相続した不動産を売却する際の特例|知らないと数百万円変わる話
相続で不動産を引き継いだ売主様から、かなりの確率で聞かれるのがこの質問です。
「相続した不動産を売ると、税金ってどうなるんですか?」
正直に言います。
相続不動産の売却は、特例を知っているかどうかで“手残りが大きく変わる”
しかもややこしいのが、
- 使える人と使えない人がいる
- 期限が決まっている
- あとから知っても手遅れなケースがある
という点です。
この記事では、
相続不動産を売却する際に関係してくる代表的な特例を、
新潟市で相続・売却相談を日常的に受けている立場から、噛み砕いて整理します。
相続不動産を売ると、まず何に税金がかかるのか
前提から整理します。
相続した不動産を売却すると、
「譲渡所得税」
がかかる可能性があります。
計算式はシンプルです。
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費+譲渡費用)
この譲渡所得がプラスになった場合に、税金が発生します。
ここで問題になるのが、
相続した不動産の「取得費」をどう考えるか
という点です。
相続不動産の基本|「買ったのは親」でも取得費は引き継ぐ
これはよく誤解されますが、
相続した不動産の取得費は、被相続人(親など)が買ったときのものを引き継ぎます
相続した時点の評価額ではありません。
つまり、
- かなり昔に安く買っている
- 購入時の資料が残っていない
こういうケースだと、
譲渡所得が大きく出やすい。
ここで効いてくるのが、特例です。
代表的な特例①|相続空き家の3,000万円特別控除
相続不動産の売却で、一番有名なのがこれです。
相続空き家の3,000万円特別控除
ざっくり言うと、
一定条件を満たした相続不動産を売却すると、譲渡所得から最大3,000万円控除できる
という制度です。
この特例が使える主な条件
- 相続開始直前まで被相続人が一人で住んでいた家
- 昭和56年5月31日以前に建築された建物を解体更地または耐震補強を施して売る
- 相続後、売却までに事業・賃貸・居住に使っていない
- 一定期間内(原則、相続から3年以内)に売却
条件、結構厳しいです。
特に、
相続後に少しでも貸した・住んだ・使った
ここでアウトになるケースが非常に多い。
よくある勘違い
「相続した家なら、全部3,000万円控除できる」
これは間違いです。
あくまで“空き家のまま売る”が前提。
判断が微妙なケースも多いので、
売る前に必ず確認してください。
代表的な特例②|取得費加算の特例
もう一つ、実務でよく使われるのが、
相続税の取得費加算の特例
これは、
相続税を払っている場合、その一部を取得費に上乗せできる
という制度です。
どういう効果があるか
取得費が増える=譲渡所得が減る。
結果として、
譲渡所得税が下がる。
ただし、
- 相続税を実際に納めていること
- 売却期限(原則、相続から3年10か月以内)
といった条件があります。
「相続税を払ったけど、売却はまだ先」
この場合、期限を超えると使えません。
特例は「どれか一つ」しか使えないことが多い
ここも重要なポイントです。
相続不動産の特例は、重ねて使えないケースが多い
例えば、
- 空き家3,000万円控除
- 取得費加算の特例
両方が理論上当てはまりそうでも、
実際にはどちらか一方というケースがあります。
どれを使うのが一番得かは、
- 売却価格
- 取得費の状況
- 相続税額
によって変わります。
ここは、
感覚で判断しないほうがいいところです。
「とりあえず保有」が一番危ないこともある
相続直後はバタバタします。
「落ち着いてから考えよう」
この判断自体は、間違いではありません。
ただし、
特例には期限がある
これを知らずに数年経つと、
「本来使えた特例が、使えなくなる」
という事態が普通に起きます。
相続不動産は、
「売る・売らない」を決めなくてもいいから、制度だけは早めに整理
これが一番安全です。
まとめ|相続不動産の売却は「順番」がすべて
相続不動産の売却で大事なのは、
- まず特例の有無を確認する
- 期限を把握する
- 売却判断はそのあと
この順番です。
価格査定より前に、
税金と特例の整理をしたほうが、結果的に楽になります。
相続した不動産について、
「売るかどうか迷っている」
「何が使えるか分からない」
この段階でも構いません。
一度、数字と制度を並べて整理してから、
どう動くか決める。
それが、相続不動産で損をしない一番現実的な進め方です。


