認しておく必要があります。
④ それでも不足が大きい場合は、売り方を組み替える
不足が大きすぎて借入で埋められない場合は、 「売り方」を組み替えます。
- 仲介で売れる価格帯に寄せる(時間を使ってでも最大化する)
- 買取も含めてスピードを優先する
- 住み替え・資金計画を根本から見直す
ここは、 物件内容と残債のバランス次第
なので、一度整理してから判断します。
「売る前に」必ず確認しておくべき3つ
① 住宅ローンの正確な残高
なんとなく覚えている数字ではなく、
金融機関からの残高証明
で確認してください。
② 売却にかかる諸費用
意外と見落とされがちですが、
- 仲介手数料
- 抵当権抹消費用
- 印紙税
などがかかります。
売却価格 − 諸費用 − 残債
ここまで計算して、 初めて「成立するか」が見えます。
③ 売る理由と期限
住み替えなのか、 返済が厳しいのか、 相続や離婚なのか。
理由によって最適解が変わります。
まとめ|住宅ローンが残っていても売却は可能
住宅ローンが残っていても、
売却はできます。
ただし、 売却代金で完済できない場合は、
- 不足分をどう埋めるか(自己資金/フリーローン等)
- 売却損が出たときの特例が使えるか(居住用の損益通算・繰越控除など)
ここまで含めて設計すると、 「詰み」を避けられます。
ローンが残っているからといって、 一人で抱え込む必要はありません。
まずは数字をテーブルに出す。 そのうえで、売却と資金計画を同時に組む。
これが一番現実的で、失敗しにくいやり方です。
