アパート売却の失敗例|「こうなると損が出やすい」現場でよく見る落とし穴
アパート売却は、決済まで行ってしまうと基本的に巻き戻せません。
だからこそ怖いのは、売却そのものよりも、「判断の順番を間違えて損を確定させること」です。
売却を終えたあとで、
「もう少し早く相談しておけば良かった…」
というオーナー様が一定数いらっしゃいます。
この記事では、アパート売却でありがちな失敗例を挙げながら、 「なぜ失敗になるのか」「どうすれば避けられるのか」を現場目線で整理します。
- 売却が長期化して結局値下げ
- 買主と揉めてトラブル
- 税金・費用で手残りが崩れる
- 出口戦略がなく次の一手が止まる
このあたりに心当たりがあるなら、先に読んだ方が安全です。
失敗例1|「一番高い査定」を信じて売り出し、売却が長期化
よくある流れです。
- A社:9,000万円
- B社:8,200万円
- C社:8,500万円
高い数字を出した会社に任せたくなるのは自然です。 ただ、問題はここからで、
売り出しても反響が薄い → 値下げ → 値下げ → 結局「相場」に着地
という形になりやすい。
失敗の本質は、価格が下がることじゃなく、 時間だけが溶けて売主様が疲れることです。 空室や修繕が絡むと、長期化はそのまま損に直結します。
避け方はシンプルで、
査定額ではなく「その価格で売れる根拠」と「売れなかった時の手順」を聞く
これだけで、かなり減ります。
失敗例2|売り急いで「買付が入った瞬間に即決」してしまう
反響が少ないと、買付(購入申込)が入っただけで安心してしまう。 これもよく分かります。
ただ、買付って「スタート」であって「ゴール」ではありません。
- 大幅な指値(値引き)前提
- 融資が通らなければ白紙
- 条件交渉が強め
こういう買主も普通にいます。
焦って即決すると、あとから
「最初からこの条件だったなら別の買主を待った」
となる。
避け方は、即決する前に、
- 融資の確度(金融機関・事前相談の有無)
- 条件交渉の理由(なぜその指値なのか)
- 期限(いつまでに何が決まるのか)
この3点を必ず整理してから判断することです。
失敗例3|「レントロールがぐちゃぐちゃ」で信用を落とす
収益物件の売却は、買主が見るのは建物より先に数字です。
レントロールが曖昧だと、
- そもそも検討の土俵に乗らない
- 買主が不安になり指値が強くなる
- 融資審査で止まる
こうなります。
私が見てきた中で多いのは、
- 賃料・共益費・駐車場が混ざっている
- 入居開始日・契約形態が不明
- 滞納・フリーレント・保証会社の情報が抜けている
このあたり。
避け方は、売りに出す前に、
「買主と金融機関が見ても理解できるレントロール」に整える
これだけです。地味だけど効きます。
失敗例4|「共用部が荒れている」のに放置して内見を迎える
投資家の内見は、部屋より先にここを見ます。
- エントランス
- 階段・廊下
- ゴミ置き場
- 駐車場
ここが荒れていると、
「この物件、管理が甘い=将来の修繕も読めない」
と判断されやすい。
結果、指値が出るか、そもそも消えます。
避け方は、豪華にすることじゃなく、
清掃・軽補修・掲示物の整理
この3点だけで十分です。費用対効果が高い。
失敗例5|「修繕履歴がない/説明できない」せいで値下げを食らう
築年数が古いほど、買主はこう考えます。
「何を直してきたか分からない=これから全部来る」
だから、修繕履歴がないと、
- 買主の不安が増える
- 不安は指値になる
- 融資の評価も下がる
この連鎖が起きます。
避け方は、完璧な履歴じゃなくていいので、
- いつ
- どこを
- いくらで
これを分かる範囲でまとめておくこと。 見積書や領収書が残っていれば強いです。
失敗例6|「告知すべきこと」を出さずに、契約後に揉める
これは一番しんどい失敗です。 売却して終わりじゃなく、売却してから火がつきます。
代表例は、
- 雨漏り
- 給排水の不具合
- 過去の浸水
- 入居者トラブルの経緯
売主様の感覚だと「昔の話」「今は落ち着いている」でも、 買主からすると「聞いてない」が一番強い。
避け方は、結局これです。
知っていることは、先に出す。
売れなくなるんじゃなく、むしろ逆で、 情報が出ている物件の方が「織り込んで買える」ので話が進みます。
失敗例7|税金・費用を見落として「思ったより残らない」
売却価格だけ見てると、手残りでズレます。
よくある落とし穴は、
- 仲介手数料が想像以上に大きい
- 抵当権抹消・測量などが乗ってくる
- 譲渡所得税の見込みが抜けている
避け方は、売却前に一回だけでいいので、
「売却価格 −(残債+諸費用+税金見込み)= 手残り」
この形で出しておくこと。
失敗例8|「売った後の使い道」が曖昧で、判断がブレる
これは意外と多いです。
売却って、手段です。 でも手段が目的化すると、
- 高く売りたいのか
- 早く現金化したいのか
- 借入を整理したいのか
ここが揺れて、結果として価格設定も戦略もブレます。
避け方は、売却前に一言でいいので、
「売ったお金で何をするか」
を決めておくこと。ここが決まると、売却方針も決まりやすいです。
まとめ|失敗するオーナー様は「判断の順番」を間違えていることが多い
アパート売却の失敗例をまとめると、
- 高値査定に乗って売却が長期化
- 買付が入った瞬間に即決して条件で削られる
- レントロール・修繕履歴の準備不足で信用を落とす
- 共用部の印象で損をする
- 告知不足で契約後に揉める
- 税金・費用の見落としで手残りが崩れる
- 売却後の使い道が曖昧で戦略がブレる
逆に言うと、避け方もだいたい決まっています。
「査定額」ではなく「根拠」と「手順」を見る。
数字(レントロール・収支・修繕)を先に整える。
手残り(費用・税金)を先に出す。
この3つを押さえるだけで、失敗確率はかなり下がります。
