アパート売却の税金はいくら?購入時より安く売る場合と、ローン返済後の手残り

「買ったときより安く売るのだから、税金はかからないですよね」。アパートの売却では、ここを先に確かめておきたいです。建物の減価償却が進んでいると、購入価格より低い金額で売っても、税務上の利益が出ることがあります。

さらに、ローンを返した後のお金が少ないからといって、税金も少なくなるわけではありません。売却代金から返済を済ませた段階で、その残りを全部使ってよいと考えないこと。売ると決める前に、税金を払った後にいくら残るかまで見ておきましょう。

ここでは個人所有の賃貸アパートを扱います。法人所有では計算が異なります。税率などは2026年11月時点で確認した国税庁の情報に基づき、個別の税額や特例の適用は税理士・税務署で確認する前提です。

目次

税金の計算と、預金に残るお金の計算を分けます

土地・建物を売ったときは、売却代金などから取得費と譲渡費用を引いて譲渡所得を計算し、適用できる特別控除があれば差し引きます。売却代金全体に所得税の税率を掛けるわけではありません。

取得費は購入代金や購入時の手数料などですが、建物については所有期間中の減価償却を反映します。一方、ローン残高は、購入資金をどのように借りて返してきたかの話です。借入元金の返済額を、そのまま譲渡所得から引くことはできません。

そのため、税額を計算する資料と、決済日に返す金額を確認する資料の両方が要ります。購入時の契約書や減価償却の明細だけではローンの一括返済額は分かりませんし、銀行の残高証明だけでも税金は計算できません。

6,000万円で買い、4,500万円で売る場合でも税金が出る例

仕組みを説明するための仮定で考えます。土地2,000万円、建物4,000万円で購入したアパートについて、建物の減価償却累計額を3,000万円とします。購入時の諸費用や追加の設備投資などは省略した単純な例です。

項目仮定の金額
購入時の土地・建物の合計6,000万円
売却時に使う取得費
土地2,000万円+償却後の建物1,000万円
3,000万円
売却代金4,500万円
譲渡費用200万円
特別控除前の譲渡所得
4,500万円−3,000万円−200万円
1,300万円

購入価格からは1,500万円下がっています。それでも、税金の計算では減価償却後の取得費を使うため、1,300万円の譲渡所得が出ます。減価償却は建物の現在の売値を表す数字ではありません。賃貸経営の経費として計上してきたことが、売却時の取得費にも関わるということです。

取得費の範囲は国税庁「取得費となるもの」で確認できます。実際の計算では、土地と建物の取得金額、設備、資本的支出なども資料から確かめます。

ローンを返せても、納税資金が足りないことがあります

上の例が長期譲渡所得に該当し、特別控除などがないとすると、所得税・復興特別所得税・住民税の合計は、1,300万円×20.315%で約264万円です。売却費用は上の200万円だけ、ほかの精算はないと仮定します。

ローン残高が2,800万円なら、4,500万円から返済2,800万円、費用200万円、税金約264万円を引いて、約1,236万円が残ります。一方、残高が4,200万円なら、返済と費用を払った時点では100万円残っても、税金まで払うには約164万円不足します。

残債が変わっても、この例の譲渡所得と税額は変わりません。売却代金でローンを返せることと、売却に伴う支払いをすべて賄えることを分けておく理由はここにあります。

実際には敷金や賃料の精算、登記費用、一括返済に伴う費用なども確認します。所得税等の申告・納付や住民税の支払いは決済と同じ時期とは限らないため、受取額のうち納税に充てる分を先に確保します。

売る年が変わるなら、税率と保有中の収支を一緒に見ます

通常の土地・建物の譲渡では、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えると長期譲渡所得、5年以下なら短期譲渡所得です。2026年の一般的な合計税率は、長期が20.315%、短期が39.63%です。

「買ってから丸5年たった日」を基準にするわけではありません。例えば2021年6月に取得した物件は、2026年中に売っても、その年の1月1日時点では5年を超えていないため短期です。取得日や売却の税務上の時期を確認して、年をまたぐ案を比べます。

税率が下がる時期まで待つ案には意味があります。ただ、その間に大きな修繕が必要なら、税金の差だけでは決められません。待つ間の家賃から返済・管理費などを引いた収支、修繕費、将来の売却額と残債を含めて比べます。

今の価格で買いたい方がいる場合には、その条件を手放して待つことになります。税金の差が、売却価格の下落や修繕費を上回る見込みなのか。将来も同じ価格で売れると決めつけず、価格が下がった場合も試算してから選びたいです。

購入資料がないとき、すぐに「取得費5%」で済ませない

取得費が分からない場合などには、売った金額の5%を概算取得費として使う方法があります。ただ、4,500万円の5%は225万円です。先ほどの仮定の取得費3,000万円とは大きく違い、税負担も変わります。

契約書が手元にないことと、購入金額を確認できる資料が一切ないことは同じではありません。購入時の精算書、領収書、過去の申告書、減価償却資産の明細などを探し、税理士に使える資料を確認します。資料を探す手間が、売却後に残るお金に大きく関わる部分です。

相続したアパートでは、相続時の評価額をそのまま取得費にするのではなく、原則として前の所有者の取得費・取得時期を引き継ぎます。購入資料に加え、相続税の申告資料も確認し、使える特例があるかを税理士へ相談します。

売却前の支出が、すべて譲渡費用になるわけではありません

売却の仲介手数料や売主負担の印紙税などは、譲渡費用の代表例です。一方、通常の修繕費や固定資産税は維持管理の費用であり、原則として譲渡費用ではありません。何のための支払いかで扱いが違います。根拠は国税庁「譲渡費用となるもの」を参照してください。

また、決済時に買主から受け取る未経過の固定資産税等相当額は、税務上は譲渡価額に含まれます。「精算金」という名前だから税金の計算に入らない、とは考えないようにします。

工事にお金を使えば売却の税金がその分減る、と発注を急ぐのも避けたいです。修繕費か資本的支出かなどの税務上の扱いを確認したうえで、工事費を払って本当に残るお金が増えるかを考えます。

居住用の特例と消費税は、物件の使い方から確認します

賃貸だけに使用してきた投資用アパートには、通常、マイホームの3,000万円特別控除は使えません。自分で住んでいた部分を含む場合は、利用状況や期間、面積などから判断します。売却損が出ても、原則として給与所得や賃貸の不動産所得と自由に相殺できるわけではありません(国税庁の譲渡損失の説明)。

住宅の家賃が消費税非課税でも、賃貸用建物の売却は消費税の課税対象になり、納税義務の有無を確認する必要があります。土地の譲渡は非課税です。課税事業者に当たるか、売買代金を土地と建物にどう分けるかは、契約前に税理士へ確認します。

売却を決める前に、税額と受取額を並べましょう

まず用意したいのは、購入時の契約書、直近の申告書と減価償却の明細、ローン残高が分かるものです。資料が欠けていても相談はできます。何が足りないために税額を計算できないのかを、先にはっきりさせましょう。

弊社では、売却見込み額や売却費用、返済後の資金を確認し、税務の確認と並行して売る時期や条件をご相談します。税額を確定するのは税理士の専門領域です。税金が高いという理由だけで売却を諦めたり、反対に返済できるからと急いだりせず、売却後に必要なお金が残るかまで確かめてから決めてください。

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この記事を書いた人

弊社は「最善の不動産取引を」をスローガンに掲げ、不動産の売却支援を専門に手がけています。売却にはさまざまな事情がありますが、お客様ひとりひとりの背景に寄り添い、最適な解決策をご提案いたします。不動産業界の歴史や伝統を大切にしながらも、AIなどの最新技術も柔軟に取り入れ、時代に合ったサービスの提供に努めてまいります。

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